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BECAUSE YOU ALWAYS STAND BY ME  作者: 古蔦瑠璃
第一章 水曜日
3/63

3 看板のない喫茶店(3)

 メールの返信を待ちながら椅子の上で考え事をしていたら、コンコン、とドアが叩かれた。


「まりのちゃん、俺、着替え終わったから」

「うん、あたしも」


 あたしはそう答えて、携帯を片手に持ったまま、ドアを開けた。

 司くんは、やや青紫を帯びた薄いグレイのシンプルなスタンドカラーの綿シャツに、黒のスキニーパンツといういでたちで、お京さんから手渡された服をそのまま着たのだと思うけど、女物(多分ね)の服を着ているせいだろう。違和感こそなかったものの、女の子みたいな優しい面立ちのせいもあって、華奢な感じが強調されて見える。さっきまでは一応、身体のラインのわかりにくいだぶだぶっぽいシャツにジャケットにジーンズだったから、ずいぶん雰囲気が違ってる。


「ああ、髪も少し乾かした方がいいな。はい、ドライヤー」


 司くん、洗面台の隣のマホガニーのチェストを開けてドライヤーを引っ張り出すと、コンセントをつないでからあたしに手渡そうとした。


「タオルドライしたから大丈夫だと思うんだけど……」

「俺、勝手に風かけちゃっていい? 髪、乱れるの気になるかな?」

「ん……あんまり気にしてない。でも自分で掛けるよ」


 一旦は遠慮したんだけど、司くんがスイッチをオンにしちゃったので、結局受け取って少し温風を当てる。

 その横で司くん、洗面所をぐるりと見まわして、濡れた服を詰め込んで膨れ上がったカバンに目を止めた。


「なんだー、制服しまっちまったのか? ハンガーにかけて、つるしとけよ。ランドリーONにしておくからさ。そのほうが早く乾くだろ」

「でも、あたし……もう帰らなきゃ」

「どうやって? 外、まだ土砂降りだぜ」


 言いながら、司くんは、窓越しに広がる藍色の宵闇に目をやった。その濃紺は、見る見る色濃くなっていく。あたし、ドライヤーのスイッチを切ると、司くんに手渡した。


「あっ、もういいの?」


 司くんも続けて髪を乾かすかと思ったんだけど、彼はそのままコードを抜くと、折りたたんでチェストの上に置いてしまう。

 司くんに続いて、洗面所から畳の部屋に移動しながら、あたしはもう一度窓の外を見た。外はもうほぼ真っ暗になってる。秋ってホントに日が暮れるのが早いね。


「日が暮れちゃったから、やっぱりあたし、帰んなきゃ」

「まりのちゃん、門限とかあんの? だったら送ってくけど」


 聞かれてあたし、かぶりを振った。


「そうじゃないけど、今、梓についてあれこれ聞かれるのは、あたし、少ししんどい。あたしが知っているのは、梓の両親は、彼女が小さい頃に離婚して、彼女はママに引き取られたけど、双子の弟の司くんはパパと一緒に出ていってしまったっていうことだけ」

「俺、母親が生きてるなんて、初耳だ」

「死んだって聞かされてたの?」

「いや、親父は何も言わないから、死別したもんだと勝手に思ってた」

「お墓とか、仏壇とかは?」

「んなものは、なかったけど……」

「ヘンだとか、思わなかったの?」

「ていうか、俺が物心ついたときには、親父、もう再婚してたし。これが若いカミさんでさー。子供心にも、お袋って呼べないんだよな、おねーさんみたいで可哀想でさ。なんか本当のオヤのこと聞くのも、気がひけてたってのもあったし」

「梓の両親が離婚したのって、あなたたちが5才のときだったって、あたし聞いてるよ。司くん、どうして覚えてないの?」

「んなこと言われたって……ガッコー行く前のことなんて、何も覚えてねーって」


 そのとき、手に持ったままの携帯の着信音が、また響く。

 あたし、司くんとの会話を中断し、携帯を覗きこむ。梓からの返信。


『駅まではセーフ。電車を降りたら大降り。しかたないので、コンビニで傘を買って帰ります。ところで、年末にレメディオス・バロの美術展が来るって知ってた? 来たら見に行きませんか?』

『OK!!! バロも楽しみだけど、ウィリアム・ブレイクの絵画展にも行きたいな♪』


 梓は絵文字を使わない。感嘆符や☆や♪も、まず使わない。だからあたしも、梓とメールするときは、極力使わないようにしてる。それでも、あんまり何にもないと味気ない感じがするから、少しは使ってしまうんだけど。

