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二月五日(水)2: 外乱を全て排除するもの

 (きゅう)(どう)()()()えた(くも)(かわ)さんが(しゃ)(じょう)(あらわ)れた。

 (みと)めたくはないが、(きゅう)(どう)()姿(すがた)(くも)(かわ)さんは(うつく)しい。まさにクールビューティーだ。いつもの(れん)(しゅう)では(こし)まで(とど)きそうな(ちょう)(はつ)(こう)(とう)()(だん)()にしているが、(こん)(かい)(かみ)()ろしたままである。(みや)()(くち)から「ほお」という(かん)(たん)()れているのが()こえた。

 (くも)(かわ)さんは、(ぎょう)(しゃ)(じゅん)()をしながら(しら)(ふき)さんに()く。

「それで、(なん)(しゃ)くらいすればいいのかしら?」

(いっ)(しゃ)(じゅう)(ぶん)でございます」

 (くも)(かわ)さんのほうから「ピキッ」と(おと)()こえたような()がした。

 ()()(ひら)いて(しら)(ふき)さんを(にら)みつける(くも)(かわ)さんから「たった(いっ)(しゃ)(なに)()かるのか」という(いか)りのオーラが(つた)わってくるようだ。もしかして(しら)(ふき)さんの(のう)(りょく)もこんな(かん)じに()えるのだろうか。

(ぎょう)(しゃ)()るのはいいけど、()(うし)ろには()たないように、あと(かい)()とか(もの)(おと)(ひか)えるように」

「はい。(しょう)()いたしました」

 ああ、(しら)(ふき)さんのにこやかな()(がお)も、(なに)かを(たくら)んでいるようにしか()えない。いや、もちろん(なに)かを(たくら)んでいるんだろうけども。

 (くも)(かわ)さんが(しゃ)(じょう)()ち、(ぎょう)(しゃ)(はじ)める。(あし)()みをし、(どう)(づく)りをし、()(がま)えだ。(くも)(かわ)さんの(からだ)がぼうっと(ひかり)(はっ)すると、日向(ひゅうが)さんがかすかに(いき)()()(はい)があった。これで日向(ひゅうが)さんにも、(くも)(かわ)さんに(のう)(りょく)があることが()かったはずだ。

 でも、(くも)(かわ)さん(ほん)(にん)(のう)(りょく)があることを()(かく)してもらわないことには(はなし)(すす)まないわけで、どうするんだろう、と(おも)ったその(しゅん)(かん)(しゃ)(じょう)(おお)きな(もの)(おと)(ひび)(わた)った。びっくりして(もの)(おと)のほうを()ると、(しら)(ふき)さんが(どう)()()れを(たお)して、(なか)()(ゆか)にぶちまけられていた。

 その(しら)(ふき)さんは、(くも)(かわ)さんのほうを(ぎょう)()している。(あわ)てて(くも)(かわ)さんを()ると、(いま)まさに、あらぬ(ほう)(こう)()(はな)たれているところだった。

 (くも)(かわ)さんは(てい)(ねい)(ざん)(しん)まで()ませ、(ひと)()(きゅう)おいて、わなわなと(かた)(ふる)わせたあと、()(かえ)って(れっ)()のごとく(いか)りを()にまとって(しら)(ふき)さんに()()った。

「ちょっとあなた、なんて(もの)(おと)()てているのよ」

「すばらしい」

「ちょっと、(はなし)()いているの?」

「なんてすばらしい」

 (くも)(かわ)さんと(しら)(ふき)さんの(かい)()()こえてくるが、(おれ)はその(けっ)()から()(はな)せない。

 あらぬ(ほう)(こう)(はな)たれた()は、まるでそんなことはなかったかのように、さも(とう)(ぜん)かのように、(まと)(ちゅう)(しん)(あた)っている。

 (となり)()っている日向(ひゅうが)さんの(くち)から「(うそ)でしょ」という(こと)()()れる。(しん)じられないものを()たような(ひょう)(じょう)をしているが、たぶん(おれ)(おな)じような(ひょう)(じょう)をしているのだろう。(みや)()()()(ひら)いて(かた)まっている。

「えっ」

 (くも)(かわ)さんが(おれ)(たち)(よう)()()づき、そして(まと)のほうを()て、(うご)きを()めた。


 (だれ)もが(うご)きを()めた(しゃ)(じょう)を、(つめ)たい(かぜ)()()ける。(さい)(しょ)(われ)(かえ)ったのは(くも)(かわ)さんだった。さすが(めい)(きょう)()(すい)である。

「ちょっとあなた、これはどういうことなの?」

 (くも)(かわ)さんは(ふたた)(しら)(ふき)さんに()()る。

「はい。どういうことも(なに)も、そういうことでございます」

 うん、まあ、その、(しら)(ふき)さんの(こた)えが(こた)えになっていないことがあるのは、(おれ)もそろそろ()れてきたけど、どういうことなのか(おれ)()りたい。

 (くも)(かわ)さんは()(しろ)(くろ)させながら、()()った(ゆみ)(てき)(ちゅう)した()(しら)(ふき)さんの(かお)()(せん)彷徨(さまよ)わせている。

「それではもう(いち)()(ぎょう)(しゃ)をお(ねが)いできますか。(こん)()(さき)(ほど)のようにわざと(おお)きな(おと)()すような(しつ)(れい)はいたしませんので」

「え、ええ、()かったわ」

 ああ、やっぱりさっきのはわざとだったんだ。(しら)(ふき)さんがうっかり(しっ)(ぱい)するなんてイメージがまるでないわけだが。わざと(おお)きな(おと)()したと()いて(くも)(かわ)さんが(いか)りを(ばく)(はつ)させるのではないかと(いっ)(しゅん)(おも)ったが、そんなことはなかった。

