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第10話 来たれ、勉強会なる青春イベント! 後編

後編です。

 結論から言ってしまうと、全くもって大丈夫じゃなかった。

 この日から1週間、土日も含めて私は毎放課後に新の家を訪ね、時には音羽に「通い妻みたい」と冷やかされ、時に相沢さんに「新婚夫婦みたい~」と肩を叩かれながらも、私は必死に新と共にテスト勉強に励んだ。


 けれど、初日に勢い余って新に「まだやってない範囲、私が教えようか?」などと言ってしまったおかげで、1週間の前半は正直言って自分の勉強どころではなく、新に4月にやった範囲を教えることでいっぱいいっぱいになってしまった。

 冷静に考えれば彼だって4月の頭はどこかの高校に通っていたわけで、その時の範囲を何も一から十まで私が教えてあげる必要もなかったのだが……。


 サービス精神か母性本能かわからないが、その辺の何かを発揮してしまった私は彼に懇切丁寧な解説をお見舞いし、結果、私がようやっと本格的に自分のテスト勉強に入れたのは週も折り返しの木曜日になるという事態を招くことになってしまった。

 まあ、彼に教えたところだって一応今回の中間テストの範囲なのだから、私にとっても別に無駄ということはないだろうし、人に教えることで自分の確認にもなるとも言うが……


 しかし実際テスト一週間前ともなると、そんな「私にとっても有益だからw」などと考えられる余裕などあるはずもなく。

 ドタバタと残りの数日を自分の為だけに費やした私だったが(さすがの私もここまでくると、新と2人で勉強する意味なんて、ほとんどあってないようなものだなと気付き始めていた)、しかしそんな一夜漬けの劣化版みたいな勉強方法でテストがクリアできるはずもなく。


「はァ~~~、マジでクソ!!」

「ささちー、語彙がアホなJKのそれになってるよ~」


 中間テスト最終日。

 最終科目がようやく終わり、答案用紙の回収が終わるなり私はうだぁっと後ろの席にだれかかり、中指を立てかけたところを相沢さんに「やめとけ~」とやんわり止められた。


「テストお疲れ~。どうしたの、谷塚くんと一緒に頑張った成果が出せなかったとか、そんな感じ?」

「そんなめんどくさい彼女みたいな理由で凹んでないよ~。もっと純粋に、フツーにテストができなかったから凹んでるんです~」

「あらら、それはご愁傷様。でも、テスト前ささちー結構勉強してたじゃん? 案外自分で思ってるよりできてるかもよ~?」

「んー……そうだといいんだけどねぇ……」


 苦笑いを浮かべてそう答えつつ、内心ではそんな奇跡が起きるようなレベルの死にっぷりではないことを、しっかり歯形が残るレベルで噛みしめてしまっていた。

 こういうのって「できた!」と思ったらできてなかったことはあっても、何故かその逆はないんだよねぇ……


「マジクソゲー……」

「いや、この場合はクソなのはゲームじゃなくてプレイヤーの方だと思うけどね~」

「またそういう刺さることを言う! じゃあそう言う相沢さんの方はテスト、どうだったのさ!」

「ふっふっふ、悪いねささちー。今回、見事に山が当たりましてな!」


 にんまり笑う相沢さんを見て、どうにもやりきれない気持ちになる。

 まったく、この天才(ゲーマー)め。

 と、そこへ新が何やら浮かない顔を浮かべてやってくる。


「おっ、谷塚くんも何やらマズったって顔してるね~」

「まあ、ちょっとな」


 なぜだろう? そんな彼の顔を見ていると、どこか安堵を覚えてしまうのは……

 いけないいけないと邪心を祓いつつ「新も死んだ感じ?」と聞くと、生意気にも「いや」と首を振る新。


「死んではいないと思うけど、別に良くもないし、うーんって感じ」

「あ~、一番モヤるやつね~」


 そんな風に“そこそこできたトーク”で盛り上がる2人に「この裏切り者~!」と吐き捨てて、どさっと机に顔を伏せる。

 チクショー! ナンダコレ?!

 テストができなかったことも不愉快だけど、それ以上に何故だか新に負けたことが妙に悔しい!!

 勉強教えてあげてたのは私なのに、なんで新の方が私よりできちゃってるのさ?!

 いや、というかむしろなんで新に教えてた私が新に負けてんのさ?!


