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異世界探索の開始。

「そして自分は今! 若かりし頃の肉体でこの異世界に立っているのだ!」

誰もいない塔の上で、拳を突き上げて空に叫ぶ自分がそこに居た……

そこでふと我に返り、自身の行動の恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じるも、誰もいない事にホッとした。


「何をやってるんだ自分は……ここでは一瞬の油断が命取りになると言うのに」

何故、異世界に来るのに若く強化された身体を与えられたのか、それにも当然理由がある。

協力者として活発な若い身体が理想的だという事もあるが、この世界では現代人は余りに非力だからだ。兵士や格闘家でもない普通の人間がモンスターと戦うには余りにも未熟過ぎるという事だ。


これが賢者様が言っていた即死の危険性である。


それも当然だと思う。剣を持って人を切るなんて経験をした事のある人間が居るだろうか? せいぜいナイフや包丁くらいで、後は銃だろうか……それも極一部の者だけで、まず日本の一般人には無縁の事だ。

ただ、もしその様な経験があったとしても、未知のモンスター相手に役に立つとは思えない。


「いきなり出てきた訳の分からないモンスターに切り掛かるなんて、平和ボケしている日本人では尚更無理か……いや、人によっては案外、現実逃避のままゲーム感覚で突っ込んで行くかも知れないな……結果は悲惨だろうけど」

この異世界に来るにあたって手にしたのは、自分で選んだ武具と、生存に必要な物資と知識にこの身体、そして自分が望んだ知識と技術だけである。

当然魔法も使えないし、コマンド入力で発動する様なスキルも存在しない。この世界ではスキルは自身で学び鍛錬して身に付けるしかない。まぁその為の若さでもあった様だが、ここがゲームや漫画と違う点だろう。

強くなりたいなら努力しろ!


「これが現実だよな。しかし、こんな弱っちい状態で飛ばされたこの場所は大丈夫なんだろうか……」


そんな感じだから、自分の飛ばされた場所によっては即ゲームオーバーになる事もあり得るし、近くの町に辿り着く前に死亡なんて事も……

と言うか、賢者様の話ではその可能性の方が高い様な話し方だったような気がする。そんな危険性が分かっていても、世界への影響を考慮して自分達へのサポートは最低限しか行えないという事だった。


最初の転生先は自分達を召喚した女神達にも分からず、飛ばされた先の状況は運次第……

つまり、この世界に来た時点から生死を賭けたサバイバルが始まっているのだ!


「随分とリスキーな条件だけど、こんなチャンスを逃す訳にはいかないからな」


異世界に飛ばされたのは自分を含め8人だと聞いたけど、いったい何人が生き残り、そして何人に巡り合える事ができるのかな……

自分は腰に差した『村正』の柄に手を置きながらふとそんな事を考えた。


そう自分がこの世界に来るときに選んだ武器は日本刀だった。

メインが村正でサブに脇差の『吉光』。月並みなチョイスだが自分が『使う』と考えた時にイメージできたのが日本刀だったのだ。まぁ竹刀や木刀を振り回した程度の経験ではあるが、命を預ける武器としては使い勝手のイメージできる武器が良いだろうと思ったのだ。

因みに選んだ武器の使用方法は自分から望まないと教えてもらえない仕様だった。つまり現代人が武器を貰ってもまともに扱えない事を考えると、女神様に選ばれた瞬間からサバイバルが始まっていたと言う事になる。

転生させられた目的からすると生き残る人数が多い方が良い様な気もするが、世界に影響を与える為、魂はあらゆる面で強い方が好まれると言っていた。

そんな訳で自分は剣術の知識として心形刀流を選んでみた。理由は自分が三重県人であったこと、江戸末期の流派は古流の美味しい所取りをしていて学べる型が多い事……なんて事を何かで読んだ気がしたから。実際居合はもちろん二刀流の方もあったのは良かった。


これらの知識や技術、サバイバル術や現地の言語知識もそうだけどポンと頭の中に入って来るのがチートの様にも思えたけど、脳細胞に働きかけて情報を焼き付けているだけで、賢者様曰く、どちらかと言うと科学技術に近いと言うので、そこは納得する事にした。

だからと言ってなんでもかんでも覚えられる訳ではなく、容量は決まっているし、そのほとんどを異世界知識で埋められる。

だから実際は二~三個程度の分野に絞る必要がある。

技術の方はと言うと当然実践を伴っていないので、ある程度修練を重ねないとモノにはならないのだ。現時点では付け焼刃そのものである。


そして武器の次は防具であるが、なるべく軽くそして動きやすいモノにした。

ゲームで高防御力の定番であるフルプレートなんて身に付け様ものなら、移動中に体力を全部奪われかねない……

それに戦闘になってもすぐバテそうだし、最初を乗り切る事を考えるなら逃げの一手! そこに多少の防御力を加味すると、鎖帷子に厚手の皮ジャケットか胸当て……それに籠手と脛当て、後は足にフィットした丈夫な靴とした。