 返事を入力して、すぐに送信ボタンを押そうとしてやめた。ちょっと迷ったけど、こう書き加える。


『びっくりしないでね。梓の弟の、司くんに会ったよ。図書館で声、かけられたんだ』


 あたし、送信を終えると顔をあげて、司くんに聞いた。


「司くんがいたってこと、いま、梓にメールで知らせたから。多分、梓はすぐ電話してくると思うんだけど、どうする? 電話に出る?」

「へ?」


 司くんは戸惑った顔で、


「出るっつったって、話がねーよ。俺、さっきまで兄弟の存在そのものを知らなかったんだぜ」

「司くんはそうかもしれないけど梓は違うよ。あんたのこと、気にしてたんだから」

「なんで」

「弟だからでしょ。司くん、弟や妹は?」

「いない」

「そっかー」


 きょうだいのことが気になって仕方がないって気持ち、司くんがきょうだいを知らないのなら、ぴんと来なくても仕方がないよね。


「で、どうする、電話に出る? 司くんがここにいるよって言っていい?」


 うーんと腕組みをする司くんに、あたしは言った。


「梓のことを聞きたくて、あたしをここに連れてきたんでしょ。直接聞けばいいじゃない」


 そうこう言っているうちに、流れ始める呼び出し音楽。予想通り。梓は、司くんのこと、捜してたんだもの。かけてこないはずがない。


「鞠乃、今どこにいるの?」


 透き通った、どこか冷たい感じもする梓の細い声が、耳元で響く。あたし、受話器を通して聞く梓の声が好き。静かに一度呼吸を整え、なるたけ明るい声で、こう答えた。


「んとね、図書館のすぐ近くにある喫茶店だよ」

「司と会ったって、本当なの?」

「うん」

「司は帰っちゃった? 住所か連絡先、聞いてくれた?」

「ううん、あのね……」


 あたし、司くんの方をちらっと見て、言った。


「いるよ、ここに」

「喫茶店って、どこ? 行くから教えて」

「来るの? 今から」

「ええ。図書館の近くなの?」

「うん、すぐ近く。自転車置き場のところの角があるでしょ。そこを左に曲がってね……あ、でも、ちょっと待って」


 表に看板がないことを思い出して、あたしは司くんに聞いた。


「ここの場所、教えてもかまわないのかな? さっきのお京さんの話だけど、ノンケって、ノーマルってことだよね。普通の人が出入りしちゃまずい場所なの? 外に看板出してないのって、通りすがりの人は入ってこなくていいって意味なんでしょ?」

「ああ、それは別に構わないよ。ハローページに番号載せてるし。マスターの莫さんがゲイだから、いわゆるゲイ仲間が多数出入りしてるだけでさ」


 マスター! あの、ハンサムっていうのか、ダンディな男の人もゲイなの?


 思わず聞き返しそうになったけど、梓を待たせてる。あたし、レンガ色の建物の2階だから、と彼女に説明をしてからこうも言った。


「わかんなかったら、もう一度連絡ちょうだい。それと、ごめん。ビニール傘、もう一本買ってきてくれない? あとでお金、払うから」


 わかった、という梓の声を確認して、通信をオフにする。司くんはエアコンのスイッチを入れて、どこからかハンガーを持ってくる。


「制服、これにかけとけよ。それか、直接ドライヤーで乾かしてもいいけどさ。濡れた服入れてると、カバンが重いだろ」


 ハンガーを受け取りながら、あたしは聞いた。


「空調で写真傷まないかな? さっきの……え、と、お京さん? 写真にさわるなとか言ってたし、エアコンかけていいかどうか聞いてからのほうがよくない?」

「あの人は、んな細かいことは言わないって。そもそも、よそにきて写真の整理をするあたりが、テキトーなんだからさ」


 司くんはそういうと、かがみこんで写真の1枚に手を伸ばした。って、さっき触るなって注意されたばかりじゃなかったっけ。

 あたしがじーっと見ているのに気づいて、司くんは、にこりと笑った。


「写真家でもないのに、こんな大量の写真、一体何を撮ったのかと思ってさ」

「インドの写真?」

「と思うよ。ああ、これはきっとガンジス川だな。人が行水してる。藤原新也の写真集で見たのと同じような風景だ。でも、お京さんが撮ると、やけにあっかるいのな。まるで別の国だ」


 あたし、司くんの言葉を聞きながら、なんの脈絡もなく、以前聞いた梓の声を思い出す。


「写真は外の世界を切り取っているようで、本当は写真を撮った人の心の中を切り取っているのだと思うわ。だってなんでもない風景の中から、孤独や、不安や、焦燥や、絶望や、いろいろな感情が透けて見えてくることがあるもの。そういう混沌とした感情の核みたいなものを持たない、薄っぺらくてお清潔な写真はわたしは好きじゃない。見ててつまらないもの」

「どんな写真家が好きなの?」


 写真家の名前なんて、ほとんど知らないあたしのその質問に、梓は次々と名前を羅列していく。この人は風景写真家で、とか、この人は海に潜って海底樹林を撮っているんだ、とか、この人は戦場カメラマンで、とか、説明をまじえながら。梓は人見知りだけど、興味のあることにはひどく貪欲で、興味のある話をするときには雄弁になる。

