プロローグ
この王国には戦いの強さを示す『クラス』という制度がある。
クラス1、2、3……と、高いほど強いとされるランクだ。最上位から定期的に騎士団へと入団する資格を得るのだ。
クラスには様々な職の希望を持つ者がいて魔女、騎士、王の召使いなど様々である。
どの道、王を守る駒として強さは必須なのでクラスの資格を持つ人間はお互いをライバルとし、切磋琢磨していた。
そのクラス1。いわゆる最底辺のクラスの寮は落ちこぼれと呼ばれ諦めのムードと重たい空気が漂う。
今日もまあまあ美味しいご飯を、クラス1の一員であるドロシー フォードという14歳の少女はただ幸せとも不幸とも思わず食べる。
職としては事実上魔女を目指しているが魔力など到底無しに等しく、クラスの資格は剥奪寸前だった。
本当に目指している将来など青い少女にはまだ分からない。
その隣では飯が逃げてるかと思っていそうな、また魔女の少女がいる。ドロシーの双子の妹で名をドロップ フォードと言う。
姉とは対照的に高いクラス行きを待望されていた。花を自由自在に操る魔法使いで、クラス1にしては魔力も十二分と言わざるを得ない。
そんなクラス1の中で対照的な双子だが、姉は魔女の道を半ば諦めており嫉妬も執念もそこにはなかった。
「そんなに急がなくてもご飯は逃げないよ?」
苦笑いしながらお淑やかにシチューの具を一口。
「飯は逃げないけど時間は逃げるぞ! ドロシーを一人前にして一緒に騎士団入るんだ!」
姉想いなのはもはや近辺では有名で、その有様に感動する人も多きかな。
一番早く食べ終わったドロップは食器を片づけてから食堂を飛び出した。
その様子を見て気怠そうに金髪の、ドロシー達とは一つ年下の女の子が隣に座り込んでは頬杖をついた。
「カナイちゃん? 珍しいね」
「何でアイツは騎士団に執着してるんだ? しかも魔力0のドロシーを連れて行こうとしてる。魔力は才能だ、努力じゃどうにもならない」
あまりにも直球すぎる言葉だが、事実なのを理解していたので俯いて手を太ももに置いた。
「カナイちゃんは伝説級の魔力あるんでしょ? 本気出したらすぐに騎士団のトップだってなれるのに、どうして?」
目がうるむ。地位が目の前にある二人を見て今更悔しくなったり。
その質問に手を顔の前で軽く振ってまた否定する。
「正直王の地位だって夢じゃないさ。でも……」
でも、で一回止まって妙な空気がドロシーの頬を刺した。
冷めてしまった半分くらいあるシチューと気持ち、心の底に置いてきた炎が気持ちを揺さぶる。
ただドロシーの悔しいと書かれた目を直視して結局は喉の奥にしまい込んだ。
今夜も寮の部屋は冷え切って、休みたい騎士団への入団希望する者を苦しめる。




