全然わかってない
今日も今日とて、我が最愛の妹に、相談してみる。
内容はもちろん今日の放課後のこと。
……なんだが、
「兄さん、いくら何でもそれは駄目だよ。ちゃんと相手の気持ちも汲んであげなきゃ」
何とも予想外でした。妹にまで言われてしまうとは。
「……陽菜まで言うのかよ」
「流石に鈍感すぎるよ。兄さん、その女の子が言おうとしてたこと、想像つく?」
「えっと…、なんか手伝ってほしいとか?」
「……はぁ」
「そんなに呆れた顔しないで!?」
なんか俺間違ったこと言った!?ねぇ!
……言いました。
……この鈍感主人公が。
「兄さんこんなことで相談するの何回目?もう数えきれないくらいだよ!いい加減わかろうよ。…もう」
「……すみません…?」
「ホントだよ!まったくもう。…まったくもうだよまったくもう」
なんか、阿〇々木〇火ちゃん出てるよ、我が妹よ。それ言っちゃったら、俺〇良々木〇になっちゃうよ!?
しかも陽菜そのアニメ見たことないよね!?すごいシンクロだよ。こっちがまったくもうって言っちゃいたいくらいだよ!
「あのね、これを私が説明するのは、お門違いかもしれないけど、今後の兄さんのことを考えて言うね」
「…お、おう」
「まず、その女の子もこれまで何か言おうとして、兄さんが何か言って逃げっちゃった人たちも、たぶん全員、兄さんに告白しようとしていた人達だと思うよ」
「……!?……ンなバカな。自分で言うのもあれだけど、俺、顔もいいってわけじゃないし。それに――」
「――そこから間違ってるんだよ!言っておくけど、兄さんは私が出会ってきた男の人の中で一番かっこいいと思うよ」
「それは言いすぎなんじゃないか。身内贔屓だよ」
「客観的に言ってるの!もう、兄さん自分の顔鏡で見たことないの?自分の顔がかっこいいってことがわかるまで鏡と向き合わせるよ!?」
なんか、いつになく妹が熱い。いつもはもっと優しいのに。こんなに熱弁する陽菜は初めて見た。でも、こんなに言うのものだから、ちょっとは陽菜のいうことを信じてみようと思った。
「わ、分かったって。陽菜は、これまで俺に嘘つたことないからな。信じてみるよ」
「うん!よくわかってるじゃん。私はいつのも兄さんに正直だよ。それ、忘れないでね?」
「あぁ、忘れないよ。……で、俺の顔がいいことはわかったけど、それだけだろ?」
「そんなことないよ。兄さん、結構運動神経もいいでしょ。それに頭良いし」
「まぁ、一応学年トップだからな」
……そうだったんだ。そらモテますわな。
初めて知った主人公のスペック。かなり高い。……当初はこんなに高スペックにするつもりなかったなかったんだけどね。これが主人公に対する、作者贔屓です。
「じゃ、じゃあ、これまで言い寄ってきた人ほとんど、俺に告白するため?」
「そうだと思うよ。しかも、兄さんから聞いた話だと、今までの人ほとんどクラスメイトだったでしょ。それで兄さんが名前知らないっていうもんだから、相手の人がそこまで自分のこと興味ないんだって思って、逃げだしちゃったって訳。クラスメイトじゃない人でも、また兄さんがいらないこと言って消沈させちゃったんでしょ。……ほんとにもう。兄さんは駄目女子生成機なの?」
「…す、すみません」
「それは今までの女の子に言ってあげて。そうしたら、きっといいこと起こると思うよ」
「そっか、うん分かった。できるだけそうするよ。ありがと、陽菜」
「どういたしまして」
ほんとに、妹には頭が上がらない。陽菜が、俺の妹でよかった。感謝感謝ですね。
それから、陽菜に言われたことを考えつつ、風呂に入ることにした。
「……やっぱり、そんなカッコよくないよな」
ふと目に入った風呂の鏡を見て言うのだった。
……この男、全然わかっとらん。