魔法とシュティエルの過去
猫ってなんであんなにいい匂いなんですかね……?(無臭)
4話です。よろしくお願いします。
大海の様な青空の元、ウェルネス王国の辺境に位置するブルムー村にて、魔法という大空の様に広い魔法の世界へと踏み込もうとする五つの芽があった。
「よっしゃぁぁ!ついに魔法を学べるぜぇ!!」
「全く、フェルマはいつもうるさいんだから。 ──でも今日だけはその気持ち、すっごい分かるわ!」
「うん、確かに遂にって感じだね!」
フェルマに続いてエルナ、カルザが魔法を学ぶことに対する喜びに強く同調する。それにクレアも続けていく。
「うんうん、わかるよ!ほんとにやっとか〜〜って感じ! アレンもそう思わない?」
「そりゃもう! 魔法を学んで強くなって親父に勝ちたいからな!」
「アレンのパパ強いもんね〜」
クレアは首をうんうん、と縦に振りながらそう言う。
するとフェルマがふと愚痴を零す。
「でもさーアレンとクレアは良いよな〜本当は俺らも去年には学んで、今頃王都の魔法学校にいるはずなのにさー」
「仕方ないさ、シュティエル先生は3年前から急に魔法学校の臨時講師で呼び出されちゃったんだから」
「ま、カルザの言う通りそうなんだけどさー早く王都行ってみたいって思ってさ!」
「確かに一個上のお前らには申し訳ない事をしたな、やっと魔法を学べる年になったって言うのに私の都合で教えられなくて……」
フェルムのちょっとした愚痴にシュティエルが少し申し訳なさそうな顔をすると、エルナがすかさずフォローを入れに来る。
「でも、五人みんなで学んで、一緒に学校に入学できるのも悪くなくない? それに村の人達にちゃんと魔法少し教えて貰えたし!」
「そうだぜ?シュティエル姉ちゃん、俺たちがひよっこだと思わないこった!」
「調子に乗らないの!!」
少し調子に乗ってしまったフェルマには隙を見せまいとエルナのツッコミが入る。
きっと、この流れだけは何時になっても、変わらないものであって欲しいなと、誰もが思うのではないだろうか。
そんな事を考えていると、手を叩く乾いた音が鳴る。
「ささ! 世間話はここまでだ! 早速だが魔法を使う上で大事なことがいくつかある」
「「切り替えはやぁー」」
五人の声がハモる。シュティエルの切り替えの速さに慣れるのは皆だいぶ先になるだろう。
「まず語るべきは『魔法』とは何なのか、『マナ』とは何なのか、そして一番重要なのは、それを使う上で覚えなくてはならない、魔法の危険性。 さ、お前らはそこの木陰に座りな」
シュティエルは村の広場にある大きな木のそばに置かれた『マナ板』と呼ばれる、マナに反応して文字を書いたり、絵を描いたりできる板の前に立って語り始める。
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子供たちに魔法を教える時、私はいつもこの話から入る。
知識を待たないものに力を、知識を使う事は出来ないとし、許されないと思っているからだ。
「魔法とはこの世界に溢れるマナを使った技術だ。その技術には様々な種類があり、まだその実態全てを改名出来ていない。逆に研究する度に新たな魔法が生まれるだけで、その深淵を覗く事はまだ当分叶わないだろう。いや、もしかしたら誰にも出来ないかもな」
「誰にもできねぇの!?」
「少なくとも人間にはな。規模がデカすぎて人間という種族にはどう頑張っても時間が足りんな。まぁ、それは別にどうでもいいんだ。
人間には不可能だとしても人間は探求を辞められない、知的好奇心には逆らえないからな。 それに人間は今までに不可能だと思われたことを幾度も可能としてきたんだ。それに現時点では無理なだけでそのうち深淵を覗く者も現れるかもしれない。だからそこまで悲観することでもない」
「なるほど……」
「実際に人間はたくさんの魔法を解明してきたからな。 私が使ってる魔法も、今からお前たちに教える魔法も今までの人類の叡智ってことさ。 もちろん例外もあるがな。」
「例外ってなんですか?」
「人にはそれぞれ特有の魔法が発言することがあるんだ。が、今は気にしないでもらって構わない、王都魔法学校にでも行ったらいやでもそのうち学ぶさ。
それでだ、さっき魔法とはマナを使った技術と言ったな。それならマナとは何なのかをある程度知っとかなきゃいけない。
太古の昔、神話の時代の話だ。大地が裂け、突如世界には八本の大樹が君臨した。その大樹をこの大地に住まうものは神之樹と呼ぶようになった。
各大国がまさに神のように崇めてる大樹の事だ。他には神樹などとも呼ばれているな」
