二月四日(火)2: バレないように誰かを練習台に
「おはよう、こんにちは、おはよう、こんにちは、おはよう、こんにちは」
「おい光夫、それやめろ」
宮田に制されて、俺は能力を使うのをやめた。
「日向と一緒に戻ってきたと思ったら、何てことしやがる」
宮田はそう言って、焼きそばパンを口に押し込んだ。
ここは教室で、時刻は13時を回ったところだ。俺は自分の席で弁当を広げていて、宮田は俺の前の席の椅子に後ろ向きに座って焼きそばパンを頬張っている。
見たところ、宮田の体調に異変はなさそうだ。
「なるほど、体内時計を朝と昼にリセットするのは、特に悪影響はなさそうだな」
「ふぃほほ」
宮田は何か言いかけて、口の中の焼きそばパンをコーヒー牛乳で流し込んだ。
「人を実験台にすんなよ」
「そうは言っても、無関係な人の体内時計をリセットするのもどうかと思うし、おやすみなさい」
「だから、やめろって、きついぞこれ」
「すまん。こんにちは」
端から見たら、ものすごくバカみたいな会話をしているように見えるんだろうな。
「白蕗も言ってたけど、その『おやすみなさい』ってやつは、けっこう来るものがあるな」
「そうなのか。自分で試せないから分からないんだけど」
「だからって俺を実験台に、いや、しゃーないな。能力を連発してれば、レベルアップするかも知れないしな。でもその『おやすみなさい』はやめてくれ」
「どんな感じなんだ?」
「部屋の電気を消して、布団に入って目を閉じて五分くらい経って、ああ眠るなって感じだな。耐えられない眠気じゃないけど、二度寝の誘惑に耐えてるみてーな辛さがある」
なるほど、詳細なレビューに感謝する。睡眠魔法とかいうほどの効果ではないようだが、自動車の運転手とかに試したら事故を起こしてしまうかも知れないな。気をつけよう。いや、そんなことを悪意なく無意識にやってしまうとも思えないが。
「『おはよう』と『こんにちは』はどんな感じだ?」
「おい、一応言っとくけど、光夫は今のも二回能力を使ってるからな。『おはよう』と『こんにちは』は言われた時点では特に何か変わった感じはしねーな。夜になって寝るときに時間がずれてると眠れねーみたいなのはあると思うけど」
「そうか。じゃあ、バレないように誰かを練習台にするなら、『おはよう』と『こんにちは』を連打だな」
バレないように誰かを練習台にするとか、爆炎の勇者ミッツォに知られたらエグゾースト・バーストで焼き尽くされそうだな。
俺は何となく、中二の時に書いていた小説らしきものを思い出したのだった。




