第1.5話 一日の終わり
長官の思わぬ言葉に黒翔は驚きと戸惑いを隠せない
「一体何をおっしゃっているのですか?理解が追いつきません」
「言葉が足りなかったか?お前には高校教師となってある生徒を守ってもらう」
「ある生徒?」
「まあ今日はもう遅い。詳しくは明日九重から聞いてくれ」
九重とは長官の側近である九重八尋のことである
—もう正直何が何だかわからない。ただこれだけはわかる。今の対策隊は信用できない。こんなことなら
「はっきり言って今の対策隊は信用できません。俺はもう除隊させて...」
長官が黒翔の言葉を遮る
「本当にいいのか、それで。紫山副長官の恩をわすれたわけではないだろう」
彗術犯罪対策隊副長官の1人である紫山仗助は黒翔や他の第4部隊隊員にとって恩人である。黒翔たちが孤児院にいたころ行く当てのない彼らを引き取り対策隊隊員として育ててくれたのだ。黒翔にとって彼は自分の未来を救ってくれた人物であり、最も尊敬する人の1人なのだ
「お前がここをやめれば紫山副長官の恩をあだで返すことになるぞ」
—確かにあの人には返しきれない恩がある。悔しいが長官の言うとおりだ。ここでやめるわけにはいかないか...
「わかりました...では失礼します」
「ああ」
長官室の扉を閉め黒翔は思いつめた表情で部屋を後にする
—結局大したことも言えなかった。あいつらを守ってやれなかった...こんなことになる前に手を打つべきだった。本当にすまない...みんな...
「黒翔!」
「紫山副長官...」
「すまなかった。お前たちを守ってやれなかった...解散に反対したのは俺だけだったんだ」
「いえ、紫山副長官のせいではありません。すべて自分の力不足です。拾っていただいたのに申し訳ないです。反対してくれてありがとうございました。」
「いいか、これはお前のせいではない。幹部会の奴らの頭が固すぎたんだ。だからお前が責任を感じる必要はない。わかったな」
「ですが...」
「とにかくもう今日は休め。」
「すいません...」
こうして嫌な一日が終わった。黒翔は複雑な思いを抱えながらベッドの上で眠りにつく。