 正直なところ、梓といま顔を合わせるのは、あたし、気まずい。でも、あたしたちは2人で行動することが多くて、共通の友人と3人とか4人で出かけることはめったにない。だから、こうして司くんがいて、2人きりでない状況で会えるって、ある意味気が楽かもしれない。なんとなく、そういう風に考えてみたりする。




 司くんが手に取った写真を横から覗き込んで見ていたら、不意に障子が開いて、お京さんの金色っぽい頭がのぞく。


「タオ、莫がサンドイッチ作ったから、彼女と食べに出ておいでって……あーっ!!! あんた、やっぱり触ってるーっ」


 司くんは、片手に写真を持ったまま、首をすくめる。


「触るなっていわれると、つい見たくなっちまうんだよな。でも、順番は変えてないぜ。一番上のを見ただけだ」


 いいながら司くん、写真を元の位置に、そっと戻した。

 お京さんは人差し指をピシッと立てて、司くんの方に向ける。


「ダメよ、タオ。悪いことをしたときは、ごめんなさい、でしょ? ママはあなたをそんな子に育てた覚えはないわ」

「だれがママだよ……」


 げんなりしたようにお京さんを見る司くんに、お京さんはにっこりした。


「だってあなたが言ったのよ。あたしをママみたいだって……」

「なんだよそれ。覚えてねーよ。一体いつの話だよ」

「7年前、あんたが最初に莫に連れられて来たときよ」

「俺、そんな調子のいいことぶっこいたっけかなあ……?」


 そう、司くんは首をひねる。


「けど、大体さ、あの時はあんたを本物の女だと思ってたんだよな。そりゃ、ちょっとドスの利いた声の女だとは思ったけどさ。想像もつかないじゃないか、きれいに化粧して、スカートはいて、どっから見ても、普通に女にしか見えなかったんだから」

「あ・り・が・と。それって、とっても嬉しい誉め言葉だわ」


 お京さんはウィンクする。

 司くんは肩をすくめて、こう答えた。


「別にお京さんの女装が完璧だとか誉めてるつもりはないぜ。ただ、俺、小学生だったし、ゲイだのニューハーフだのの存在が全然別世界で、はなっから念頭になかったってだけの話でさ」


 それを聞いたお京さんは、ひとつ溜息をつく。


「そこが、あんたがつくづくノンケだって思うあたりなのよね。あたしなんか、小学校低学年の時に好きになったのが音楽の先生でさ。テノールの美声で 魔弾の射手を歌うわけよ。こう、しびれちゃってさぁ。そういう世界の存在を知ったときは、喜びもひとしおだったわ。あたしだけじゃないんだ、仲間がいるんだってね。それはともかく……」


 と、お京さんはたしなめ口調に変わる。


「写真に触っちゃだめよ。半年かけて撮り溜めした貴重な映像で、中にはデータが残ってない物もあるんだから」

「OK、もう触らない」


 司くんは、軽く両手を上げてそう言い、あたしを見た。


「ああ、制服のハンガー、出口の横のハンガーポールに掛ければいいよ。エアコンの風が直接あたったほうがいいから、少し移動させよう」


 司くんは、言いながら、スケルトンタイプのハンガーポールをエアコンの正面に引っ張ってくる。写真の山は避けて、それは慎重に、ゆっくりと。


「一体なんだよ、お京さん、この写真の山は。なんでここに来て広げてるんだよ。自分ちでやればいーだろ」

「アパートは半年前に引き払ったわ。ひょっとして帰ってこないかもしれないつもりだったし。でもダメねー。あたしって根っからの都会人。清潔で快適な生活がなつかしくなっちゃうんだから。こっちに戻ってきてホテルに2泊したけど、ホテル代もったいないしー。ここだったらシャワーついてるし、家賃も取られないし、莫もここには普段は寝泊りしてないし、住む所が見つかるまで居座らせてもらえたらと思って来たのよ。今、だれも使ってなくてラッキーだったわ。知り合いかだれかに貸し出し中だったらどうしようかと思ってたもの。そういえばタオ、あんた法学に受かったんですってね。遅くなっちゃったけど、おめでとう。H大なんだって、すごいじゃない」


