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第5話 そして、彼もまた 後編

後編です。

 翌日。


「おはよう~。昨日はゴメンねぇ」

「先輩、おはようございます」


 少し遅れて部室に姿を現した神原先輩に、私は「あの」と声をかける。


「先輩は、ラーメンズのコントならどれが一番好きですか?」

「え、そっち?!」


 隣で仰天した表情を浮かべる音羽。


「谷塚くんのこと相談するんじゃないの?!」

「ああ、そっち」

「逆によくそこ間違えられたね?!」


 私達のやり取りにポカンとしている神原先輩に「すいません、間違えました」と軌道修正を試みる。


「先輩、少し相談があるんですけど」

「ああ、昨日言おうとしたやつね」


 そこで、私は新のことや、昨日の放課後の一連の流れなどをかいつまんで話す。


「つまり……その新くんって子が演劇部に興味を持ってるってこと?」

「うーん……興味を持ってるかは微妙なんですけど、でも入る気はあるみたいで」

「興味があるのは演劇部にじゃなくて、ちーちゃんにだもんね」

「音羽はちょっと黙ってて」


 えー、と不満げな音羽を抑えつつ先輩に「どうしましょう」と判断を委ねる。

 昨日家で冷静になって考えてみた結果、音羽の言う通り、結局私が渋ってるのは私の問題でしかないのだから、最終的な判断は部長である神原先輩に委ねるべきだなと結論付けていたのだ。

 とはいえ演劇部の現状を考えれば、先輩が「別にいいんじゃない?」と頷くことなど想像に難くないのだが……。

 と、案の定「いいんじゃない? 一回見学来てもらいなよ」と言って安堵の笑顔を浮かべる神原先輩。


「いや……でも」

「いいじゃない、理由が不純でも別に。見学に来たら興味持ってくれるかもだし、それで入ってくれたら儲けものじゃない」

「儲けものって……」


 まあこうなるよなぁとため息をついた私に、先輩は「ちーちゃん、その新くんに随分と好かれてるんだねぇ」と予想外の一言を投げてくる。


「す、好かれてる?」

「じゃなきゃ、そんなこと言わないでしょ。ねえ、音羽ちゃん?」

「そうですよねー」


 好かれて……るのだろうか。


「うーん……どうなんでしょうね。別に嫌われてることもないとは思いますけど……」

「お、随分な自信ですな」

「はっ倒すよ?」

「はっ倒すって……JKの言葉遣いじゃないでしょ、それ」


 でも、確かにそう言われてしまうとどうなんだろうと思ってしまう。

 私はまあ、彼のこと特別好きでも嫌いでもないが……というか、腐れ縁すぎてそんなこと考えたこともなかったし。

 新の方は……私のこと、どう思っているんだろうか。

 いや、まあまだ再会して数日しか経っていないんだからどうもこうもないだろうけど……でも、いくら幼馴染同士とはいえ、女の子と向かい合わせの部屋にまでしたのだ。少しくらいドキドキしてくれてもいいんじゃなかろうか……いや、ドキドキされても困るけど。

 と、そんな無限ループのウロボロス思考に突入しかけたところで、音羽が


「ちーちゃん? また話が脱線してるよー?」と私を思考の渦から救い上げる。

「あ……ごめんごめん」

「ちーちゃん、意外と天然だったりする?」


 そう言って笑う神原先輩。


「じゃあ、新くんのこと、お願いしていい?」

「わかりました。とりあえず月曜にでも見学に連れてきますね」

「うん、お願いね」


 まあ、色々気にはなるが、これ以上考えても仕方ないか。

 今はとりあえず部活だと気持ちを切り替えて、私はぐーっと大きく伸びをした。


 *


 その日の帰り道、最寄り駅の改札を出たところで私はばったり新に会ってしまった。

 驚きのあまり「なんでここに」と言いかけたが、よく考えなくても家が隣同士なんだからそりゃそうだ。

 むしろ朝会わなかった方がおかしいのか。


「よ、千代」

「こんな時間までどうしたの、新」


 むくれてる私に構わず、相変わらずの様子の新。


「別に、ただクラスのやつらと駄弁(ダベ)ってただけだよ」

「ああ、そう。でも、クラスに馴染めてるみたいでよかったよ」

「何、心配してくれてたのか?」

「社交辞令だよ」

「冷たいなァ」


 街灯にオレンジ色に染め上げられた夜道を、不本意ながら2人で並んで歩いて行く。


「そうそう、あの件だけど」

「ああ、演劇部の。あの後どうなった?」

「私はちょっとまだ納得いってないんだけど……とりあえず、週明けにでも見学に来てもらうことになったから、覚えといて」

「おう、了解」


 まったくこのアホはと息を吐くと、時間差で「ありがとな」と言って笑いかけてくる新。


「……別に、これくらいなら」


 その笑顔に、私は思いがけずドキッとしてしまった。

 ……まったく、無駄にカッコよく育っちゃって。


「じゃあ、また月曜に」

「うん、またね」


 だからだろうか。

 その日の別れ際の挨拶にも、私はまたどこかドキッとしてしまったのは。


「……新のくせに」

 

 小さくぼやいた私は、閉めたドアに寄りかかって1人「バカ」と呟いたのだった。

次回更新は相変わらず未定です、けど、多分1週間くらいで出すんじゃないかしらん…

少しでも面白いと思ったら評価、感想、ブックマーク等、全然気楽にふわっと一言でもでいいので、よろしくお願いします!

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