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13. 追放の次は

 あの後、新商品開発部の人達やレオン様と何度も試乗した。

 魔力が必要になる欠点はあるけれど、魔力の多いレオン様や私がいる状況では問題にならなかった。


 それに、魔力を持たない人でも魔道具を使えるようにする魔石を使えば、誰でも扱えるようにすることだって出来る。

 ちなみに、魔石というのは魔力を貯めることが出来る石のこと。


 サファイアのような宝石も魔石になっているけれど、高価だから魔物の中から採れる魔物石を使うのが一般的になっている。

 魔道具の核になっている魔法陣と魔石は、魔石を砕いた粉を細長い筒に詰めたものを使って繋ぐ。そうすれば、魔法陣に直接魔力を注がなくても魔道具を使うことが出来る。


 ちなみに、魔物石には最初から魔力が溜まっているから、すぐに使えるという利点もある。


「これはいいな。今は振動を抑えるために敢えて速度を落としているそうだが、それも改善できそうだ」

「……少し試してみますか?」

「いいのか?」

「ええ」


 頷いてから、御者に指示を出す私。

 少しずつ速くなっていって、揺れも増えていく。


 けれども、普通の馬車のようなガタガタという不快な振動は起こっていない。

 揺れは大きくなっているけれど、ゆったりとしたものだから不快には感じられなかった。


 その逆で、心地よさを感じられるくらいだ。

 ずっと揺られていたら、眠ってしまいそうね……。


「これはすごいな……。人や物が今までの半分の時間で移動できるようになったら、世界が変わる。

 しっかりと止まるための魔道具があれば、もっと早く出来るのだろうな」

「この馬車があれば、流行り病や飢饉の時に困っている人達にすぐに支援が出来るようになりますわ」

「魔物の襲撃があった時も、すぐに武器を運べるようになる。今まで救えなかった人を救えるようになるかもしれないな」


 そんな未来を思い描く私達。

 この馬車があれば、今までは行けなかった場所にだって行くことが出来る。


 国外追放された今は無理だけれど、アストライア領から帝都まで一日で行くことだって出来る。

 お父様達もセントリアで暮らすことになるけれど、領地の様子を頻繁に見ることができるからお父様には喜ばれそうね。


 ちなみに、今は商会本部の敷地の中をぐるぐると回っているだけ。

 だから、私に馴染みのある紋章を掲げた馬車の列が近くに止まったところはよく見えていた。



   ☆



「聞いていたよりも早かったから驚きましたわ」


 本部の中にある応接室に向かいながら、そんなことを口にする私。

 するとお母様は、こんな言葉を返してきた。


「ルシアナのことが心配だったから、私だけ一足先に来させてもらったの。

 まさかレオン様がいらっしゃるとは思わなかったわ」

「最初は私も驚きましたわ。でも、レオン様らしいと思ってしまって」


 応接室に入ると、すぐにお湯を出せる魔道具を使ってお茶を淹れる私。

 茶葉は一応高級なものを使っているけれど、侯爵家や公爵家で出されているものには及ばない。


 それでも、お母様もレオン様も美味しそうに口にしてくれた。


「やっぱりルシアナが淹れてくれたお茶は美味しいわ」

「僕も同じ感想です。身体の奥が温まるような、不思議な感じがします」


 変なものは入れていないのだけど……。


 少し不安になっている時のこと。

 お母様が信じられないことを口にした。


「いつ言おうか迷っていたのだけど……。

 私達、国家反逆罪の濡れ衣を着せられたのよ。逃亡の準備をしていなかったら、今頃処刑されていたかもしれないわ」

「国家反逆罪ですって……!?」

「そうよ。あの王子の考えていることは理解できないわ。

 民の不満を晴らすためだけに、私達を公開処刑しようとしているのよ」


 あまりの恐ろしさに、私は何も言えなくなってしまった。

 けれども、レオン様は嘲笑を交えた様子で口を開いた。


「そのような事が許されるはずが無い。王家が滅びるのも時間の問題だな。

 あの愚かさは一度は死なないと治らないかもしれない」


 そう口にする彼は、険しい表情のままグレールの王都の方向を睨みつけていた。


 怒りを口に出来ない私に代わって、レオン様は怒ってくれている。

 そう分かったから、嬉しさと申し訳なさの入り混じった複雑な気分になってしまった。


 けれども、私も怒りを覚えていたから。

 あの王族の愚行を止める方法を探ることに決めた。

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