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第12話 見惚れろ!死んでしまえ!! 後編

後編です。

 そして約束の昼休み。

 私と新は高校棟1階の保健室の入り口の前に、何故か2人で立っていた。


「あれ、東雲は?」

「音羽なら、さっき急用が入っちゃったって言ってたよ」


 そう、昼休みの少し前、3限と4限の間の休み時間に音羽がクラスにやって来たと思ったら、珍しくなんだか申し訳なさそうに「生徒会の手伝い頼まれちゃって」と言ってきたのだ。

 ……まだ生徒会とかの手伝い系やってたんだ……

 普段私のことイベント好きだなんだと言ってくる割に、何だかんだで音羽が一番のイベント狂いなんだよなぁと、そんなことを考えて思わず苦笑してしまう。

 まあそうは言っても、おそらく彼女だって台本の説明は聞きたかっただろうし、それで少し申し訳なさそうというか、残念そうにしていたのだろう。

 等々、そんなことを内心思いつつ、新には「音羽は結構多忙なんだよ」とだけ言っておく。


「多忙、ねぇ?」

「ま、あの子は器用だから、後で凛先輩の説明をかいつまんで話せば大丈夫でしょ」

「そ、そうか……まあ、なんにせよ任せるよ。俺は多分、説明理解するので精一杯だろうからさ」

「それと、凛先輩の胸に気を取られるのに精一杯って?」

「何も言ってないだろ?!」

「なんてね。でも、冗談抜きでそんなマジマジ見ないのよ? 女子はそういう視線に敏感なんだからね?」

「へいへい。大丈夫だよ」


 ……心配だ。

 いや、新の視線の心配なんかしてても仕方ない。

 ふうと浅く息を吸って保健室のドアを軽くノックする。


「失礼します。1年C組の笹原千代です。えっと、凛先輩……山崎凛やまざきりん先輩に用があってきました」


 ドアを開けて一歩保健室に足を踏み入れると、そこには相変わらずカーテンの閉まったベッドが1つと、養護教員の北条先生の姿があった。


「ああ、演劇部の子ね。山崎さんなら今は起きてると思うから、どうぞ、入って」

「失礼します」


 促されるままに先輩のいるベッドのカーテンを開け、「おはようございます」と声を抑えめに言う。


「あ、ちーちゃん。おはようございます。どうしたの、わざわざ保健室こっちに来るなんて」

「いえ、実は先輩に少し教えて欲しいことがありまして……っと、その前に……」


 カーテンの外で変な顔をして固まっている新を掴んで、やや強引にカーテンの中に引き込む。


「紹介します。我が演劇部の期待の新人、私と同じ1年C組所属の新です」

「は、初めまして! 谷塚新です! よろしくお願いします!」


 微妙に滑舌悪く自己紹介をする新を見て、凛先輩はニコニコと笑って「この子か~」としみじみと言ってみせる。


「こちらこそ初めまして。一応演劇部副部長をやってます、山崎やまざきりんです。新くんのことは希望きのからかねてから聞いてるよ~。よろしくね~」


 改めて、本人の自己紹介にもある通り、彼女の名は山崎凛。

 私達の1つ上の2年生にして、「保健室の幽霊」という異名を持つ有名人である。

 その通り名の通り、学校にはほぼ毎日来ているが、基本的には保健室から出ることはなく、授業も自主学習という形を取っているらしい。が、この間の神原先輩の話曰く「超頭はいい」らしい。

 そんな彼女のもう1つの大きな特徴といえば、やはりその卓越した外見だろう。

 音羽も大概美少女だと思うし、神原先輩だって王子様みたいでとてもかっこよくて可愛らしいのだが、しかし凛先輩はそれとは一線を画す、いわば演劇部セクシー部門の第一人者なのだ。

 私が新歓で彼女を始めて見た時、おっとり系の可愛らしい人だなぁと思ったように、その童顔はまるで小動物のようでもありつつ、一方推定D~Eカップの彼女の胸は、おっとりとしたその雰囲気とのギャップで抜群の破壊力を備えているという、とってもマルチタスクな先輩なのだ。