で、問題は頭装備だったけど、急所を守る為には兜を被るべきなんだろうけど……視界の邪魔になりそうだし何か被って行動するのも慣れてないからと思い無しにした。

これらの希望を賢者様に伝え、出された防具に色々と注文を付けつつ、命を預ける物だし動き易さも着心地も大事だと思い結局数時間かけてお気に入りの防具一式を揃えることが出来た。


これらの武具に、寝袋と各種アイテムの入ったリュックを身に付けると、それなりの重さになる。

最初、全装備を身に付けた時は、いくら筋力が強化されていると言ってもこの状態で戦うのは無理がある本気で思った。

剣術なんかの知識は頭の中に思い浮かべられるけど……感覚は分からず体が付いてこなかったのだ。

実践時間が無かったらまず間違いなく即死路線直行だった。


そう、この世界では最初の武具選びを失敗すると生存率が一気に下がる! と思う。

鉄の鎧や盾、大剣や斧なんか選んだ時には……最初の数撃は良いだろうけどそれで仕留めきれなければ不味い状況に陥る。

まだ見ぬ他の7人がゲーム感覚で武具を選んでいない事を祈るばかりだ。

「まぁ、今は他人の事を心配できる様な立場じゃないけどね。まずは自分自身が生き残らないと意味ないよな……という事で、そろそろ探索開始するか!」

と、期待と不安を胸に自分の足元に広がる塔内部に足を踏み入れた。


「この階段で降りられそうだけど……モンスターに出くわさないよな……」

そんな不安を抱えながら一段一段慎重に降りていく

下の階は白壁に囲まれた部屋になっていたが吹き抜けの窓があり明るかった。

「モンスターは居なさそうだな」

辺りを見渡すと、窓辺や床にコケや草がちらほら生えている事から日常的に使われている雰囲気は無かった。

「無人の遺跡……もしかしてハズレを引いたかも知れないな。あっちでも余りクジ運は良い方じゃなかったし……」

そんなネガティブな思いが頭を過り出すが、何とか自分自身を誤魔化そうと無意識に辺りを見渡している自分に気が付いて、情けなくなりかけた時に壁で視線が止まった。

「おっ、壁に絵がある。遺跡モノ定番の壁画だな……所々色や壁が剥げてるけど、それ以外は鮮やかな色彩が残っていて、なんかフレスコ画みたいだな」

壁には女神や天使にドラゴンの様なモノが描かれていた。

「異世界の創造神話的な絵かな」

その後も慎重に階下に降りて行ったが、結局モンスター的なモノには遭遇することは無かった。

塔自体はどの階も同じ造りで内容は違えども最初に観た絵の続きだろう壁画が描かれていた。

そして最下層、地上階にはひと際大きく一枚の湖に立つ女神の壁画があった。

「この絵の前にだけ台座があるし、ここは『川と湖の女神』の神殿か……それにこの階だけやけに綺麗な気がする……」

そう思い辺りを調べてみて分かった。コケや草がないだけでなく砂埃も他の階に比べて明らかに少ないのだ。

「これは明らかに人の手が入ってる!」

そう思い期待を込めて、外に出てみた。


そこは湖の中にある小島だった。その上に塔は立っていたのだ。

そしてその小島には草刈や枝切りの跡があった。このことからココには人かもしくは何者かが定期的に訪れているという事が分かった。

「多分、この様子からココの管理者は野蛮な種族ではないだろうけど……」

周辺には骨や焚き火の後も無いことからそう判断したが自信がある訳ではない……

その小島から、対岸まで石橋が掛かっていて、その先には小道らしきモノが森の中へと続いている様に見える。


「取り敢えず向こうまで渡ってみるか」


周囲の湖は湖底まで透き通っていて、過去に島の周囲に建っていたと思しき柱の残骸がはっきり見えた。その周りを気持ち良さそうに泳ぐ魚や物陰から頭を出しているエビらしき生き物もはっきり見える。

そしてなにより、湖底に届いた光がクリスタルの様な小石に反射してキラキラと光りすごく綺麗だった。

そのクリスタルが宝石なのかこの世界の一般的な石なのか少し気になったが、流石にいきなり未知の湖に飛び込んで確かめる勇気はなかったので今回は諦めて、この美しい景色を眺めながら対岸へと渡った。


橋を渡り切った先の道は塔から見た通り森の中はと続いていた。

「さて、この道だが石橋から伸びてるし、道幅もあるから獣道じゃないとは思うけど……どうするかなぁ……この遺跡は今でも何者かの手が入ってそうだし、ここで誰か来るのを待つと言う手もある。しかし、頻繁に来ているって感じでもない。携帯食は五日分、切り詰めて倍の十日か……ここで判断を間違えると洒落にならない結果が……」


「んん~……」

 

「……ここで考え込んでも仕方ないか。迷った時は自分を信じて取り敢えず行動! 後は臨機応変って事で、この道沿いに進んでみるか」

そう腹をくくって森の中に足を踏み入れる事にした。

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