シスコンでは、ないんです
ほんの30分前まで、明々と世界を照らしていた夕日は、鳴りを潜め、代わりに光る月がやはり太陽よりは心もとない光で、夜を必死に照らしていた。
いつの日か、そんな景色にも目を光らせることもなくなり、一人ぽつりと帰路に立っていた。
見慣れない町。見慣れない人。見慣れない景色。
そんな先ほどまでと言っていることが矛盾していることを思いながら、見慣れた道を歩いて行く。
おぼつかない足を必死になってあげることはなく、ただ無心に歩いて行く。
歩き続けてどれほど経っただろうか。既に目の前では、荘厳な我が家が、物静かに寝息を立てていた。時刻は10時46分。我が家ではもうすでに消灯時間である。
ドアをゆっくりと開ける。家族がいないことを確認してから、自分の部屋に入る。そして、電気をつける。
「兄さん、遅いですよ。どこに行っていたんですか?」
妹がいた。
「いや、少し散歩してた」
「散歩でそんな長い時間外にいたら、風邪をひきます!またそんな薄着で。もう夏だからといっても、夜はまだまだ冷えるんでるよ。もう、…何かあったんですか?今日」
「…………」
「兄さん?……聞いてるの?」
「……陽菜ぁ~」
「に、兄さん!?……どうしたの?いきなり」
俺は、妹に飛びついた。
そして、今日あったことを、恥じらいながらも、話したのだ。
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