第14話 今日から織姫、始めます。 後編
後編です。
「まあ、あの出来なら凛ちゃんも普通にOK出すと思うし、これで台本は名実ともに決まった感じだね」
「ええ、そうですね」
「となると……?」
そう言って、わざとらしくニヤっと私達に笑いかける神原先輩。
何が「となると」なのかピンとこず、思わず新と顔を見合わせてしまう。
「な、何がとなるとなんですか……?」
「ふっふっふ、気づかないかね若人たちよ。私は以前、今回の公演は主に1年ズに担ってもらおうと思ってるって言ったね?」
「え、ええ」
「今回は予想外にとはいえ、音羽ちゃんが台本を書き上げてそして採用された。となると、彼女に演出をやってもらった方がいいとは思わないかね?」
「まあ、そうですね」
うんうんと頷く私に、新が「演出って?」と耳打ちしてくる。
「私も前にざっくり聞いただけだけど、確か監督みたいな役職だったかな?」
「あー、なるほど。書いた本人にやってもらった方がいいって、そういうことか」
ほかにも確か、音響や照明、それに舞台監督……だったか? そんな感じの役職があると先輩が言っていた気がする。
いかんせんいつ説明されたかすら記憶が曖昧なので、イマイチ自信はないのだが……
そんな私達のやり取りを見てか、神原先輩が「演出はね……」とフォローを入れてくれる。
曰く、「演出」とは私がさっき言った通り監督のような役割で、舞台上の演出効果の監修を担当する。
曰く、「音響」とは舞台中に流すBGMやSEと呼ばれる効果音、また必要があればOPやEDの音楽を流す担当のこと。
曰く、「照明」とは舞台上の照明の設定、それに例えば夕方のシーンでは証明の色を変えるなど、本番中の照明の切り替えの担当のこと。
曰く、「舞台監督」通称「ブタカン」は本番までの練習スケジュール管理をしたり、舞台上の全ての安全に気を配るという、事実上舞台での最高責任者にあたる存在だそうだ。
と、ここまで説明して先輩は「まあ、今回は外の舞台だから、まず照明は使えないだろうし、音響だって最低限になるし、それにブタカンは私がやるから、1年ズには演出・役者あたりをやってもらうことにはなると思うけど」と言って笑って見せる。
いや、全然笑えないんですが……
と、新がふと「ってことは」と何かに気付いた、否、気づいてしまった表情を浮かべる。
「それで東雲が演出ってことは、さっきの『となると』の続きって……まさか、役者は俺達ってことですか?」
「ゑ?!」
驚愕のあまり台詞が旧字になってしまった私に構わず、先輩は「ご名答!」と嬉しそうに答える。
「せっかくだし、2人に織姫と彦星をやってもらおうかな、と!」
「……マジですか?」
「いいじゃない、いつか舞台に立ちたいっておもって演劇部に入ってくれたんでしょ? なら、早めに機会が訪れたラッキーくらいに思わなきゃ!」
「ま、まあそれはそうなんですが……」
ちらりと新の顔を見て、この間の音羽の予言が当たったかとため息をつく。
まあ、音羽と新が織姫・彦星をやるってのも何か嫌だし、かといって私と音羽でやるのも趣旨が変わってきちゃう気がするし、妥当な結論っちゃ結論か……
そんなことを考えたら、まあ彼とやるのも悪くはないかなと不思議と思えたので、先輩に「わかりました」と言って頷く。
「そう、よかった。それで、新くんの方は?」
「俺もまあいいですけど……でも、いいんですかね? まだ入部して間もない、何なら舞台すらまともに見たことない俺が早速役者なんかやって」
不安そうに返事をする新。
そんな彼に、先輩は笑って「大丈夫大丈夫」と肩を叩く。
「誰だって最初は初心者なんだからさ。せっかくの演劇部なんだから、何はなくともまずは舞台に上がって、主役になることから始めてみなよ。そうすれば、何か見えてくるものもあるはずだからさ」
「おお、なんか名言っぽいですね」
「ゴメン、狙った」
ふふっと笑いつつ、「でもウソではないよ?」とおどけてみせる先輩。
「わかりました。頑張ってみます」
「オッケー、2人ともありがとう。これで役者も決まり、っと!」
嬉しそうに手を叩き、ささっとメモを取る神原先輩。
「さて……各自の役割も決まったし、今後のスケジュールを少し詳しく話していこうかな」
「はい」
「お願いします」
そうして改めて姿勢を正して返事をしたその瞬間、私の心に“ああ、始まったんだ”と、そんな想いがふと浮かんでた。
私達の初舞台が、初公演がいよいよ始動するんだと、そう思うと心音が周りに聞こえてしまいそうなくらいに大きくなっていったのだった。
ちゃんと各週更新できてる自分に感動する今日この頃です。まあ、おかげで書き溜めはどんどん減っちゃってるんですけどね…
次回更新は11/2の22時です。
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では、また!




