二月六日(木)5: すでに召喚の門の中に
大展望台一階、下りエレベーター乗り場の前に来た。
その両開きのドアのようなもの、召喚の門は、何の支えもなく1メートルほど空中に浮かんでいる。
どんな材質でできているのか、よく分からない。木のようでもあり、石のようでもある。門の上には女性の胸像が設えられており、まるで来る者を歓迎するかのように両腕を広げて、門上部のアーチと一体化している。門は開いているが、その向こうは真っ白な光に包まれており、何があるのか見えない。
宮田はというと、召喚の門からずいぶん離れた位置にいる。カフェの向こうの窓際だ。まるで遊園地で帰りたくないと駄々をこねる子どものように手すりにしがみついており、決して召喚の門には近づかないという強い意志を感じさせる。
しばらくして、女子たちが大展望台二階から一階に降りてきた。どうやら多目的トイレでも難を逃れられるらしい。
「二階は台風みたいになってたけど、一階はもっとすごいことになってるね」
日向さんが目を丸くして驚いている。
「二階にも一階にも誰も残っていないみたいね」
雲川さんが油断なく辺りを見回しながら言う。さすが冷静沈着で明鏡止水のクールビューティーだ。そうか、二階も誰もいなくなっているのか。考えてもしょうがないかも知れないが、今までに多目的トイレを利用中でたまたま助かった人がいたとしたら、今回は女子たちが避難していて使えなくて残念なことになったんじゃないだろうか。申し訳ないけど今回は、いや、申し訳ない。
白蕗さんは、何かぶつぶつ言いながら、人差し指で空中に何かを書くような素振りをしている。もしかして記録とやらに何かを書き込んでいるのだろうか。
「白蕗さん?」
「はい。失礼いたしました。先程、私達以外の能力者を何人か見つけましたもので、その方達について記録を取っておりました」
な、何ですって。
「で、その方達はどちらに?」
「ちょっと話しかけて風の揺らぎを視させていただいたものの、五人ともすでに召喚の門の中にいらっしゃいます」
な、何ですって。
そりゃそうだよな。見知らぬ人を助けたりするなと俺に言った白蕗さんが、能力者とはいえ見知らぬ人を助けたりはしないよな。
それはそうと、次のお客さんがエレベーターで大展望台二階に上がってきたら、異常に気づいて騒ぎ始める。そしていずれはこの大展望台一階に降りてくるだろう。それまでに召喚の門を調べなければならない。
白蕗先生、やっちゃってください。




