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氷塊の扉

 数日かけて再び自宅へと戻ったドロシーはソファに座ってくつろいでいた。目の前の背の低いテーブルには幾つもの料理と現在いる家族分のコップ三つが置かれている。

 と言っても、まだママの意識はハッキリせずドロップが寂しがって勝手に置いたのだ。

 聖剣らしい巨大なペンもソファの背に雑にかけられ、雑に巻かれた包帯は若干色褪せて怪しげなオーラを放つように。

 王国を揺るがす一品なのにまるで危機感無いのは父親譲りの風格かどうか、は定かではない。

 もし世間が「大魔王と盗賊の間に生まれた魔女見習いが盗まれた聖剣を持っている」などと知られれば、処刑されるのも騎士としては吝かではない。

 二人で小さなパーティを楽しんでいる。普通の鶏を焼き調理した骨付きの肉をかじったり、畑で栽培して取れた幾つかの野菜を調味料交えながら生で食した。

 割と成人男性でも後で吐き気を催してしまうほどの量ではあったが、魔女見習い二人はありえない勢いで食べ切り綺麗に残さず皿の数々を平らげる。

 行儀悪く野菜を咥えながらドロップは話題を切り出す。

「ドロシー知ってるか? 氷塊の扉」

 と言ってたつもりなのだが、現実では「ほほひーひっへふは? ひょうはいほほひは」としか言えてなかった。

 丁寧に食べてるドロシーは苦笑いしながら一回手を止める事を提案し、聞き直す。

 氷塊の扉とは、王国のお城裏側にあると噂されるどこかへ繋がってるか誰も知らないとされるゲートだ。

 名の通り氷塊に包まれ溶ける事は一切無くあらゆる出入りを拒む。

 幼い男女への親御の謳い文句で「悪い事をすると氷塊が溶けて悪魔が連れ去りに来る」と言うのは定番か。

 因みに実在するのは確かで定期的に考古学者や騎士が調査に来るが、氷塊を破った人間は未だに居ない。

 様々な騎士団の一員が、聖剣は盗まれず本来の姿に戻れば氷塊も切り裂ける。と思いにふける頃合い。

「今頃その氷塊のがどうしたの」

 ジュース入ったコップ片手に激しく水面を揺らしながら、もう片方の手で親指を立ててウインクした。


 昼。何の説明のしようもない有名な食事をする時間帯の城下町だ。

 ママが盗んだ聖剣を背にしながら大胆にもトコトコ歩いて商店街を横切り、一度森林地帯へ。向かったのは氷塊の扉がある場所に着く。

「この『扉』と『聖剣』は何の因果関係あるの?」

 と首を傾げてドロップの半そでの裾を掴む。

「この本を見てくれ」


 タイトル:謎解かない魔法の書


 ママは昔色々盗んでたと言うがこれも王国をひっくり返すレベルの書物である。何でもこの魔法を体得すると相手の事を何でも知れるらしい。

 大きな大きな氷塊に包まれた扉を見上げたドロップ フォードは清々しい笑顔で、小さい手で氷塊に手を当てた。

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