「八本……なんですか……?」
「どうした、アレン。 神之樹は全部で八本で間違いは無い」
「ねぇシュティエル姉さん!神之樹は六本じゃないの?」
「お、いい質問だ、クレア」
シュティエル少し頷くと、さらに続ける。
「大地に神之樹が君臨した時は確かに八本だった。
しかし、長い時が経ち。二本の神之樹であったものは、別のものに生まれ変わっていったんだ。
一つ目が、北西にある 獣神を祀る国「ゼノ・フェリス」の獣神と言うのはまさに、神之樹が生まれ変わった姿だ。」
「まじかよっ!木が獣神になったのかよ!」
「クク、やっぱお前は反応が良くて面白いな」
「ま、それが俺のいいとこだからな〜〜えへへ」
「うっさい!」
「だぁあ!」
フェルマの反応がおかしくて少し微笑んでいたら、調子に乗ったフェルマはすかさずエルナに成敗される。
この二人の仲は見ていてとても元気になれる。
「二つ目は、南西の国 繁る大密林 「エルダリア」の大密林ってのもまさに神之樹そのものさ。神之樹が分裂したっていうのが正しい、のかな?あの大密林が神之樹であること以外は詳しく分かっていないんだ。
この二つの国の神之木はほかの国とはだいぶ変わっていることからも、神之樹であっても神之樹ではないと考える人もいてな。それで、一般的にはこの大地に現存する神之樹は六本ということにしようとなったんだ。
だからクレアが言ったのは間違いじゃない。 厳密にいえば、形を変えたとしても神之樹とほぼ同一のものである事は間違いないから神之樹は全部で八本といっても間違いではない。ここに関しては人によって様々なとらえ方があるから、好きなように解釈してみるといい。 説明するのにはこの例外も神之樹とした方が説明しやすいからそう言うが、ごっちゃにするなよ?
──ふっ、難しいか?」
少しみんなの様子を伺うと、みんな頑張って理解しようと顔を顰めてるいた。 フェルマだけは「訳わっかんねぇ!!」って考える事を放棄していそうだな…ふふ。
「シュティエル姉ちゃん!なんかもうムズいよ!途中からもう訳わっかんねぇ!」
案の定、と思いながら話を広げすぎたことを少し反省する。
「悪い悪い、確かに少し雑談がすぎたな。 お前らがいい質問をするからついついだ、許せ。 今の話も大事な事ではあるが学校に行ってからもまた学ぶからな、今はだいたい理解する程度でいいんだ
さて、ここからはざっくり簡単に行くぞ。
話を戻すとマナと言うのは神之樹からも齎された膨大なエネルギーであり、祝福だ。 そしてこの力を使って人類が組み上げてきた技術が魔法という訳だ。
まず、マナには神之樹にあった基本属性がある。
これは国にも由来していて。『炎、水、氷、雷、地、風、獣、森』私たちの住むここ、ウェルネスは風に由来している。 そしてこれらの属性は大気中だけじゃなくて、全ての物質に満遍なく含まれていて、多少の魔法の心得がある奴なら全属性をある程度使うことが出来る。もちろん得意不得意もあるがな。
しかし例外なのが、獣のマナ、森のマナ。 さっき言った、神之樹が形を変えた二つの国のとこに由来したマナで、これらの魔法を使えるのは獣人やエルフの血筋を引くものか、特異体質。 それとも、これは滅多にないことだが神之樹に直々認めてもらうか、だな。 まぁ今は関係ないから忘れてもらって構わない。
そして、この基本属性には得意不得意があると言ったが、今からその自分に合った得意属性、不得意属性を知って、その得意属性の方の属性の使い方をひたすら練習してもらう!」
「先生」
「ん?どうした?」
「一個上の僕達はもう既に得意不得意を把握して、得意属性の魔法なら幾つか初級のですが使えるようになったんですよっ!」
カルザがこの1年のを成果を誇るように言う。
それに続いて他の2人も首を大きく縦に振って、同意を示す。
「あー!そうだったな。 じゃあお前らは初級魔法に磨きをかけつつ、魔法操作を練習していこう。
魔法はめげずに数を重ねるのが最も大事だからな!」
「はい!」
「はーい!」
「は、はい!」
「よし、んじゃまずはアレンとクレアからだ。
お前らは少しそこら辺で練習しといてくれ。何かあればこっちから言う」
少し息をつく。
「よーし、準備はいいか?2人とも」
「おうよ!!」
「うん!もちろん!」
二人の元気な声が辺りに響く。
それは新たな少年少女が、とても『不思議』で、とても『幻想的』な魔法の世界へと足を踏み入れる大きな節目であり、人生の大きな岐路となった。
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──────私は魔法が大好きだった。