 インドにも都会はあるだろうにとかなんとか司くんがつぶやいたのをあたしは聞いたけど、お京さんは口をさしはさむ余裕すら与えず、一気にそれだけ続けてしゃべった。

 司くんは仕方なさそうに笑って、答える。


「サンキュー、お京さん。俺の方こそ、葬儀に出られなくて悪かったよ」

「いいのよ」


 そう、お京さんは首を振る。


「あんたはおさむちゃんのこと、直接は知らなかったし、あたしも受験生の貴重な1年を棒に振ってまで来て欲しいとは思わなかったわ」


 あたし、2人の会話を聞きながら、さっきお京さんが言った、喪が明けてないって言葉を思い出す。喪が明けてないって、破局を迎えたとかそういうニュアンスのたとえじゃなくて、本当にそのままの意味だったみたい。修ちゃん(やっぱりお京さんの恋人なのかな?)という人が、半年ぐらい前に亡くなって、お葬式の日が、ちょうど司くんの受験と重なったってことだよね。


「あんた、真剣にがんばってたもんね。一発合格できて本当によかったわ。ときに、お父さんとは、仲直りしたの?」


 その質問には、司くんは、ちょっと嫌そうな顔をした。


「生活費と学費を出してもらってる」

「そう、よかったじゃない」

「入学にあたって、下宿の許可もおりたよ。とはいえ、通いだとさすがに遠かったから無理もあったんだけどさ。電車3本乗り継がなきゃなんねーし」

「じゃ、晴れて一人暮し?」

「まあね」

「やったー、いいこと聞いちゃったー。遊びにいっちゃおーかなー」

「どうぞ。あとで地図書くよ」


 あっさりとそう答える司くんに、お京さんはきょとんとした顔になる。


「やだ。そういうリアクション? ジョークのつもりだったのに……」

「なんでだよ。人を拒む理由なんてないよ。一人なんだから」

「そういうセリフ、人によっては意味深になるんだけど、あんたが言うと、ほんとになーんの意味もないのよね」


 お京さんは溜息をつきながらも笑顔になる。


「あたしみたいな、見るからにヘンなのが周囲をうろうろしたら、いろいろ差し障りがあるでしょ。たとえば、さ、カノジョができたら、カノジョは気にすると思うわ」

「そういうの気にするような女はカノジョにはしない」


 お京さんの言葉をさえぎるように、司くんは言った。何か、決意しているような強い口調だった。

 そこで、お京さんは、あたしをちらりと見る。さっき司くんはお京さんの誤解を訂正してたよね。あたし、カノジョでもなんでもないんだよ。思わずぶんぶんと首を横に振る。あたし、関係ないよ~。

 お京さん、不意に手を伸ばしてきて、あたしの頭をぐりぐりと撫でる。


「まりのちゃん、あんたってばいい子ねえ」


 お京さんは、そのまんまあたしを引き寄せ、ふわりと抱き寄せる。微妙に身体の密着しない、優しい抱きしめ方。襟元から、シトラス系の香水の匂いが漂う。


「一緒にタオのとこ、遊びにいこーねー」


 え? え? 何? どういう意味? ひょっとして……あたしが首振ったのって……違う意味に取られちゃった? トランスジェンダーだか、ゲイだかが司くんの周りをうろうろしても、あたしは気にしないって……そういうことになっちゃったの?


「お京さん、まりのちゃん硬直してる!」


 あたしが混乱気味の頭でぐるぐる考えてたら、司くんが、お京さんからあたしを引き離してくれた。


「行こうぜ。莫さん待ってるよ」


 あたしたちはそれぞれに靴を履いて、短い廊下に出た。司くんは、障子戸を閉めながら、お京さんに向かって言った。


「バイクの修理屋だとダメで、弁護士ならOKっていうのは、完全な職業差別だよ。俺、やっぱりあの人の考え方とかついていけない。金は出してもらってるけどさ」


 さっきの話。お父さんのことだ。梓のお父さんでもある人なんだよね。どんな人なんだろう。

 お京さんは司くんの言葉を聞いて、ちょっと考え込むように首を傾げ、こう返した。


「別にいーんじゃない。ついてけなくても。考え方が違おうと、お金を出すのは親の義務。あんたが負い目に思うことなんかなーんにもなくってよ」

「違う。負い目に思ってるんじゃない。気持ちが悪いだけだ。あの人の思惑に踊らされて進路を決めたわけじゃない。自分で選んだ。けど、そう思われてるってところが、どうにも気色悪いんだ」

「司法試験は甘くないわよ。いまどき苦学生やってる人なんて珍しいんだから、何もかも自立してやって行こうと思うとハンディキャップになるわ。利用できるものは敵でもなんでも利用せよ。もっとも親なんてそもそも目の上のタンコブみたいなものなんだから、気楽にね。でもさ、あたし思うんだけど……」


 お京さんは、店内に戻るドアのノブに手を掛けたまま立ち止まって、振り返る。


「お父さん、妥協されたんだと思うわ。だって本当は、あんたに病院を継いで欲しかったんでしょ?」


 その言葉には、司くん、何も答えず、ただ黙ってお京さんに続いてドアをくぐった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすくてとてもよかったです。 お京さんのキャラクターが好きです。このお話がこれからどうなっていくのか楽しみです(#^^#)
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