表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

第2話 稲黍鼓のウィアード

「ですから、ここ喉奥ここですよ。合唱練習なんかじゃなくて、()()()()()()()()()()、狙いを定めて一発どうぞ」


 あっけらかんとした顔の、亨さんへ再三告げた。


 けど、


「は――いや、いやいやいやいや!? 何を言ってるんだキミは!? 護身用のゴム弾だとしても、体内だなんて正気かキミはぁっ!?」


 人が良いなぁ、このアラサー。


「気にしないで下さい」


 慌てる亨さんに対し。いつもみたく、平静に。


「私も一応、“メーカー”ですから。身体(からだ)に宿った『秘装(ひそう)』を使って、銃弾ぐらい防げます」

「いやでも、どうして口内なんだい!?」

()()()()()()()()()()()()。自分の“力”ですけれど、あんまそういうの、好きじゃないんで。……あぁ、もしかして、くちが小さくて狙い辛いですか? それじゃあ、あ〜〜〜〜……」


 がぱーっ、て口を開いて見せる。

 けど、それでも、この大人ヒトは。


「い、いや、だけどもし、万が一、怪我でもしたら――」


 拳銃鳴かず、銃弾飛ばず。

 ――あぁもう、焦れったい!


「亨さん、銃を貸して下さいッ!」


 身を乗り出して――銃を掴んでっ!

 って、亨さん! 手を離して下さいってば……!


「私が自分で引き金引きます! 亨さんは見てればいいですっ!」

「いやいや、いい訳ないだろぅ!?」


 ッ、仕方がないっ。

 品行方正も無いがこのまま、テーブルの上で拳銃(くわ)えて――


「わぁああああ!? バカバカバカバカバカだろうキミは!? 引き金引いたら本当に――」

五月蝿(ふぅふは)ひほ! 意気地ひふひはひぃ!」


 ドッ――!!


「ごぼッ――……」


 喉の奥――……っ、


「――げほっ、げほっ……!」


 危ない、飲みそうになったぞ……!


「……ふぅ。あぁ、もう終わりましたよ。亨さん?」


 弾丸受けた衝撃で、け反った身体からだを椅子に戻して。

 それから亨さんの顔を――ああ、“イカれた少女ヤツだ”、って顔だ。


 でもまぁ、こんなものだろう?


「……それが、キミの“力”かい?」


 驚天動地と興味津々が程よく混ざったような相貌で。

 亨さんは私の顔を、まじまじ眺め、眉根を寄せて。


「一体、どんな仕掛けなんだい? 弾丸は、飲み込んだのかいっ……!?」

「いえ、飲んでなんかいません。衝撃毎、包み込んで――ここに」


 からころと、舌でもてあそぶのをめ。楕円型の飴玉を一つ、前歯で挟んで「いー」と見せ付けた。

 それをまた、亨さんは凝視しながら。


「……オレンジ色の、飴?」

「はい、私の持つ秘装――“ウィアード”って、呼んでます」


 仏壇の前で唱えるみたく、自分の両手を合わせて――離す。

 身体に纏ったオレンジ色の、オーラは鮮やかな飴を。まだ固形として成り立つ前の、粘度の高い不定形を。

 左右に開いた手の中で、架け橋みたいにたゆませて。


 ああ、結局手ぇベタベタする。


 それから飴を成形し――扱い易いナイフを彫刻。固めたウィアードの(やいば)は、市販の物より良く切れるんだぜ?


「……なる程、こりゃスゴい。ところで、ゴム弾は舐めたままかい? 異物なんだから、不味いだろう?」


 なる程、確かに。

 亨さんからすればそうなるか。


「飴玉は、()()()()です。(かじ)って()()()()()()()()()()()、未練がましく舐め続けるんです。でも味は悪くないんですよ? いや食べさせるなんて気持ち悪い事、したくはないんで共有(シェア)出来ませんが」


 と、一通りセールスをしたら。


「それで、どうですか?」


 目を丸くした亨さんに、少し得意気に問い掛ける。


「この面接、合格ですか?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