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第6話 ようこそ、奇人変人演劇人のるつぼへ! 前編

めちゃくちゃ久々、見たら1か月ぶりの更新でした。

大学が忙しいとか言ってらんないですね。書かないと…

 翌月曜日。

 帰りのSHRが終わると、私はかねてからの約束通り新を連れて演劇部へと足を運ぶ。


「なあ千代。これ、どこに向かってるんだ?」

「部室棟……って言って伝わる?」

「おう、一応校内は軽く回ったからな。昇降口を左に行ったとこだろ?」

「そうそう。演劇部には部室と稽古場っていう2つの部屋があるんだけど、両方とも部室棟の2階の1番端っこにあるから、行き方は覚えといてね。放課後になる度に校内で迷子になられても困るし」


 並んで部室棟への道のりを歩きながら私がそう言うと、新は「そんな変な器用さは持ち合わせてねぇよ」と苦笑いを浮かべて答える。


「まあ、私は入部したての頃何度か迷子になったけどね」

「よくそんな恥ずかしいこと真顔で言えるな」

「先輩方も私のこと必死に探してくれたんだけど、全然見つからなくて、最終的には校内放送で呼び出しされたっけなぁ」

「恥ずかしいとかいうレベルじゃねぇな、それ。デパートで迷子になる子供以下じゃん」

「いや、冗談だよ?」

「妙にリアルで冗談に聞こえねぇよ」


 まあ、実際冗談なんですけどね。

 と、こんな風に冗談やら嘘やらが妙に上手くなるのも演劇部の特権だよ、と言いかけて、しょっぱなからそんな演劇部の闇に触れなくてもいいかと思い直して口をつぐむ。


「着いたよ。ここが稽古場で、そっちが部室……って、まあドアに書いてるから言わなくてもわかると思うけど」


 部室棟2階の1番端という、優遇されているんだか遠ざけられているんだかわからないこの場所は、それなりに日当たりもよく、放課後にはお昼寝でもしたくなるようなポカポカさが生まれるのも特徴の1つだ。

 だから私はこの場所が結構好きだったりする。

 すると新が「今更なんだが、部室と稽古場の違いって何なんだ?」と聞いてきた。


「んー、ザックリ言えば部室の方が衣装とか小道具とかも置いてあって、かつ、いつも部活の前に着替えに使ってる部屋で、稽古場の方が実際に練習をする部屋、かな?」

「なるほど……って、あれ、じゃあ俺ってもしかして」

「ああ、そうだね。新は部室には入れないね」


 今まで女子しか部員がいなかったから気にしたことがなかったけど、確かに男子の新を、下手したらそこらに下着が落ちてたりしかねないあの()部室に入れるわけにはいかないか。

 あの部屋、1回掃除したうえであの汚さだからなぁ。

 苦笑を浮かべながら部室のドアを叩くと、先に来てた音羽が顔を覗かせる。


「よっす、ちーちゃん……と、ああ、谷塚くんじゃん! 来たんだ!」

「あ、どうも、谷塚です。えっと……」

「私は東雲音羽。ちーちゃんの中学生の時からの悪友です!」

「自分で言っちゃうんだ」

「ちーちゃんって……ああ、千代の。初めまして」

「こっちは散々ちーちゃんから話聞かされてたから、全然初めましてじゃないんだけど、でも初めまして~」

「へ?」


 なんのことだとこっちを見る新の視線に気づかないふりをして、「まあ挨拶もそれくらいに」とやや強引に彼を稽古場に案内する。


「部室は……うん、ある程度片付けたらまた見せる機会もあるだろうから、まあ今のところは女子が着替える部屋兼倉庫くらいに思っておいてよ」

「お、おう」

「とりあえず稽古場(こっち)の方は16時に部活が始まるまで誰も来ないから、新はこっちで着替えてもらう感じでいい?」

「それ、さっきから気になってたんだが、演劇部なのに着替えるのか?」

「ああ、それね」


 これはよく勘違いされることなのだが、演劇部はその名前に似合わず結構ハードに身体を動かすので、実は準運動部とでも言うべき運動量を誇っているのだ。

 冷静に考えてみればそれもそうで、そもそもの発声などにも相当筋肉も体力も使うし、舞台上では常に身体を動かすのだからその練習だってバカにならないわけで。

 故に演劇部では基本的に活動時には運動着に着替えるのだ。


「へぇ、そーだったのか。全然知らなんだ」

「結構意外でしょ? みんなこの話するとそういうリアクションするのよね」


 まあ、演劇部あるあるとでも言うべきか……

 他にも例えば、演劇部員だと言うとかなりの確率で「じゃあロミオとジュリエットとかやるんだ!」という謎のリアクションを頂くというものもある。

 いや、あんな長いガチガチの台本なんてそう滅多にできるもんじゃないから!


「今日は体育着とか……持ってないよね。まあ今日はあくまで見学っていうか、軽い体験だし別にいっか。次からはなんか持ってきてね」

「おう、わかった」

「そしたら後で神原先輩から稽古場の鍵も貰って、新に持っててもらったほうが都合いいかな……うん、そうだね」


 1人でうんうんと納得して、新にとりあえずここでゆっくりしててと言って部室へと荷物を置きに戻る。


「おかえり、ちーちゃん。どう、谷塚くん」

「どうって言われても……まあ、初めて見学に来た人らしい反応してたよ」

「あはは、懐かしいねぇ」


 ひとしきり音羽と談笑しながら着替え終わると、丁度そのタイミングで神原先輩が部室に姿を現す。


「あ、おはようございます、先輩」

「おはよー、2人とも。例の見学の彼、来てる?」


 そう言いつつ早速目を輝かせる神原先輩。


「ええ、今稽古場で待ってもらってます」

「よしっ、じゃあ私は挨拶した後で着替えるから、早速部活始めちゃおう!」

「はい、わかりました」


 待望の新入部員確保のチャンスということもあってか、普段より3割増しくらいでテンション高めな神原先輩。

 これだけカッコいい人がこうしてある種無邪気ともいえる風にはしゃいでるのを見ると、なんだかこっちまで不思議な気持ちになってくる。


「よし、行こっか!」


 そんなことを何とはなしに考えながら、私は手荷物をまとめて部室を後にした。


後編に続きます。

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