「はァ……だからテストは嫌いなんだよ……」

「頑張れ、テストプレイヤー!」

「凹んでないで勉強しろ」

「2人とも雑な励ましをありがとうね……」


 机の表面からうっすらと漂うシャープペンの芯の匂いを堪能しながら、私は「はァアぁ……」と過去最高レベルの大きなため息をついたのだった。

 ため息だらけの毎日だよ、まったく……


 *


「さて、気分を入れ替えて部活だー!!」


 そして、テスト明けの土曜。

 この日は中間テストの前半戦にやった科目がちょろっと返ってきただけだったので、大したダメージを受けずに済んだ私である。

 故に、稽古場で部活開始の挨拶をするだけだというのに、ご覧の通り滅茶滅茶にテンションが上がってしまっていた。


「ちーちゃん、テンション高いねぇ。昨日までは死にそうな顔してたのに」

「ホント、現金な奴だよなぁ」

「テストに大して苦戦しない2人にはわからないでしょうね、この解放感は!!」

「そんな謎の逆ギレの仕方をされても」

「なぁ?」


 顔を見合わせて肩をすくめる新と音羽。

 一方の神原先輩はというと、そんな私達のやり取りを「若いねぇ」と言いつつ、穏やかな笑顔を浮かべて眺めていた。


「若いねぇって、いや、先輩だって私達と1つしか違わないじゃないですか」

「いやー、音羽ちゃん。君はわかってないねぇ」

「わ、わかってない、ですか……?」

「君も2年生になって後輩ができればわかるよ、私の気持ちが……」

「私達が先輩に……想像つかないわ……」


 しんみりと呟く音羽。

 ……確かに、全く想像つかないなぁ。


「俺たちが2年生になった時には、先輩は3年生ですね」

「年のことを言うな~?!」


 新が言い終わるかどうかのところで、途端にパニック映画に出てきそうな形相を浮かべる神原先輩。

 一体何がそんなに先輩をアグレッシブに突き動かしているんだろうか……

 先輩になればわかると言われたけど、こうして先輩を見ていると色々と怖くなってきてしまう。


「そういえば、先輩はテストどうだったんですか」

「え? 私?」

「ええ。何気に今まで先輩の勉強面の話、聞いた事なかったなーって」

「これはなに、全教科満点だったよとか言って、後輩たちの尊敬を集めたほうがいい感じ?」

「いえ、普通に答えてくれればいいです。なんですか、その小学生みたいなウソのつき方は」

「いやいや、せっかくなら少しくらいは盛りたいじゃん? ……まあ、真面目に答えると、成績はいい方ではある、と自負はしてるよ」

「自負“は”?」


 その微妙な物言いに、はてと一同首を傾げる。


「いやー、実は1年生の時に凛ちゃんと何度かテストの点数で勝負したことがあったんだけど、彼女、恐ろしいくらいに頭良くて、全然勝てなくてさ」

「ああー……それで“自負はしてる”ですか……」

「そうそう。上には上がいるって思い知らされると、面白いなぁと思う反面、やっぱり辛いよ」

「なるほど……」


 私の場合「下には下がいる」って知って、そんで妙に安心したりしかねないから、別の意味で恐ろしい話だったりするが……まあ、あまり深く考えないようにしよう……


「さて、ちょいと雑談が長引いちゃったね。実は今日は部活を始める前に、みんなに1つ伝えるべきことがあるんだ」


 突然改まってそんなことを言いだす神原先輩。


「なんですか? この小説のアニメ化の発表とかですか?」

「いや、そんな大層な話じゃないよ」

「じゃあ、今日は実は先輩の誕生日だった、とかですか?」

「いや、そこまで個人的な話でもないね」

「昨日ウイキペディアで調べてきた豆知識を披露!とかです?」

「いや、そこまでくだらなくもないね。ってか君たち、揃いも揃ってこんな時にボケないでくれる?! 何、打ち合わせでもしたの?! 息をそろえて次から次へと!?」

「いえいえ、まっさかー」

「ねー、まさかまさか」

「あり得ないよねー?」

「反応が白々しくて逆に怪しい!!」


 ごほんと咳ばらいを1つして、「さて」と話を戻す先輩。


「簡潔に主題だけを言ってしまうけど、演劇部は(きた)る7月7日の七夕に、地元柴山商店街において記念すべき君たちの初舞台、七夕公演を行います!!」

「七夕……」

「公演……」

「ですか……」

「今度こそ君たちリアクションの練習してたでしょ?」


 思わず漫画のような台詞運びになってしまった私達だったが、しかし神原先輩の重大発表に、私達がその時浮かんできた感想は「マジか」というただそれだけだった。

 どうなる、演劇部(わたしたち)

第2章、七夕公演編へ続きます。

次回更新は…来週にはできると信じています。

2章も大半は書き終わってるんですが、校正がまだなので急ぎます。


少しでも楽しんでいただけたら評価やブックマーク、それと一言でも大丈夫ですので感想を頂けると飛ぶほど喜んで速攻で更新しますので、よろしければお願いいたします。

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