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王の間と結界の柱。

「多分このままでは近い内に、通路は見つかるじゃろ」

「そうだな……一応奴らも軍隊だからな……」

「なら、ここは先手必勝じゃな」

ハイドワーフの面々がそれぞれ意見を出し合うが……選択肢は一つの様だった。


「確かにまだ気付かれていない今なら、王の間まで近づける可能性が高いだろうね」

「それに、動かせるカニ型ゴーレムで敵を別の場所に誘導すれば、隙も作れそうだし」

「その間に、地底の星を設置できれば形勢逆転?」

「まぁ、上手くいけばだけど……」

自分達助っ人組の意見も同じだった。

ただ、この少人数で大部隊を相手にすると言う無謀に近い作戦ではあるけど……この袋小路で消耗戦を強いられるよりは可能性がある! とみんなが感じているのだろう。


「ギル案に一票」

と自分が手を上げると、他のメンバーも賛同してくれた。


「なら、作戦はさっきのゴーレム囮作戦でいくか?」

「そうだな。それが一番最適だな。それでよいか? ディアドラよ?」


そうキュアンとバンダルが自分達の作戦を採用すると


「問題ないよ。外で稼働できるガーディアンゴーレムは五体、カニ型ゴーレムが三〇〇体だよ。その内、ガーディアン三体とカニ型二〇〇体を宝物庫に送る。さらにここの通路にもカニ型五〇体配置してこの二カ所で敵を引き付ける。その間に地底の星を設置できれば形勢逆転だよ」

そうディアドラは胸を張るが


「ここに引き付けるのはマズくないか?」


キュアンが当然の不安を口にする。しかしディアドラも引かない。


「あの通路は一体づつしか通れないからね。カニ型だけでも十分対処できるさ。もし侵入されてもガーディアンゴーレムも一体いるからね。更にあたしもブリギッドもいるんだからここは心配いらないよ」

「そうです。私も魔法使えますから大丈夫です!」

「うむ……そうは言うが、しかし……」

「お前さんは心配し過ぎだよ! 全く」

「しかしだな、婆様よ……」

「うるさい! おだまり!」

「……あぁ! 分かった! 俺がココに残る!」

「……それでいいのかい?」

「ああ。もう決めた事だ!」

という事で結局キュアンがココに残り防衛にあたる事になった。


という訳で、王の間へは自分とアルティ、カルノスそしてバンダルとギルの五人で向かう事になった。


「しかし、どうやってこちらに敵を呼ぶ? 大声で叫ぶか?」

「それならゴブリンが首から下げていた笛で呼べるかもしれない。入り口開けて、近くに死体を転がせておけば勝手に突入してくるんじゃないかな」

「おっ、それでいこうじゃないか。なら作戦開始だよ。それから、お前さん達、カニ型一体持っておいき! それで会話ができるからね」


そうして、自分達五人は通路を出て王の間へと移動を開始した。

今回の作戦は、王の間に着いたらカニ型通信機で連絡を入れる。そしたらディアドラが残りのゴーレムを起動してくれる。

陽動後、どの位の敵が残っているかで難易度は大分変るけど、結界の場所が分からないのではこれを成功させるしかない。

そして、自分達が研究施設区画に到着した時、隠し通路の方から笛の音が聞こえた。


「いよいよ陽動作戦の開始だ」

「上手くいくかな……」

「カルは小さい事を気にし過ぎだと思うな~」

「俺は慎重になっているだけだ」

「こらこら、二人とも……おっ、敵が動き出した!」

「「……」」

「どうやら陽動は上手く言った様じゃな」

「ああぁ、そうみたいだ」


陽動の笛の音に研究施設付近の敵達は隊列を組んで移動し始めた。

外に居た敵だけでなく、建物の中からも出て来て全部で一〇〇体ほどいる様に見えた。その中にはオーガやオークも見える……

多分指揮官らしい体格のいいゴブリンがホブゴブリンなんだろう。


「ちょっと多い様に思うんだけど……」

「心配するな。いっぺんに飛び掛かれん限り大した数ではないわ」

「そうだ。キュアンにディアドラが居れば楽勝だろう。それより今の内にこちらも移動するぞ」


本当に大丈夫なのかと不安がよぎるが、バンダルに促されて先を急ぐ事にした。


陽動作戦が進行中とは言え、街の中には所々敵がたむろしていたので脇道を慎重に進む。

時折、大通りを敵の集団が移動して行くが、方向的にどうやら、陽動に釣られているのではなく宝物庫に向かっている様だった。

その光景を何度か目にすると、そのまま宝に目が眩んでそちらに全部隊が集中していればラッキーなんだけどなぁ、と淡い期待を抱いていた。

そして遂に王の間の近くまで辿り着いた。

そこで淡い期待は見事に打ち砕かれてしまった。王の間前の広場に大部隊が陣取っていたのだ。


「……さっきの部隊が可愛く見えるのは気のせいか」

「気のせいじゃないよ。僕も同じ意見だし……」


だけど、そんな状況でもラッキーはあった!

