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番外編1 走れロミオとジュリエット 前編

2章に入る前に、作中さらっとしか触れられなかった体育祭編です。

どうぞお楽しみください!

 学校生活というものにおいて、イベント事がいかに重要な地位を占めているかは以前長々と語らせてもらった通りなのだが、しかし数あるイベント事の中には、私個人としてはイマイチテンションのあげ方がわからないものも存在していたりする。

 いや、正確に言えば“イベント事特有のわちゃわちゃ感”自体はどんなイベントであろうと大好きなのだ。だが、いかんせんそのイベント事の中身に興味が持てないものがある、といったところだろうか?

 そう、例えば今週末にある体育祭なんかがまさにそれだ。

 体育祭を数日後に控えた、5月末の某日。

 そもそも運動系全般が好きではない私からすれば、全員強制参加の運動会イベントが高校生になってなお存在し続けているという事実に困惑を通り越して怒り、いや、怒りすら通り越して恐怖すら覚える。けど、まあイベント事には代わりあるまいしと、なんとか自分を騙そうと努力していた、そんなある日のことである。

 新への新入部員研修もひと段落してきたことに安堵しつつ、はて今日は何をやるのだろうと、なんとなくそんなことを考えながら部室のドアをくぐった私は、そこで予想外の光景を目にすることになる。


「おはようございまー……す?」

「おお、おはよう、千代ちゃん!」

「おはよう~」

「おはようございます、神原先輩。それに、凛先輩」


 そこには、いつも真っ先に部室に来ている音羽の姿はなく、代わりに神原先輩と凛先輩が、何やら書類を睨みつけて難しい顔をしていた。


「えーっと……お2人共、難しい顔をして、どうかされたんですか?」


 聞いていいものかどうか若干内心迷う。

 とはいえ話題も他にないので意を決して聞いてみると、神原先輩がわざとらしく大きなため息をついて「よくぞ聞いてくれた」とこちらに向き直る。


「もしかして、また生徒会関係の揉め事ですか?」

「いーや? その件に関しては結構しっかり決着付けたし、当分文句は言われないと思うよ。多分、だけどね?」

「は、はあ」


 丁度先週あたり、先輩がバタバタと生徒会室に出入りしていたのを思い出す。

 しかしその予想も違ったみたいだ。

 ……もしかしてこれ、聞かない方がよかったのでは。

 後悔先に立たずとはまさにこのこと。なんだか面倒くさそうな予感を感じつつ、ここで会話を切り上げるわけにはいかないので「じゃあ、どうしたんですか?」と仕方なく話の続きを促す。


「実はね、体育祭に演劇部として出ようと思ってるんだ!」

「……はい?」


 先輩のその意味不明な発言は、間違いなくその日の私的流行語大賞受賞ものだった。


 *


 唐突な提案、というか、軽く意味不明な先輩の発言に困惑する私に「まあ待て」とストップをかける先輩方。

 とりあえず音羽を待ってから説明するからと言われ、待つこと数分。珍しく部活開始ギリギリに部室に駆けこんできた音羽を迎え、ようやく具体的な説明を聞くことができた。

 曰く、体育祭で行われる全校部活動対抗リレーに演劇部も出場しようじゃないかと、そういうことらしい。


「部活動対抗リレー、ですか」

「そうそう。まあ、リレーとは名ばかりの、部員確保のためのプロモーションの場面みたいなものなんだけどね」

「えーっと、というと?」


 首を傾げる音羽に、代わって凛先輩が説明を続ける。


「部活動対抗リレーでは、他のリレーみたいに勝敗が付いたり、白組紅組に得点が入ったりするわけじゃないの。だから、各部活ともこの機会を逃すなとばかりに、例えば水泳部は水着で走ったり、テニス部はラリーをしながら走ったりして、あわよくば部員を確保しよう、って感じの雰囲気になってるのさ」

「なるほど」


 確かに、それは競技というよりプロモーションに近いかもしれない。

 隣で「水着ねェ」と余計なことを考えているであろう音羽の脇腹に一撃をいれつつ、「それに演劇部も出るってことですか」と相槌を打つ。


「そうそう。せっかく部員も増えて、参加資格も満たせるようになったしね」

「参加資格?」

「ズバリ、部員が4名以上いること!」

「結構なゆるゆるハードルじゃないですか」


 というか、そんな基準すら満たせていなかったうちの部活って一体。

 よくもまあ部活動として存続してこれたものだ。


「さて、ここまでで何か質問はあるかな? ちなみ、異論反論抗議その他部活動対抗リレーに参加したくない等の意見は募集していないので悪しからず」

「独裁国家の選挙みたいな意見の募集の仕方ですね……」


 音羽と顔を見合わせ、アイコンタクトでならまあ特にないよねと頷きあう。


「あ……じゃあ、1つだけ」


 ふと、そう言って手を挙げる音羽。


「何かな、音羽ちゃん」

「水泳部が水着で走って、テニス部がラリーしながら走るなら、私らは何を着て、そんで何をしながら走らされるんでしょうか?」


 その質問に、神原先輩は待ってましたとばかりに笑顔を作り、数秒の間ののち、部室で高らかに宣言する。


「そりゃ決まってるでしょ! 演劇部の定番、“ロミオとジュリエット”だよ!!」と。

今回は前編、中編、後編の3部構成です。

中編へ続きます。

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