102話 ダンジョンの生え替わり
「……なぁぁぁぁんで柚希先輩はいつもいつもいっつもこうなんですかぁぁぁぁぁぁ!?」
「知らないよぉぉぉぉ!?」
「どこに逃げたらいいのぉぉぉ!?」
「み、みなさん、とにかくしゃがんで……!」
【草】
【このテンポ感よ】
【理央様が絶叫なされていますわ】
【いつものことですわ】
【さすがは全世界公開百合告白でバズったJKだ……声量が違う】
【けど、それに負けないユズちゃん】
【ユズちゃん、大きな声出せたのね……】
【いつもなんかぽそぽそひとりごと言ってるし、てっきり……って思ってた】
【俺も】
【お前ら、今そんな場合じゃないだろ!?】
◇
13階層。
「もうちょっと行けそうだよね」ってことで、そのまま降りて……「さすがにそろそろ休もっか」ってなったそのとき。
「地震……!?」
ダンジョンの中を歩いてた僕たちは、変な揺れで思わず地面に這いつくばった。
「隠れる机とかイス……ない!!」
「て、天井に気をつけてください!」
「かなり大きな地震だ……ひなたさんは大剣で君自身と理央さんを! 柚希さんとあやさんは俺のそばに! 石でも落ちてきたらかなり危険だ!」
【地震】
【地震とかどこいな】
【ユズちゃんたち、田舎暮らしだよ?】
【あっ……ごめん】
【ガチの田舎だったかー】
【草】
【見た感じかなり強いみたいだけど……速報鳴らないな】
【俺も】
【地震監視してるけど、国内で揺れてる場所ないぞ?】
【え?】
【でもダンジョン、揺れてるよ?】
【……ダンジョン……地震みたいな揺れ……立っていれられない……生え替わりじゃ?】
【えっ?】
【えぇ……】
【いやいや……え?】
【あの、協会のHPじゃ、ダンジョンの中身が再構成される入れ替わりまで、あと半月はあるって】
地面はぐらぐらしてお船の中みたいだし、ダンジョン全体からごごごごってすごい音がするしで、僕はなんとかはいはいしながら月岡さんの元へ。
「……大丈夫、俺はレベルがあるから落石程度じゃダメージは平気だ。 あやさんも、頭だけで良いから俺の腕の下に」
「で、でもっ……」
なんとか追いついて来たけど……やっぱり男性恐怖症のせいか、ひざ立ちになって両手をマントと一緒に広げて守ろうとしてくれてる月岡さんに、それ以上近づけないみたいなあやさん。
「あやさん」
……そっか、男性恐怖症って、こういうときにまで。
「大丈夫。 月岡さんは、優しい人だよ」
「……柚希さん……」
あやさんの手をぎゅっと握って、そっと引き込む。
【キマシ】
【ユズあや……】
【ロリおね……】
【百合は誰でも受け付けていますわ<URL>】
【<URL>】
【↑これは真逆のやつだから無視な】
【草】
「柚希先ぱぁぁぁぁぁぁぁい!」
「大丈夫! 理央ちゃんも頭守って!」
「きゅんってしちゃわないでぇぇぇぇ!!」
「え? ……ひなたさん、理央ちゃん、頭打った?」
【草】
【ひでぇ】
【ユズちゃんの反応がひどすぎて草】
【塩対応過ぎて草】
【理央様の必死の叫びは届かず、ユズちゃんとあやちゃんは月岡の下に】
【発狂したいけど、体張ってる野郎は認めざるを得ない……】
すごい揺れと音はしばらく続いて、壁からぱらぱらと落ちてきてた石とかで酷い砂ぼこりに。
【やっぱ国内のどこでも地震は起きてない】
【じゃあ……】
【生え替わり……】
【起きちゃった……?】
【でもあと半月のはずだろ!? それがなんで!?】
【知るかよ!?】
【もしかして:またユズちゃんのせい】
【いやいや、そんなことは……え?】
【ユズちゃん、別に不幸体質なわけでも……】
【え、でも、勝手に配信しちゃうわ、変な転移陣で移動しちゃうわ、期間外の生え替わりに遭遇してるわ……3連続だよ?】
【えぇ……】
【リストバンド! 緊急離脱!】
【揺れが酷くてそんな場合じゃないっぽい】
【煙もくもくでなんにも見えない】
【ダンジョンの生え替わりってこんななの!?】
【危険だから、前後2日くらいは立ち入り禁止なんだが……】
【配信中に生え替わりとか前代未聞じゃ?】
【そらそうよ……】
【いや、あるにはあるんだ……こんなことにはならないけど】
【まーたユズちゃんか……】
【まぁさすがにそうじゃないだろうけど、それにしても毎回なにかしら起きる配信だな、ユズちゃんたちのって……】
【……って、上! 上!!】
【ユズちゃん逃げてー!!】
「けほっ……お、収まった……?」
1回ものすごく揺れたと思ったらだんだん静まってきて、だから僕は視界の効かないのが今さらながらに不安になってきた。
だから、ちょっとだけ立ち上がって、
「――!? 駄目だ、まだ気を抜いたら!」
上を見たとたんにそんな声が真横から来て、「ああ月岡さんの声って透き通ってるな」って思って。
――そうしたら、上からでっかい岩が、
「きゅい!」
「ぴぎっ!」
――――――ばぁんっ。
【ユズちゃん!?】
【ユズちゃん大丈夫!?】
【今、ユズちゃんの真上に岩が】
【野郎に守られてたんじゃ】
「……あ、チョコ」
……落ちてきたと思った岩は、僕の目の前で砕け散る。
綺麗に、ちょうど僕の鼻の先に見えない壁があるみたいな感じに、真横にはじけ飛んでいく。
「きゅい!!」
「わっ……おまんじゅう?」
僕の頭の上にぽんっと乗っかって、足でげしげし叩いてくるおまんじゅう。
「ちょっ、痛い、痛いってばぁおまんじゅうぅ」
「きゅい!!」
「……今のは……」
【ユズちゃん生きてる!!】
【よかったぁぁぁ】
【いつもピンチになるユズちゃん】
【なお今のは完全にユズちゃんのせい】
【ああ、避難訓練で「揺れが収まってから体を起こして」って言われるのはこういうことなのね……】
【でもなんで今ので?】
【忘れたのか? ユズちゃんをボアの突進から守ったのは】
「ぴぎ!」
「チョコ! 守って……痛い! 痛いってばぁ!!」
「きゅいいい!!!」
「ぴぎいいい!!」
「きゅ! い! きゅ!! い!!!」
「ぴぎ! ぴ! ぎ!! ぴぎぃ!!」
【草】
【ユズちゃんが怒られている】
【ユニコーンとシルバースライムが結構本気で怒ってる】
【そらそうよ……】
【モンスターに叱られるロリ……斬新だ……】
【多分ここでしか見られないと思うよ】
【だってユズちゃんだもん……】
おまんじゅうって、普段は僕に抱っこされるかシャツまくり上げて吸い付いてくるかしかしたことないのに、今は頭の上でげしげしって絶妙な痛さを与えてくる。
チョコもチョコで、また壁になって守ってくれて……それを解除して丸くなって、で、僕の髪の毛に張り付いてぐいぐい下に引っ張るんだ。
「分かった! ごめん! ごめんってばぁ!!」
2匹は、僕がしゃがんでからもしばらく怒ってた。
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