二月四日(火)5: ものすごく疲れるね
保険の先生がカーテン内に入ってきて言った。
「どうやら救急車を呼ぶほどのことはなさそうね。低血糖か貧血といったところかしら。ちゃんと昼ご飯は食べた?」
「はい、ご飯は食べました」
「じゃあ鉄分不足かしら。育ち盛りの男の子は、体が大きくなるぶん、血液が不足しがちだから、ちゃんと鉄分も摂らなきゃ駄目よ」
「はい、気をつけます」
体内時計のリセットをする能力を連発して過労でぶっ倒れたとは言えないな。
「ところで、今は何時ですか?」
俺の質問に答えたのは宮田だった。
「さっき六限目が終わって、今はホームルームだ。俺と日向は先生に言って抜けさせてもらったけどな」
「そっか」
保険の先生は、俺の様子が問題なしと判断したようだ。
「特に問題なさそうだから、落ち着いたら帰ってもいいけど、何か異常を感じたらすぐに病院に行きなさいね」
「はい」
保険の先生が去ったあと、宮田が小声で言う。
「白蕗がいれば回復してもらえたんだけどな。東北に行っちまってるからな」
そういえばそうだった。
「無茶をするなら白蕗さんがいるときにすればよかったな」
「冗談を言えるくらいだから問題はねーみてーだな」
俺はベッドから抜け出した。二本の足で床に立つ。体は重いが立ち眩みはないようだ。
「ああ、これがそうか」
俺は日向さんを見て言った。
「素振り三千回やったくらいの疲れってのがどんなものかは分からないけど、ものすごく疲れるね」
C組の教室に戻ると、ホームルームが終わって、清掃が始まるところだった。そして、俺は掃除はいいからと帰された。
家に帰ると、もちろん学校から連絡があって、母にえらく心配されてしまった。
夕食は、いつもの倍くらい食べた。明後日の修学旅行に行けなくなるわけにはいかない。
俺が日本電波塔に行かず、召喚の門に吸い込まれて粉々にならなかったら、時間の巻き戻りはどうなるんだろうか。考えられる最悪のシナリオは、俺以外の人達が召喚の門に吸い込まれて死亡し、俺だけは助かって時間の巻き戻りが二度と起こらないということだ。
俺は何としても体調を整えて修学旅行に参加し、日本電波塔に行かなければならない。