私がこの子達と一緒の頃、いや。この子達よりもさらに3年前になるのかな。
6歳の時だっただろうか。お転婆だった私は、他のみんなには内緒で、一人で村から少し離れたところにある森に冒険に向かった。
その森の奥で、沢山の小さな光の玉と動物たちに囲まれながら、手品の様に不思議な力を使う神々しい人に出会った。
後からわかった事だが、その神々しい人と言うのは上位精霊であり、小さな光の玉球たちは下級精霊だったらしい。
その上位精霊は楽しそうに新たな風を生み出し、その風をまるで自分の手足のように操っていた。
心做しか、私にはその周りにいた小さな光の玉や動物たちは、その上位精霊によるショーを見て楽しんでいるように見えた。
その上位精霊の使う不思議で幻想的な力。
その力こそがまさに、私の大好きだった魔法。
私はそこで初めて『本物の魔法』というものに触れた。
正確に言えば生まれた時から魔法は見ていた。
しかし、それは村の人達が軽傷の怪我をした時、作物に水をやる時、火を焚べる時などの、日常で使うちょっとしたものだった。
もちろん魔法の不思議さに驚き、憧れはしたが、どこかで「こんなものか」と思っていたんだと思う。
魔法の元であるマナは全て物に存在する。
マグマも海も、大地も木々風も自然のもの全てに存在する。
つまり魔法というのは自然を操る力なのだ。
その力を使って日常でちょっと使える程度なのかと。
自然の力には遠く及ばない、比べる方がおこがましいと。
きっと小さい頃の自分はこれを感覚で理解してたのだと思う。
今思えばこの感覚こそが、私がマナに愛され、天才と称されることになった才能の片鱗だったのだと思う。
でも、その上位精霊の使う魔法を見た時。今まで見てきた世界がまるっきり変わった。
今までとは違う、これこそが本物の魔法だと本能が訴えてきた。
まさに自然を操っていると。むしろ自然すらも超えてしまうんじゃないかと思ってしまうほどに。
美しく綺麗で、幻想的で力強い。そして不思議に満ち、可能性に溢れたものだと。
その時、私は魔法に魅了されてしまった……。
大好きになってしまった……
その時から私は村の人達が使う日常的な魔法も可能性に満ち溢れたものだと、ワクワクが止まらなくなり、以前よりもより美しいものに見えた。
この子達を見て私は思い出す。
魔法という世界に強い期待を馳せているこの子達を見て私は思い出すのだ。
魔法が大好きだった私を……。
そして私は思う。
過去の自分と重ねてしまったが故に、私は思わなくてはならない。
この子達は私が導いて行かなくてはならないと。
私と同じ轍を踏ましてはいけないと。
絶対にこの子達は魔法に魅了されてしまう。
魔法を愛してしまうだろう。
自分も魔法に一瞬で魅了させられてしまったことからもそれは仕方ないことだと思う。
魔法はとても素晴らしくて、膨大な力を秘めている。 今の世界、どこの国も魔法無しでは決して成り立たない。
しかし、その絶大な力の使い方を誤れば、全てが狂う。
人間という愚かな生き物は力を持っていると有頂天になる。
犯罪者になることだって、邪魔な人嫌いな人に嫌がらせする事だって、殺す事ですら───
簡単にできてしまうのだから。
悪意と善意。信念と信念がぶつかった時は戦争が起こる。
魔法という絶大な力はその武器として利用され、そのぶつかり合いは数多の人が一瞬の間に死んでいく。
それも仕方ないことなのかもしれない。
全ての人間が分かり合い、平和になる事は決して無いのだから。
私は魔法によって狂っていった人達を沢山見てきた。
だからこそ、この子達を決して魔法によって狂わしてはならない……!!
この魔法という力はいざと言う時に大事な人を、自分を守る時に使えれば良い。
そして自分も昔は紳士に魔法と向き合い、狂うことはないと信じて疑わなかった。
しかし、私は大きな過ちを犯してしまった。
自分の大好きだった魔法で、大好きだった一番の親友を殺してしまったのだ……
さらに綺麗で幻想的な、あの時私が一瞬で魅了された魔法よりさらに凄い魔法を使おうと。
魔法使いとしてのさらなる高みを目指そうと。
マナに愛された自分の才能を余すことなく使ってやろうと思った。
自分にあった自分だけの特別な魔法。
それを完璧なものにしてやろうと……。
そしてあの時見た上位精霊に魅了された自分の様に色んな人を魔法で魅了したかった。
私はそれを習得し、実践で試しでみようとした。
その時事件は起きる。
「この世の災厄、不幸をばらまく化け物よ……!
