第21話 七夕公演 後編
後編です。
最後の台詞を言い終わり、観客に向かって礼をした瞬間、想像以上の大きな拍手が巻き起こる。
気が付けば、ステージの周りには百人はいるんじゃないかというくらいの大人数が集まっていて、文字通り老若男女、若い人からお年寄りまで大勢が、私達に向かって惜しみのない拍手を送っていた。
「……っ!」
これがか、と、新と顔を見合わせる。
これが、舞台に上がるということなのか。
これが、自分ではない誰かになるという快楽なのか。
かつて、新入生歓迎会で見たあの光景が、今実際目の前に広がっている。
その事実が、一周回ってなんだかむしろ現実味を帯びてなくて、ふわふわとした感情が心の中を彷徨う。
「ああ、楽しかった」
気が付けば、私は七夕の空を仰いでそう口に出していた。
*
一通り撤収が済んだ後、私達3人はステージの裏手に取り残されていた。
まあ、別にはぶられてるわけではなく、先輩たちが撤収用の車を呼びに行ってくれているのを待っているだけなのだが、気が付けば音羽もどこかへ消え、新と2人きりになってしまう。
「そうだ、千代」
ふと思いついたんだが、みたいな感じで口を開く新。
「ん? 何?」
「これ、渡し忘れちゃうとアレだから」
そう言って、彼はポケットから何やら小さな箱を取り出す。
「誕生日おめでとう、千代」
「……もしかして、覚えてたの? 私の誕生日」
と言いつつ、そうだ、今日私の誕生日だったわと内心少し焦りを覚える。
七夕公演のことで頭いっぱいで、とてもそんなこと覚えてる暇がなかった。
「それに、プレゼントまで……なんか、新じゃないみたいだね」
「なんだ、俺じゃないみたいって。もしかして喧嘩売ってる?」
「いやいや、少し意外だったからさ。素直に嬉しい。ありがとう」
プレゼントを受け取り、はて新のチョイスとはこれ如何にと、包装された小箱を見つめる。
「……開けていい?」
「ま、まあ……目の前で開けられると流石に少し恥ずかしいけど……」
「じゃあなおさら開けよう」
「お前は俺をどうしたいんだよ。話聞いてた?」
苦笑する新を尻目に、丁寧に包装を剥がしていくと、中からまるでプロポーズの時に「僕と結婚してください」と差し出す時の指輪が入っているような小さなケースが顔を覗かせる。
もしかして、ホントにプロポーズなんじゃないかとか余計なことを考えながら、そっとケースを開けると、そこには小さな黄緑を基調としたブローチが鎮座していた。
「……なんていうか、ことごとく予想を裏切るよね」
「ど、どういう意味だ……?」
「いやー別に?」
さすがにもう一度「新らしくもない」なんて言ったら怒らせてしまいそうなので、ふんわり口を濁す。
まさか、こんな素敵な物をくれるなんて思わないじゃん?
彼への感謝をそのまま口に出すのもなんだか恥ずかしかったので、精一杯の笑顔で彼に、
「ありがとう、彦星さん」と言って、私は彼の手を取った。
今夜は、今夜こそは晴れるかしら、と。
これにて第二部「七夕公演編」終了です!いや長かった!
…長かったのは更新が滞ってたからですね、ええ…反省してます…
第三部もできるだけ早く上げられるように頑張りますので、よろしければ評価・ブックマーク等していただけるとモチベーションになります!
では、また!!




