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第10話 来たれ、勉強会なる青春イベント! 前編

お久しぶりです。少々リアルがバタついてたので更新が遅れました。

第1章の最終話、第10話、お楽しみください。

 その日の夕方、自分の家に帰るよりも先に、私はお隣さんである新の家のインターフォンを鳴らしていた。


『はーい?』


 インターフォンからは明らかに新の声がしたので、カメラに向かって陽気に片手を挙げて「よっ」と笑って見せる。


『おう、千代。何か用か?』

「こんばんは~! 谷塚新さんに、可愛い幼馴染のお届け物です♪」


 脳内イメージの相沢さんの感じで、精一杯カワイコぶってそう言うと、その場に数秒間気まずい沈黙が流れる。


『……何、その反応に困るボケ』

「いいから、ここを開けて?」

『いや、何その笑顔。怖いんだけど』


 脳内でアナ雪の「ドアを開けて~♪」を流しつつ、若干引き気味の新に食らいついていく。


「怖くない怖くない! 要件は言えないけど、とりあえずここ開けてくれればいいから!」

『何その強盗か宗教勧誘の人しか言わなそうな台詞?! ってかお前マジでなんだそのテンション?! 俺の知ってる千代はそんなニコニコ笑ってないぞ?!』


 いや、それはそれで失礼じゃないですか?

 内心少しモヤついたが、気持ちを押し殺してにいっとさらに笑ってみせる。


「そういうのいいから! ホント、ちょっとした用があるだけから! だから、ね? ここ開けて?」

『何か企んでるんだなってのが露骨に伝わってくるの、マジでなんなん!? お前本当にそれでも演劇部か?!』


 やたら疑り深い新に、私の方までずっと玄関前でこんなバカみたいな芝居を続けるのが段々と恥ずかしくなってきてしまった。

 ……アナもこんな気分だったのかしら。

 そんな失礼なことを考えつつ、ご近所さんの目も気になるし、この感じだといくら待っても新はドアを開けてくれなさそうなので諦めて「ええ、おっしゃる通り実は色々と企んでまして」と、世界一情けない告白をして要件を伝える。


『……つまり、俺にケーキを渡して恩を売って、代わりに勉強を手伝ってもらおうって腹だったと?』

「そうそう、大体そんな感じ」

『「そうそう」じゃねぇよ。そういうのは黙ってやるから成立するのであって、全部ネタバラシしちゃったらその時点で企みもクソもないだろ……』

「だから、ね? ここ開けて? ほら、美味しいケーキもあるからさ」

『俺の話聞いてた?!』


 はあと新のため息をつきつつも、なんだかんだ鍵を開けてくれる優しい新。

 ガチャリと鍵が開くや否や、私は勢いよくドアを開け、「おじゃましまーす!」と元気よく玄関に押し入る。

 そこにはもれなく呆れ顔の新がぽつり。


「お前、勢いがあれば何事も解決すると思っちゃいないか?」

「えへへ、それほどでも~」

「いや、全然褒めてないからな」


 重ね重ねため息をつく新に、テンションを普通に戻して「はい、これ」と買ってきたケーキの箱を渡す。


「帰りに買ってきたの。クラスの女子の間で今話題のチョコケーキ」

「へぇ、てっきりケーキ云々は俺を釣るためのウソかなと思ってたけど、そこはマジだったのか」


 「まあ上がれよ」と言って箱を台所に持って行く新。


「あ、それ2つ入ってるうちの片方は私のだからねー?」

「わかっとるわ。この状況で両方俺のだと思うほど俺は強欲じゃねぇよ」


 そう言って新は困った様に頭を掻き、「で?」と話の先を促す。


「結局千代は、俺に勉強を手伝ってほしいんだっけ?」

「うん、そうそう」

「まだ転校してきて1か月しか経ってない俺に、か?」

「う、うん」

「1学期の最初からずっと授業を受けてたお前が、途中で転校してきて、まだやってない授業範囲も沢山ある俺に教えを乞う、と??」

「い、いや、別に教えを乞おうと思った訳じゃなくて……ほ、ほら。テスト前だし、美味しいケーキでも食べながら一緒に勉強しようと思ってさ!」


 無論、嘘である。

 (何となく)頭のいいイメージのあった新に、あわよくば、何かコツとまではいかないでも、勉強に役立つ何某(なにがし)を教えてもらおうと、完全にそのつもりでいた私である。

 どうもこんにちは。


「ほら、せっかく家も隣なんだしさ、一緒に勉強しようよ!」

「この間まで家が隣だって話する度に怒ってたくせに」

「その時はその時、今は今!」


 ……真面目な話、テスト前だということにさっき気付いたということを抜きにしても、私はテスト対策などが死ぬほど苦手な人間なので、何か手助けになる人やモノが身近にあるのなら、是非それに頼らせて頂きたいのだ。

 高校受験の時は音羽の献身的なサポート(というか、中学時代の罪滅ぼしという側面が大きかったような気もするが)のおかげで成績はなんとかなったものの、私が勉強を苦手としているという根本的な問題は解決してないわけで……。

 故に「この際、新と普通に勉強会をするのもしないよりはマシか」という結論に至る。

 どうせこのまま家に帰ったところで、何か有効な勉強をするかと言えば、断言できるが絶対にそんなことはしやしないんだし、まあそれと比べたら、多少はね?

 そう思い直して、「よし、じゃあ一緒に頑張ろう!」と強引に彼を席に着かせる。


「まあ、お前に言われんでもさっき言った通り、俺も結構今回のテストは範囲的にキツイものがあるから頑張るけどさ……」

「あ、そうだ。じゃあ私がさ、そのやってない範囲とやらを教えてあげようか?」

「うーん……若干頼りないけど、せっかくだし、頼むとしようかな」


 さてと私もリビングの席に着き、鞄から教科書類を取り出して机の上に並べる。


「お互いテスト勉強頑張ろう!!」

「お前と一括(ひとくく)りにされるのは心外だが、頑張ろう!」

「新って、何気に私のことバカにしてるよね?」

「それはお互い様だろ」


 あっけらかんとそう答える新を机の下で軽く蹴り飛ばす。


「暴力反対!」

「口答え禁止!」

「このケーキ魔め!」

「うるさいわ、このイキり転校生!」


 そんな風に小学生かと見間違うレベルのの言い合いをしつつ、私達は目の前の教材に取り掛かった。

 ……果たしてこんなスタートで大丈夫なのだろうか、私のテスト勉強。

後編へ続く。

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