─────────。 穿て!!!」
自分の願いに呼応しマナは私に答えてくれた。
自分の想像を遥かに超える力で。
その巨大な力に私は制御権を奪われ、魔力暴走を起こしてただひたすら周りを滅茶苦茶にする。自分自身をも傷つける勢いで。
親友はその私を必死に助けようとしてくれた。
その頑張りで、時間を大きく稼ぐことができ、騒ぎを聞き付けた魔法学校の先生などの上級以上の魔法使いが集まる。
その結果魔力暴走落ち着きを取り戻し私の命は助かるが、その代わりに親友は、私が与えた傷が致命傷となって命を落としてしまう。
その絶望から、一旦は落ち着きを見せた魔力が心と共に乱れ、さっきよりも凄まじい勢いで魔力が暴走した私は、自分自身を傷つけながら周りをさらに滅茶苦茶にした。
その時は、なんとか周りの魔法使いが沢山傷つきながらも必死に助けてくれて、私の命は繋がった。
彼女を亡くした事で悲しんだ人からは泣きながら沢山怒られた。
詳しく事情を知らない人からは沢山慰められた。
世間は、私を悲劇の被害者として、許してくれた。
親友も死の間際、微笑みながら許してくれた。
でも、そんなのは関係ない。
私は私を全く許せなかった。
これらは全て私の過ちだ。
私はなるまいと思っていたが、私自身も魔法によって、完全に狂わされていたのだ。
私はもう、過ちを犯さない。 過去を振り返っていてはならない。
私は彼女が死ぬ直前約束された。
自分達の様な同じ被害者をもう出してはいけないと。
前を向いて元気に生き続けて欲しいと。
そして、幸せになって欲しいと。
私は彼女の死後、しばらく塞ぎ込んでいた。
そして月日がたち、感情を抑えられるようになった頃私は思った。
自分が親友の夢だった魔法学校の先生となり、子供たちを指導していき、立派な魔法使いにする事こそが、約束を果たす道ではないかと。
私はこの道を果たすことにした。
そして今、この子達を導いていくと決めた……。
私はマナをこよなく愛していて、マナに愛されていた。
だけど、今は…………
──────魔法のことが大嫌いだ。
△ ▼ △ ▼△ ▼ △ ▼
空を眺めてぼっとするシュティエルを見てクレアとアレンが心配そうに尋ねる。
「シュティエル姉さん、大丈夫?」
「ん?あー、大丈夫だ。 少し昔の事を思い出していてな……」
「なんかすごい悲しそうな顔してたぜ……?」
「ま、そんないい思い出ではないからな!
あっと、そうだ。 とても重要な話を忘れていたな。
魔法の危険性とそれによって定められたこの国のルールってやつだ。
まず10歳を超え無いと魔法を学ぶことは許されていないこと。
理由としては危険だからだ。 幼い段階で魔法を酷使し過ぎていたりすると、私たちが持っているマナ機関『マナサプラ』が成長して強固になる前の段階で疲弊し、壊れてしまう可能性がある。
もちろん、ちょっとやそっとじゃ壊れないが、子供達に取っても私達大人にとっても魔法は魅力的すぎる……。
つい夢中になって魔法に打ち込み、マナを使い過ぎていると気づいたら疲弊していき、休憩も取らずに続けていると徐々にひびが入っていく。
私は見てきた。子供でマナサプラを壊した人。
大人になっても、魔法を愛しすぎたが故に酷使しすぎ、壊した人も。
そして仲間を守るために限界を超えて酷使し、壊した人も………。
マナサプラが壊れてしまった人達はもう二度とマナを使えなくなる。魔法の美しさや幻想さに心身諸共魅了され、その自身に心身諸共破壊される……。
そして、今の技術ではどうする事もできない。
魔法は使い方を誤れば、魔法のことをよく知らなければ簡単に心も体も人生も狂っていくんだ。 だから気をつけなきゃ行けない。
もしもこの魔法によって全てなくした彼ら彼女らの絶望を救えるとしたら」
シュティエルは一点の曇りのない青空を見てボソッと言う。
「それは、奇跡しか無いんだろうな……」
シュティエルのその表情は、まるでその絶望を体験したような……
いや、未だに絶望の渦の眼中にいる様だった……。
ここまでで少し説明が長くなってしまいましたね。
説明の長さを誤魔化すように少し過去のお話を入れてみましたがやはり長い……
早めに下準備終わらして、本編に入っていきたいです!




