大展望台二階が騒がしくなった。どうやら次の客がエレベーターで上ってきて、荒れ果てたフロアに誰もいないことに気づいたのだろう。
白蕗さんが召喚の門の観察を終えたのか、俺達の方に歩いてきた。もちろん今は感想などを聞いている時間はない。
「それでは宮田さん、私達の記憶の固定をお願いいたします」
宮田を見ると、さっきまで落ち着いているように見えていたのに、顔面蒼白だ。やはり、あの召喚の門に粉々に砕かれる痛みが、よほど恐ろしいのだろう。
小刻みに震えながら立ち尽くす宮田の背中に、雲川さんがそっと手を触れた。宮田が徐々に落ち着きを取り戻していく。
「ああ、みんな、覚えていてくれ」
これで、日向さん、白蕗さん、雲川さん、そして俺の記憶は、この時点までは保存された。何だかゲームのセーブポイントみたいだな。
宮田はいいよな、役に立って。
一瞬そう思ったが、手すりにしがみつき、泣きそうな顔で俺を見つめていた宮田が力なく俯いたのを見て、複雑な気持ちになってしまった。
さて、あとは時間を巻き戻す儀式をしなければならない。儀式というような格式張ったものでもないが。
宮田を除く全員が召喚の門の近くに集まっている。召喚の門の正面に立つのは俺だ。やっと役に立つときが来た。
俺がこの召喚の門に入れば、俺の体は粉々に砕かれて死に、そして時間が巻き戻る。
俺にはその記憶は残っていないから、遊園地で未体験の絶叫マシーンに乗るような気分だ。
「緊張感が2、躊躇が7、そして高揚感が1ですね」
「白蕗さん、そんな分析はいらないです」
概ね躊躇っているけど、高揚感もあるのか俺。
俺はさらに少し躊躇ったあと、右手を召喚の門の光の中に差し出した。
激痛。
右手が、右腕が、ミキサーに掛けられたように粉々になっていく。
何だこれ、何だこれ、痛い。痛い。こんなに痛いとか嘘でしょ。死ぬ。死ぬ。死んでしまう。
腕を引き抜こうとするが、何か強い力で引き込まれるように、肘が、そして肩が巻き込まれていく。
死ぬ。死ぬ。痛い。痛い。頭が。ちょっとタンマ、うおおああ。
そして、俺は、俺達は――