 そんな彼女の独特の雰囲気に気圧されたのか、新はどこか落ち着かない様子で「は、はい! よろしくお願いします!」と答える。


「うんうん、いい子そうじゃない」

「どう、ですかね……私的には賛成しかねますけど……」

「オイコラ、失礼だなお前は……」


 ぱかりと新に後頭部を軽く小突かれる。

 何をとばかりに彼の方に向き直ろうとすると、先輩は「仲がいいんだねぇ」と言って笑った。


「それで、具体的に用事っていうのは?」

「ああ、はい。先週末に、神原先輩から七夕公演に関するお話を色々と聞きまして、そこで台本に関する話がありまして」

「なるほどね。それで、私から詳しい説明を受けて来いって言われて、ここに来たのか~」

「ええ、大体そんな感じです」


 ついでに「音羽には後で伝えておくので」と無駄な情報をつけ足してみる。


「オーケー、じゃあざっと説明していくね」

「お願いします」

「まず、高校演劇で使う台本には大きく分けて2種類あって、それはそれぞれ創作台本と既存台本って言うんだけど、聞いたことない?」

「いえ……」

「まあ、日常生活では聞かない言葉かもね。2つとも読んで字のごとくで、創作台本は自分たちで創った台本で、既存台本はインターネット上にある台本置き場みたいなホームページに載ってる台本を使わせてもらう形だね」

「そのHPに載ってるのを使う時って、使用料とかかかるんですか?」


 見ると、さっきとは打って変わって新が真剣な表情を浮かべていた。


「うーん、ものによるって感じかな。使用料を求めるHPもあるけど、大概はご一報いただければそれでいいですって感じかな? 一度色々サイト回ってみるといいと思うよ」

「わかりました」

「それで、多分希望が言ってたのは、今回の七夕公演はどうしようかなってことなんだろうけど……今回の公演って、ちーちゃん達にとって初舞台になるわけだよね?」

「ええ、そうです」

「らしいです」


 うーんと腕組みをして唸る凛先輩。

 しばらくそうして何かを考えていた様子だったが、ふとあっけらかんと


「せっかくだし、台本書いてみたら?」と言う凛先輩。

「え、私達が、ですか?!」

「そうそう。せっかくの初舞台なんだし。もちろん、書き方とかは教えるからさ」

「と、言われましても……ねぇ?」

「なぁ?」


 思わず新と顔を見合わせてしまう。

 せっかくなんだしと言われても、正直台本を書くということ自体あまりに未知数すぎて、やってみようかどうかとか、そんなこと以前の段階だ。

 そんな私達の困惑を察してか、「ほら、試してみるだけでもさ」と下手に出てくる凛先輩。


「私も全力でバックアップするからさ! それに、いい経験にもなると思うし、もしかしたら自分が凄い台本書くのに向いてるってことに気付くかもしれないしさ!」

「は、はあ……」

「まあ、そこまで言うなら……書いてみよう……かな」


 ちらっとこちらを見る新。

 こうなったら仕方ない。

 まあ、正直ラーメンズの台本とか見て、憧れみたいなものを抱かなかったといえばウソになるし、せっかくの機会だ。

 心を決めて、私は「やってみます」と頷く。


「オッケー、決まりだね。じゃあ、詳しいことはメールで送った方がわかりやすいと思うから、後でまとめて送っとくね」


 如何せん台本って形式が重要な物だからね~と笑う凛先輩。


「はい、お願いします」

「頑張ってね」

「ありがとうございました」


 にこにこと手を振る先輩にぺこりと挨拶をして、私達は保健室を後にする。


「失礼しましたー」

「はいはーい」


 ドアを後ろ手で閉め終わると、私は新の方にキッと向き直る。


「……新」

「な、なんだよ」

「先輩の胸、ちらちら見てたでしょ」

「いや、待て待て。千代、それは誤解だ」

「……変態」


 わかりやすくあたふたする新を尻目に、私はむすっと頬を膨らませて、1人先に教室に向かって歩き出したのだった。

一応定期更新にできてよかったぁと心から安心してる今日この頃です。

次回更新は来週、10/19の22時です。お楽しみに…!


少しでも気に入っていただけたら評価感想、ブクマ等是非是非是非是非よろしくお願いします。モチベになりまくりますので…!


ではまた来週!

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