「それで、(こん)()(ぎょう)(しゃ)では、()(がま)えのあと、(となり)(まと)()かって()(はな)っていただきたいのですが」

「そんなこと、できるわけが、いえ、()かったわ、やってみるわ」

 その(けっ)()であるが、()(がま)えしたときの(まと)(てき)(ちゅう)していた。()(ぶん)()()ていたにも(かか)わらず(しん)じられない。ちょっと()()(わる)い。

 ()というものは、まっすぐに()ぶわけではない。()(きゅう)には(じゅう)(りょく)があるからだ。では(ほう)(ぶつ)(せん)(えが)いて()ぶのかというと、そうでもない。(くう)()(てい)(こう)があるからだ。バドミントンのシャトルほど(きょく)(たん)ではないが、(さい)()にはストンと()ちる。

 (くも)(かわ)さんが(となり)(まと)()けて()()は、()(きゅう)(じゅう)(りょく)()かれるばかりではなく、(となり)(まと)()かって()(えが)き、そして()たり(まえ)のように(ちゅう)(しん)()()さった。()(きゅう)(じゅう)(りょく)って、()まぐれに(よこ)(ほう)(こう)にも(はたら)いたりするんだっけか?


(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)は、(かん)(たん)(もう)()げますと、()(かなら)(てき)(ちゅう)させるというものです」

 えっと、(なん)ですって?

 (くも)(かわ)さんも()(たい)()()めていないようで、(くち)をパクパクさせるばかりだ。

(きゅう)(どう)の『(あた)る』ってのは(しか)るべくして(あた)るってことだな」

 (きゅう)(どう)(れき)(すう)(ねん)(しょ)(しん)(しゃ)(みや)()(かい)(せつ)(とつ)(ぜん)(はじ)まった。

(きゅう)(どう)では、(ねら)って『()てる』のではなく、(しか)るべくして『(あた)る』と(おし)えていてな。(こころ)(ただ)しく、(からだ)(ただ)しく、(わざ)(ただ)しければ、()(ひつ)(ぜん)(てき)(あた)るってことらしいんだよ。(ぎゃく)()えば、(まと)(はず)すのは、(ざつ)(ねん)があったり、姿()(せい)(わる)かったり、(わざ)()(じゅく)ってことだろうな」

 えっと、これは(みや)()(かい)(しゃく)だから、とりあえず(はなし)(はん)(ぶん)()いておくにしても、(なん)となくそれっぽい(かん)じはする。

 (しら)(ふき)さんが、(みや)()(かい)(せつ)()()ぐように(はな)す。

「そして(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)は、それらの(がい)(らん)(すべ)(はい)(じょ)するものなのです」

 なるほど、するとつまり、どうやっても()(ひつ)(ぜん)(てき)(あた)るわけですね。

 いや、いやいや、いやいやいやいや、そんな()(ちゃ)()(ちゃ)(のう)(りょく)って、そりゃ()(ちゃ)()(ちゃ)すぎでしょ。

 (ざつ)(ねん)をなかったことにしたり、姿()(せい)(みだ)れをなかったことにしたり、というところまでは()(かい)できるけど、(ゆみ)(はな)(ほう)(こう)()(ちが)っているのまでなかったことにするのは、いくら(なん)でもおかしい。

「それ、とんでもない(のう)(りょく)なのでは」

「はい。(ぶつ)()(ほう)(そく)(いん)()(かん)(けい)()()するわけですから、これはもうすばらしいとしか()いようがありませんね」

 (きん)(ぎょ)のように(くち)をパクパクさせていた(くも)(かわ)さんが(われ)(かえ)る。

「ちょっと()って、(わたし)(のう)(りょく)って、(わたし)(なに)かしているとでも()うの?」

 そりゃそうだよね。()(ぶん)にこんな()()()(のう)(りょく)があって、それによって(ひゃっ)(ぱつ)(ひゃく)(ちゅう)(かい)(ちゅう)してたとは(おも)いたくないよね。

 ちょっと(おれ)(なか)()()(わる)()(ぶん)が「()()()(ちから)使(つか)って()をコントロールするなんて、とても()(きょう)だと(おも)うわ。()ずかしくないの?」とか()いそうになるが、なんだかひどい(てん)(かい)になりそうなので()(ちょう)する。

 (しら)(ふき)さんが(おれ)のほうをちらりと()て、(ちい)さな(ため)(いき)をもらした。

 あっ、もしかして(おれ)()(ちょう)できてなかったのだろうか。うっかり(ほん)(しん)(くち)()してしまって、ひどい(てん)(かい)になってしまったのだろうか。そして()(かん)()(もど)して、()(ちょう)した()になっているだけなのだろうか。

 (みや)()()ると、やれやれといった(かん)じで(よこ)(くび)()っている。やはり(おれ)(しつ)(げん)してしまったようだ。

 そもそも、(くも)(かわ)さんに()(きょう)だと()われたのは、(おれ)(にん)(しき)する()(しゅう)()のことだ。(いま)(くも)(かわ)さんも(おれ)のことを()(きょう)(もの)だと(おも)っているとは(おも)うが、(おれ)()かって()(きょう)(もの)だと()ったことはない。()めるようなことを()うのは(すじ)(ちが)いだ。


(くも)(かわ)さんには、ご()(ぶん)(のう)(りょく)について(なっ)(とく)()くまで(かく)(にん)していただきましょう」

 (しら)(ふき)さんの(こと)()により、そういうことになった。


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