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親友とねじ




 友達と、呼べる仲。その存在は、とても大切で、時に励ましあったり、時に助け合ったり、時には喧嘩したり。それでも友達とは、お互いが、お互いのことをわかっているからこそ、仲直りできる、そんな絆の中のことだ。

 俺にだって、そう呼べる人はいる。数こそ多くはないが、その分絆は深いと感じている。

 でも、高校に入って、最初は、俺は友達を作る気はなかった。それは、仲良しごっこだ何とかとか、そういう類の、へ理屈などのしょうもない理由ではなく、ただ、自分とかかわった人間に、不幸を被ってしまうと考えていたから。まぁ、それも今では十分しょうもないとは思うけど、当初は、そう思っていた。

 だけど、そんな俺に、根気よく振り向かせようとしてくれたのが、俺の一番の親友で、クラスの人気者。滝川利津たきがわりつだった。利津は、イケメンにして運動神経もよく、頭もよくて、おまけに、超が付くほど優しい性格をしている。いわば、完璧超人だ。そんな晴れが、なぜ俺の親友になったかというと、彼曰く、俺が、入学初日から、ずっと悲しそうな、憂いているような目をしていたからがそうだ。だから、軽い目にしてあげたくなったらしい。ほんとに、優しいというか、お人よしというか。でも、俺はその行為に救われた。おかげで今では、明るい目になれたと思うし、友達も増えた。

 俺の二人目の友達が、葵衣茜あおいあかね、利津の彼女だ。黒髪ロングの、静かで、清楚な感じの美少女だ。学年でもかなりの人気があり、後に、文化祭のミスコンにも選ばれた、完璧美少女だ。そんな彼女とは、利津と仲良くなって一か月と数週間、利津はもはや学年問わず、絶大な人気を誇っていた。そんな中、クラスの親睦を含めた、課外授業が行われた。そこで、なんと利津本人から、茜に告白したのだ。それから、だんだん俺も話すようになって、二人目の友達ができたのだ。

 そして二年生になって、クラスメイトとして、親友として、今でも一緒だ。


「葉月、どうした?なんかぼーっとしてるけど」


 放課後、考え事、というか、昔のことを思い出していたから、ぼーっとしてしまっていたらしい。


「え?…あぁ、いや。ちょっと昔のことを思い出してただけ」


なんだか視線が自分に集まっている。何故だろう。特に、雪浪さんがすごい見てる。……寒い。


「そっか。まぁ、葉月はぼーっとしてても絵になるからね」


「……利津に言われてもうれしくない」


「はは。葉月はお世辞がうまい」


「謙遜もそこまで来たら嫌味だぞ」


「そうだね。でも、それ、葉月にも言えることだからね」


「…?そんなことはないと思うんだけど」


「本人は気づいてない、か」


「……?」


 なんだか率が意味不明なことを言っているが、俺にはさっぱりわからない。なんか、珍しくニヤついてるし。

 どうしたんだ?利津もクラスメイトも。それを聞いても、みんなは事情を説明してくれない。なんか、俺だけ仲間外れにされてるみたい。ちょっと寂しいな。……しょんぼり。


「そ、そんなに落ち込むなよ。な?」


「……あぁ」


「それは重症ね」


「…そうみたいだな」


「誰のせいで…」


 悲しくなってきた。俺、そんなに嫌われてた?もう、いいや。帰ろ。そんで陽菜に励ましてもらお。

 一人そんなことを思っていると、背後から突然、肩をたたかれた。


「葉月君。ちょっと、今いいかな?」


「…?いいけど。どうしたの?」


 一人のクラスメイトが話しかけてきた。名前は……、うん、わかんない。


「ちょっとついてきてほしいの」


「それって、ここでできないこと?」


 何をするんだろうと思いながらも、できるのであらば、ここでやりたかったので、訪ねてみた。すると――、


「――っ!は、葉月君は、ここでしてほしいの?」


「…?」


「それなら……、分かった。……葉月君、私と――」


「ちょっと待ったー!」


「……?どうした?利津。珍しく大声出して」


「ごほん。俺たちは教室出るから、あとは二人でごゆっくり」


「?どうしたんだ、利――。……最後まで人の話を聞け」


 なぜかいきなり大声を出したかと思うと、利津はそそくさと教室を出て行った。そして、それに呼応するように、茜やクラスメイト達が、教室から出て行き、やがで、空虚な場所となってしまった。そこにいるのは、おれと、俺を呼び止めた女の子だけ。二人きりというのは、なんだか恥ずかしいな。


「そ、そうだね」


 自分の中で思ったことが、口に出てしまっていたらしい。どれに、名の知らぬ女の子が、本当に恥ずかしそうに肯定の意を告げた。


「その、私が言おうとしてること、わかる?」


「うーん、何だろ。何か手伝ってほしいとか?でもそれだったらもっと他の人に頼むだろうし。だって俺たちってそんな話したことないし、それは君の名前知らないし。クラスメイトってことは、覚えてるけど」


「――っ‼」


 絶句の顔に、声にならない声。それは、お絵を向いて考えている葉月の目には入っていなかった。それ故、葉月を呼び止めた彼女、夏間輝なつまひかりが、教室から逃げ出してしなった理由もわからず、否、たとえ見ていたとしても、分かるはずもなく、一生クエスチョンマークを浮かべるばかりだっただろう。

 自分では、難聴ではないと言っていたが、それ以前の問題である。しかも、これは、一回なんてものじゃない。葉月は、持ち前の天然さ、いや、それはただ単に、自分のことに疎いということで、こういう場面で、一本や二本どころでは済まないほど、ねじが抜け落ちている。それ故、なんと、今まで、告白されたのが、たったの一回・・だけなのだ。ちなみに、告白される未遂は、もう数えきれない。まぁ、流石に、利津よりは少ないが。なんでも、利津は、二番でもいいから付き合って。という人に、茜と付き合ってからも告白されるらしい。

 ふいに、ドアのほうで、「あちゃー」という声が聞こえたので、振り返ってみれば、どこかで見たような光景が、またしても起こっていた。


「利津、帰ったんじゃなかったの?」


「え⁈あ、あぁ、ちょっと忘れ物して……」


「みんなも?」


「「「うん」」」


 見事にクラス全員の声は重なった。所作付きで。うんうんと、首を二回縦に振ってみせた。


――やっぱりなんか、俺だけ仲間外れみたい。


 そんなことを不覚にも考えてしまうと、またもや利津に励まされる。クラスメイト付きで。




 ……そこなんだよなぁ。




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