二日連続で生徒がぶっ倒れたら、そりゃあ大騒動にもなるだろう。
授業中に宮田が倒れて、救急車が呼ばれて、先生が一酸化炭素や二酸化炭素の濃度を測定したりして大騒ぎとなった。
宮田は意識もなく、小刻みに痙攣を続けていたため、救急搬送されて行った。
五限目と六限目は自習となったが、そんな事件があって生徒が大人しく自習できるわけもなかった。
騒然とする教室で、俺はこのあとのことを考える。
明日の修学旅行、宮田がいなかったらどうなるんだろう。記憶を「固定」できないから、今周の出来事はすべて忘れてしまって、無駄になるのだろうか。
だとすると、月曜日からのエピソードがそのまま繰り返されて、俺は自分がポンコツだということを改めて思い知らされるのだろうか。
嫌だ、嫌すぎる、宮田、戻ってきてくれ。
ふと、日向さんと目が合った。しばらく前から俺のことを見ていたようだ。
日向さんは意味ありげにこくりと頷くと、黙って立ち上がって教室から出ていった。
『お手洗いに行ってくるから、誰かに聞かれたらそう伝えてね』
なんてことはないよな。日向さんが教室を出たあとB組の教室のほうに向かったのを確認し、しばらく間を置いてから俺も教室を出た。
教室を出ると、B組とA組の教室の先、屋上に続く階段のところに日向さんがいるのが見えた。日向さんは俺と目が合ったのを確認したあと、屋上へと向かったようだ。
えっと、二日連続で日向さんに屋上に呼び出される羽目になるとは。
そんなわけで、俺は今、学校の屋上に来ている。
「宮田くん、心配だよね」
本日も快晴で、二月にしては暖かいが、風は冷たい。時刻は14時45分。六限目の時間だが、日向さんと俺は学校の屋上にいる。
「うん、そうだね」
俺は日向さんの問いに応えつつ、宮田の体調のことなんてまるで心配していなかったことに気づいた。すまん宮田。
「小林くんは大丈夫なの?」
「うん、極度の疲労だと思うから、一晩寝て回復はできてると思う」
宮田も過労でぶっ倒れただけだと思うが、明日までに復活してくれるだろうか。いや、違うな。
「でも宮田は、体調が回復したとしても、修学旅行に参加させてもらえないかも知れないな」
日向さんは黙って考え込んでいる。宮田が不在の場合の展開を考えているんだろう。
宮田が記憶を「固定」しないと記憶を持ち越せない俺達は、次の周回も同じことを繰り返してしまうはずだ。作者は楽かも知れないが、同じ話を何度も読まされる読者は堪ったものではないだろう。
俺がよくないことを考えていたところ、屋上に一人の女生徒が現れた。
「私が不在の間に、ずいぶんと大事になっているようですね」
白蕗先生、助けてください。宮田が、宮田が!