二月六日(木)6: 役に立ってなくね?
「これは」
何かを言いかけたまま、白蕗さんは何も言わずに召喚の門の周りをぐるぐる歩いている。
あの、白蕗先生?
白蕗さんには、凡人には思いもよらぬ深いお考えがおありだろうから、ここはお任せしておこう。
日向さんはというと、興味津々といった感じで召喚の門を間近に見ている。近すぎてちょっと危うい感じだ。
と思ったら、いきなり両手を召喚の門に向かって差し出すではないか。
「ちょっ、危ない」
日向さんはむしろ俺の声にびっくりしたようだ。
「小林くん、驚かせないでよ。私だってこの中に手を突っ込んだら死んじゃうって分かってて、そんな無茶しないよ」
そう言うと、日向さんは召喚の門に向かって両手をかざした。
「炎の精霊よ温めよ、えいっ」
召喚の門には何の変化もないようだ。
そもそも召喚の門に水分は含まれているのだろうか。材質が分からないから何とも言えないが、木材だとしたら水分が全く含まれないということはないだろうし、コンクリートなんかも水分が含まれるよな。珪藻土でできたバスマットなんてのもあるし、天然石だって吸水性はあるかも知れない。あるいは金属製かも知れないが。
仮にこの召喚の門に水分が含まれていて、それが温められたとして、それで何かが起こるだろうか。実際のところ、見た目には何も起こっていないようではあるが。
とはいえ、そうか、この召喚の門に対して能力を使うということは考えてなかったな。
こほん。それではこの俺の能力、体内時計を調整する能力をお見せしようじゃありませんか。
俺は日向さんの真似をして、召喚の門に向かって両手をかざした。
そして、何も言わずに両手を下ろした。
うん、召喚の門に、体内時計なんてないよね。そうだよね。
日向さんは、無人となったカフェでホットコーヒー用のドリンクカップを拝借して、中の水を熱湯にして召喚の門にぶっかけるなどしている。結果としては召喚の門に吸い込まれただけで何も起こらなかったが、ちゃんといろいろ試しているんだ。
俺って、役に立ってなくね?




