白蕗空さん、日向茜さん、雲川潤さん、そして俺の四人は、宮田の入院している病院にタクシーで向かった。宮田が入院している病院がどこなのかは、白蕗さんが懇意にしている先生が快く教えてくださった。
『この件に関わった教師のみなさんは、本件で得られる利益の14パーセントでこの件に関して不問にしてくださると約束を』
いやいや、思い出すな、それを思い出すな俺。
宮田が入院しているのは、驚くほど立派な病院だった。もしかして、けっこう大事なのだろうか。
大きな病院なので、受付がどこにあるのかをまずは探さないといけないと思ったが、白蕗さんが迷わず歩いていくのでついて行ったところ、受付に着いた。風の息づかいは、病院の受付の場所も分かるのだろうか。
受付で宮田が入院している病室を聞いたところ、係員の返答は実にあっさりとした拒絶だった。
「宮田打悪さんですね。現在は面会謝絶で、家族以外の面会はできません」
これは困ったな。面会さえさせてもらえれば白蕗さんの能力で回復もできるだろうが、面会させてもらえないならどうすればいいだろうか。
白蕗さんが前に進み出て、受付の係員に言った。
「私、白蕗空と申しますが、院長先生はいらっしゃいますでしょうか」
係員は不機嫌そうに眉根を寄せて言った。
「アポはお取りじゃないですよね。院長先生が、どこの誰とも知れない高校生に、アポなしで会うと思っているんですか?」
まあ、そりゃそうだよな。
しかし白蕗さんは、同じ台詞を、噛み砕くようにもう一度ゆっくりと言った。
「私、白蕗空と申しますが、院長先生はいらっしゃいますでしょうか」
係員がさらに不機嫌そうになる。
「だから、どこの誰とも知れない高校生に」
そこまで言って、係員は静止した。目だけがキョロキョロと上下左右に彷徨っている。
「白蕗空さん、ですね。えっと、少々お待ちを。えっと、院長先生ですね」
係員はしどろもどろになりつつ、内線電話で誰かに話をした。
えっと、白蕗さんの能力には、他人を操る力なんてないよね。
俺は再び、思い出してはいけないことを思い出していた。
『このシステムを利用してとある製薬会社の新薬研究のための人工知能プログラムを開発しまして、表向きは文部科学省から表彰されるという形で着地したのですが、この件に関わった教師のみなさんは、本件で得られる利益の14パーセントでこの件に関して不問にしてくださると約束を』
いやいや、思い出すな、それを思い出すな俺。
おそらくだが、いや、理由はまったく分からないのだが、白蕗さんはどうやらこの病院には顔が利くようだ。理由はまったく分からない。