二月五日(水)6: 白蕗さんというすばらしい人格者
「院長先生はこちらにいらっしゃるそうなので、しばらくお待ちください」
受付の係員に言われてしばらく待っていると、白衣を着た総白髪の男性がこちらに小走りで近づいてくるのが見えた。総白髪ではあるものの、色黒で精悍な感じで、年齢が分からない。
「これはこれは、白蕗さん、本日はどういった用向きですか」
総白髪の男性は白蕗さんに丁寧に挨拶をした。
「ごきげんよう、院長先生。本日こちらに入院した友人に面会させていただきたく、伺った次第です」
「そうですか。ではすぐに案内いたしますね」
院長先生と呼ばれた総白髪の男性は、係員からタブレット端末を受け取ると、自ら情報を入力した。係員が面会謝絶であることを伝えるも、院長先生が「私が同伴するんだから大丈夫」と言っているのが聞こえる。どうやら院長権限とかいうものが発動しているようだ。
その間に、俺は白蕗さんに小声で聞いてみた。
「白蕗さんは、この病院ではどういう立場なの?」
「ただの個人出資者です」
白蕗さんにしては、びっくりするほど端的な答えが返ってきた。
「いえいえ、そんなことはありません」
否定したのは院長先生だった。
「白蕗さんが開発した新薬によって救われた患者、これから救われる患者は数え切れないですし、白蕗さんはさらに、その新薬によって得られた利益を当院など多くの医療機関に惜しみなく出資いただいているのですよ。高校、大学を卒業した後は、ぜひ当院に招聘いたしたいところですが、白蕗さんはそのような枠に収まる方ではないでしょう。御学友のみなさんも、白蕗さんというすばらしい人格者に巡り合うことができたことをさぞかし光栄に思っていらっしゃるでしょうな。はっはっは」
うわ、白蕗さんに負けないくらい、めっちゃ喋る人だったよ。
それはそうと、白蕗さんが人格者ですって?
白蕗さんを見る。そこには、耳まで真っ赤になっている白蕗さんがいた。
このものがたりはフィクションです。
新薬の開発がそんなに早くできるわけもないですが、フィクションということで。




