二月四日(火)4: 気づくのが遅すぎた
目が覚めると、ベッドに寝かされていた。
えっと、ここはどこだろう。ベッドの周りを見回すと、どうやらカーテンで仕切られているらしい。
ベッドから上体を起こすと、目眩に襲われた。すぐにまた横になる。
天井を見上げながら、記憶を掘り起こす。昼休みが終わって、授業が始まって、それからどうしたっけ。
チャイムの音が聞こえる。学校のチャイムだ。つまり、ここは学校で、どうやら俺が寝かされているのは保健室のベッドらしい。
しばらくして、ドタドタという足音と、ドアを開ける音が聞こえた。
「先生、光夫は大丈夫ですか?」
「ちょっとあなた達、もう少し静かに入ってきなさい。あと、彼ならまだ寝ているはずよ」
宮田の声と、答えているのは保険の先生だろうか。あなた達ということは、宮田だけじゃないのか。
カーテンの隙間から、宮田の顔が生えた。
「お、生きてるみたいだな」
俺はゆっくりと上体を起こす。ゆっくりなら大丈夫みたいだ。
「授業中に小林くんが急に倒れるから、びっくりしちゃった」
宮田の脇の下あたりから生えるような感じで、日向さんがカーテンの中に入ってきた。日向さんも来てくれたのか。
「えっと、何があったっけ」
俺はそう声に出したものの、やけに喉が渇いていて、カスカスの声になってしまった。
日向さんが踵を返して姿を消し、すぐにコップ一杯の水を持ってきてくれた。
落ち着いたところで、授業中のことを思い出す。
午後の授業が始まり、俺はこっそり体内時計のリセットを教室の同級生全員に試してみることにした。
俺の席は教室の左端、後ろから二番目だ。俺の後ろは宮田だが、宮田は含めなくてもいいだろう。
俺は同級生全員を意識下に置いて、口の中でつぶやいた。
「みなさんおはよう、みなさんこんにちは」
うっ、何だろう。地震でもないのに、どすんという衝撃を感じたような気がする。ちょっと高いところから飛び降りた衝撃に似たような感覚とも言える。
「みなさんおはよう、みなさんこんにちは」
どすん、どすん。何だこれ。
「みなさんおはよう、みなさんこんにちは」
やたら視界が暗くなったところで、俺はようやく気づいた。気づくのが遅すぎた。
これって、ものすごく体力を消耗しているのでは。
そして教室の景色がだんだんと傾いていき、俺は意識を失ったのだった。