その広場の中央に、周りに頭蓋骨を積み上げその上にドワーフのミイラを吊るした禍々しい塔が建っていたのだ。

その姿にハイドワーフの二人は凄い形相で今にも飛び出しそうになっている。


「あの見るからに禍々しい塔が結界の起点なんじゃない?」

「そうかもな。明らかに怪しいし」

「だよね……カル、ディアドラに連絡してみて」

「了解」


そう言ってカニ型ゴーレムでその事をディアドラに伝えると


「その通りだ! それが結界の起点だよ! その塔に魂封の白虹石で作った短剣を突き立てれば結界を破れるはずさ!」

「これで全ての目標が確認できたね」

「そうだが……こちらの難易度は相当上がったけどな」

「それより、そっちは大丈夫なのかディアドラ?」

「こっちの心配はいらないよ。敵は集まってきているけどカニ型ゴーレムだけで事足りてるよ。 お陰でキュアンの愚痴が五月蠅くて敵わんわ」

「なっ! 仕方ないだろ、腰抜けばかりで退屈なのは事実なんじゃから。こんな事なら俺もそっちに行けば良かったと後悔しとるよ」

「はっはっはっ。今回はお前さんの分までこのギルが存分に暴れてやるわい」

と言ったものの……流石に重要施設だけあって敵の数も質も違う。


「三五〇はいるね……それに空を飛べるグレムリンが居るのが厄介だよ。まだ力の強いオーガの数が少ないのがマシな点だけど」

ココに居る敵は、グレムリンにオーガ、そしてゴブリンにオークだった。


少し離れた建物の中に身を潜めている自分達にアルティがその様に報告してきた。

「一人七〇体か、ちと多いのぉ」

「流石に無理があるって……でも、俺の魔法なら突破口を開く事は可能だけどね」

ギルに対してカルノスが強がってみせるが

「実際問題、厳しいぞ……王の間の扉はどうであった?」

「開いていたよ。それに出入りもあった」

バンダルの問いにアルティが答える。

「そうなると、王の間には指揮官のハイオーガかホブゴブリンとある程度の護衛がいる可能性が高いな」

 「なら儂の言った通りこのまま突撃してあの忌々しい塔を先に破壊するか?」

 「いや、だからそれは無謀だって!」

 「なんじゃ、カル。 さっきの威勢はどうした? 怖気づいたか?」

 「違う! レンヤ兄も言ってやってよ!」

 そうカルノスにふられ考えを整理する。

「確かにここにも敵の数は多いけど、それでも全体の三割強だろう。陽動に釣られた部隊や街の警備を差し引いても宝物庫には五〇〇近い敵がいると思う」

「そうだろうな」

「僕もそう思うよ」

「となると、宝物庫での陽動は長時間持ち堪えるのは難しいかもしれない。それと結界を壊しても外の援軍が到着するのに早くても半日はかかる……」

「確かに……短期決戦でなければ大量の敵を相手に半日持ち堪えなくてはならない……て事はレン兄は……」

「地底の星を優先した方が勝機は高いと思う」

「……敵全体の弱体化」

「そっちの方が希望が持てそうだな」

「なら先ずは王の間の制圧だけど……」

そう言って自分達三人はバンダルとギルに視線を向ける。

「当然、王の間には正面からは無理じゃな。裏から回って奇襲をかける!」

「そして素早く扉を閉めて、敵の増援を妨害している間に制圧するか……よし! それで行くか!」

自分達の意向を受けてバンダルとギルさっさと作戦を立てた。

「あの二人、さっきまでと違ってなんだか楽しそうだね」

アルティが耳元に囁きかけて来た。

「ああ、多分国に戻って来てうれしいのもあるんだろうな……占領されていても自分達の国だし、それを今から取り返そうとしているんだから、テンションも上がるさ」

「それもそうか……僕にはそんな経験ないもんな……」

そんな会話をしていてカルノスの方をチラッと見た。


国を取り戻す戦い……国を追われたカルノスも内心思う所はあるのだろうとは思うけど、特に本人が語らないのならコチラから触れる事ではない。

ただ、このユグド王国の開放は少なからずロベア王国開放の一助にはなる事は間違いない。


自分とアルティはカルノスに歩み寄り、肩に手を置いて

「「頑張ろうな!」」

と声をかけた。

そんな自分達の顔をキョトンとした感じで交互に見ながらカルノスは

「あ、あぁ……」

と答えるのだった。

まぁ戦いに挑む者の思いはそれぞれという事だな。と勝手な想像を膨らませながら自分達は作戦を開始した。

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