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エルヴィス  作者: 高槻れな
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凸凹コンビ誕生

時は2204年。広大な宇宙の中にエルヴィスという星があった。小さな紛争から始まった争いはエルヴィスをエレンスとサトレンスに分けてしまい、もはや修復できない溝ができていた。その一つ、エレンスにはサトレンスからの攻撃から国民を守るための機密組織ビータが存在してしていて密かに活動していた。

                         1

ビータの一員、カナレ少佐は朝から驚いていた。

「え、この少女が新入りメンバーですか?」

作戦会議の時間、新入りの紹介で驚いたのは彼女だけではなかった。

「こんなちっさいのに大尉?」

「何かの冗談ですか?」

次々に出てくる不満声に副司令はそれはこちらのセリフだとこぼしそうになった。

「ああ。この顔で冗談を言っても仕方ないだろう。新入りだ。さあ、自己紹介ができるか?」

みんなの視線が少女へ向く。

「スラヴィアです。これからお願いします。」

第一印象は無愛想な美女だった。真顔で自己紹介されても反応に困る。

「あー私はカナレよ。あなたの直の上司になるわね。よろしく。」

「はい。よろしくお願い致します。」

まるで兵隊のようにビシッと立って礼をした。無表情で。

(うん。大変そうだねー)

みんなの心が視線を通してカナレに伝わる。

カヌレは愛想笑いで答えた。

(まずは案内だよね!)

そう思ってスラヴィアを見ると彼女は真っ直ぐにカヌレを見ていた。

その美しく、コバルトブルーの目にたじろいてしまいそうになる。

(この子の目なんか全てを見通しているみたい。)

不思議に思っていると彼女の口が開いた。

「施設案内は不要です。全て記憶していますので。」

(え?)

その場にいた全員が驚いた。何を言ってるんだという顔をしている。でもカナレは違った。

(この子私の心を読んだの?)

相変わらず無表情で虚空を見ているスラヴィアの顔を見た。何を考えているのかも何を思っているのかも分からない。

何かの秘密があるのかもしれない。けれど…

「よし、君さ、今日からウチで住もう!」

「はぁ?」

突然の私の言葉にみんなが唖然としている。スラヴィアも軽く目を見開いた。

(相変わらず感情がわかりにくいなぁ。」

スラヴィアの細く白い腕をガシッと掴み、あきれたみんなの視線を浴びながら作戦会議室を出た。

「ねえ、約束してもいい?」

エレヴェーターへと続く廊下でスラヴィアに問いかけた。

「約束、ですか?」

「うん。いつかさ、絶対にあなたを笑わして見せるから!」

スラヴィアに目線を合わせて勢いよく言う。

「そう、ですか。」

スラヴィアは半ば呆れたような声で言った。そして1人でスタスタと行ってしまう。

「ちょっと待ってよ!」

(上官の私を置いて行くとはいい度胸してるなー)

私はマイペースなスラヴィアの背中を追いかけた。

「お邪魔します・・・。え?」

私の家に入った途端に固まった彼女にこちらも固まってしまう。

「何?どうかした?」

「いえ。物がたくさんあっていいと思います。」

顔をしかめてつま先で歩く姿にびっくりする。

(それって遠回しに汚いってことかな?)

あたりを見ても多少散らかっている程度で私としては気にならなかったのでよしとした。

「じゃあ、あなたの寝る場所はあっちにあるから。」

早速部屋へと案内しようとすると彼女は目つきを鋭くした。

「部屋、ですか?失礼にあたるかもしれませんが私には必要ありません。」

え?と思った。ただ部屋へ、と案内しようとしただけなのにかなり警戒された。

「でも、部屋は必要でしょう?どこで寝るの?」

「寝る場所など要りません。自分で確保します。」

初めてはっきりと分かった。この子は怖いのだ。人との触れ合い、自分が無防備になる時間を他人に見られるのが。

「分かるわ。その気持ち。私も昔はそうだったもの。似てるのかもしれないわね、私たち。」

今は無理しなくていいから、と言うとスラヴィアはびっくりしたような顔になった。

「おやすみなさい、スラヴィア。」

そういって自分の部屋に戻ろうとした。すると後ろから小さな声で聞こえた。

「おやすみなさい、カナレ上官。」

思わず微笑んでしまう。

(意外と可愛いところあるんじゃないの)

そう思いながらドアを閉めた。


・・・官、・・・上官、カナレ上官!

「うわっ!」

急に大きな声で名前を叫ばれびっくりして目を開けるともう朝になっていて、制服姿のスラヴィアがいた。

「やっと起きましたか?」

そんな呆れた顔で見ないで欲しい。

「うん。」

彼女は長いため息をついてジト目で私を見た。

「中学校、行ってきますね。」

「行ってらっしゃーい!あ、本部から連絡あったらすぐに司令室に来るのよ。」

「分かってます。」

そんな会話をしてそれぞれの毎日を送る。今の私にはそれがとても愛おしく思えていて、気づけばスラヴィアと暮らし始めて1ヶ月が経とうとしていた。

「行ってきます。」

いつものように起こされた後、ドアを開けたスラヴィアの顔に影があった。

「どうしたの?なんか学校であった?」

気になって聞いてみると無表情に彼女は答えた。

「問題ありません。では。」

私はいつもと明らかに違う彼女の様子に戸惑いをおぼえた。

「そう、行ってらっしゃい。」

バタンとドアが閉まる。私はすぐに本部用のスマホに切り替えた。

「私です。ええ、カナレよ。すまないけど、監視員を2人スラヴィアにつけても構わないかしら。司令には私から伝えておくわ。・・・よろしく。」

そう伝えて電話を切り、窓を見た。彼女の様子が違う原因は大体わかっていた。

「まだ、相談するって言う方法がわからないのね、彼女。」

独り言が思わず口から出た。

ため息をつきながら私も仕事場へ向かった。


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