二月五日(水)7: 二十七歳男性のエピソード
「それで、俺の金槌作戦は、結局どうなったのかな。失敗したんだよね」
「はい。失敗しました。宮田さんと小林さんは、召喚の門への落下を腰に結んだロープによって防いでいたのですが、小林さんに背後から男性がぶつかった衝撃でロープが切断されました。その男性に関して、本人を取り巻く風を直接視ていないので情報は少ないのですが、ぶつかった衝撃で小林さんに転写された部分を読み取りますに、二十七歳男性で、彼女と一緒に日本電波塔に出かけて、タワーを模したソフトクリームをカフェでふたつ注文したところで災難に巻き込まれたようですね。このあとはすぐ近くにある豆腐屋さんで会席料理を食べる予定になっていたようです。とても強い意志で書き込んであるところからすると、よほど楽しみだったのでしょう」
風の息づかいさん、ちょっとやめてもらえますかね。
「ロープが切れたあとはどうなったんです?」
「はい。男性が衝突してからロープが切断されるまでの間に、男性は召喚の門に向けて落下し、先に吸い込まれてしまったようです。そしてロープが切断され、続いて宮田さんが召喚の門に吸い込まれ」
「うおおお」
びっくりした。宮田が突然大声を出して弓道場から飛び出して行ってしまった。
そんなになのか。話したくないどころか、聞くのも耐えがたいほどなのか。
白蕗さんはそんな宮田を一瞥することすらなく話を続ける。
「宮田さんが吸い込まれたあと、小林さんは金槌を振り上げますが、振り下ろした先は召喚の門の中で、小林さんもそのまま召喚の門に吸い込まれてしまいました」
「つまり、ダメージを与えられるかどうかすら確認できずに終わってしまった、と」
「はい。そういうことになります」
つまり、分かったことは、二十七歳男性のエピソードだけってことか。
何の成果も得られてないじゃないか!




