第11話 七夕宣言 前編
久々の更新です。未だに不定期更新続けてるってマジ…?死んだ方がいいのでは…?()
「七夕公演、ですか……」
神原先輩の宣言に、私達はただオウム返しで首を傾げてしまう。
「そ。我が演劇部の恒例行事にして、君たちの初舞台、それが七夕公演だよ」
「と言われましても……ねぇ?」
「まだ公演って何ぞやってのが、私達まだよくわかってなくて……」
音羽と顔を見合わせ、はてと神原先輩の方に向き直る。
「あー、そうか。君たちにはまだその説明もしてなかったかぁ……新くんが入部した時に色々話したついでに話した気になってたよ。ごめんごめん」
申し訳なさそうに頭を掻く神原先輩。
「さて。大会とか詳しい話は後でするとして、まずは簡単に演劇部の公演について話すね」
「お願いします」
「オーケー。さて、ちーちゃん。そもそも演劇部には、1年間で何回舞台をやる機会があると思う?」
「ええと……5回とかですか?」
よくわからなかったので、とりあえず勘でそう答えてみる。
「うーん、勘の割には惜しいねぇ。正解は新入生歓迎公演・春大会・七夕公演・文化祭・秋大会・クリスマス公演の計6回なんだよ」
あれ? 今サラっと勘だって看破された気がするんだけど……気のせい?
内心少し動揺しつつ、表に出すまいと顔中の表情筋を総動員してポーカーフェイスに努める。
「へぇ……結構あるんですね」
「ってことはその分大変そうですねぇ……」
示し合せたかのように一緒にため息をつく新と音羽に、先輩は「いやいや、実はそうでもないんだよ」と声をかける。
「その内訳を話してしまえばわかることなんだけど、まずは最初に言った“新入生歓迎公演”。これはちーちゃんと音羽ちゃんは知ってると思うけど、新学期の頭に行われる新入生歓迎会の中の十数分を貰ってやる公演なんだ」
「ああ、あのソーメンズがどうとかっていう……」
「ラーメンズ!」
念押しに「二度と間違えるなよ?!」とばかりに、新の脇腹を思いっきりつねあげる。
「痛ェ?!」
「それが私の味わった痛みだ」
「復讐感出されても……」
「2人ともいい? 話を戻すよ?」
「ああ、はい」
「つまり、新入生歓迎公演は時間にしてみれば十数分の台本しかやらないわけさ。それで、実を言うと今度の七夕公演も、会場の都合上それくらいの長さの台本しかできなかったりする」
「あ、そうなんですか?」
「で、残りの4つはそれぞれ大体1時間以上の台本をやることになるんだけど、でも文化祭公演と秋大会は同じ台本をやるの。そう考えると6回の内訳は、15分くらいの台本が2種類、1時間の台本が3種類って感じになるね」
「ああー、確かにそう言われるとそんなにヤバそうには聞こえませんね」
「でしょ?」
と、小さな声で「まあそれでも大変は大変なんだけど」と呟く神原先輩。
さっと周囲に目をやると2人とも気付いてなさそうだったので、私も聞かなかったことにして「じゃあ、今回の七夕公演ってのは結構楽な部類なんですね?」と先を促す。
「まあ、あくまで他と比較すれば、だけどね」
「随分不穏な物言いですけど……というと?」
「ほら、だって七夕公演はちーちゃんたちにとっては初舞台なわけでしょ? それが“楽な部類”かどうかは微妙な所じゃない?」
「あー……確かに」
さっきはさらっと流したが、よくよく考えれば、15分の台本を覚えなきゃいけないって割と辛いんじゃないか……?
私とて、まさか小学校のお遊戯会じゃあるまいし、1人台詞1個なんてことはないとは思っていたが……しかし、沢山の台詞を覚えられるだけのキャパが、このバカな私の頭に果たしてあるのだろうか……
見ると、新と音羽もおそらく同じ不安に達したのだろう。一様に顔が青ざめてしまっていた。
「……私、不安になってきました」
「大丈夫大丈夫、そんなに深く考えないで。悩むのは後で実際に台本が渡されたときでいいからさ」
「それ、何もよくないんですけど……」
うだうだと引きずる私達に「説明続けるね?」と言ってスマホを取り出す先輩。
「で、今回の七夕公演なんだけど、具体的には7月7日の七夕の日に、地元柴山商店街の七夕特設ステージを使って、七夕を題材にした作品を1つ上演するって公演なのね」
「わーお……」
「さっきも言ったけど、これは演劇部の毎年の恒例行事みたいなもんでね。ほら、これ、去年の写真」
そう言って見せられた先輩のスマホには、神原先輩と凛先輩とおぼしき2人が、それぞれ彦星と織姫の衣装を着て、ステージの上で軽やかに舞っている写真が表示されていた。
彦星に扮した神原先輩はそのボーイッシュさも相まって、爽やかイケメン感が溢れ出ているし、織姫役の凛先輩は持ち前の色気が存分に出ていて、上品なのにどこかセクシーさを含む独特の雰囲気を醸し出していて、何と言うかそれはもう眼福な写真だった。
「おお……凄いね……」
「ね。こんなに人来るんだ……」
ぼそっと呟いた音羽のその言葉に、私は慌てて先輩たちの立っているステージから視線をその周囲に移す。
そっか、見てほしかったのはそっちか……
何を勘違いしているんだと心の中の私をセルフ尋問しながら、彼女の言う通りのその人出の多さに思わず「わァ」と変な声が漏れてしまう。
「なんだかんだもう結構続いてるイベントだからねぇ。もはや商店街の目玉行事になりつつあるし~」
「喜びにくいこと言わないでくださいよ……」
そう言ってさらに大きなため息をつく新。
ますます頭が重くなる私達である。
後編に続きます。




