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二月三日(月)2: 爆炎の勇者じゃなくて

 ()()(じゅ)(ぎょう)は、(まった)(しゅう)(ちゅう)できないまま()わった。

 これだけいろいろなことがあって、(なに)ごともなかったかのように(じゅ)(ぎょう)(しゅう)(ちゅう)などできようか。いやできまい。

 「できまい」というのは、「できる」というカ(ぎょう)(かみ)(いち)(だん)(かつ)(よう)(どう)()()(ぜん)(けい)「でき」に、(うち)(けし)(ずい)(りょう)(じょ)(どう)()「まい」が()いたもので、「できないだろう」というような()()になる。

 って、(おれ)(なに)(せつ)(めい)しているんだ。(あたま)(なか)がぐちゃぐちゃだ。()(おく)(こん)(らん)する。


 この(こう)(こう)には()()()(ちから)()った(せい)()がいる。そう(おも)っていたら、(じつ)(おれ)にも()()()(ちから)がありました。(なん)てことが、そんなすぐに()()れられるわけがない。

 しかし、(おれ)が「おはよう」って()ったら(みや)()(げん)()になった。それは()(ちが)いない。(かい)(ふく)()(ほう)だろうか。

 どうして「おはよう」で(かい)(ふく)するのか、()()()からない。もっとかっこいい(じゅ)(もん)はなかったのか。いや、(ちゅう)()(びょう)じゃないんだから、かっこいい(じゅ)(もん)なんてなくてもいいんだが。

 あるいは、(おれ)()()()(ちから)があるわけではなく、(おれ)が「おはよう」と()った(しゅん)(かん)に、(みや)()()(ぶん)(かい)(ふく)()(ほう)使(つか)ったのかも()れない。いや、しかし、(みや)()(からだ)(ひか)らなかったし、そもそも()(ぶん)(かい)(ふく)できるなら(おれ)(たの)むこともないだろう。(おれ)には()()()(ちから)があると()(かい)させて、(みや)()にメリットはあるだろうか。いやあるまい。

 (うたが)(はじ)めれば(なに)もかもが(うたが)わしい。そもそも、()()()(ちから)使(つか)うと(からだ)(ひか)るという(かく)(しょう)があるわけでもない。そこを(うたが)(はじ)めると、(からだ)がぼんやりと(ひか)っているのは(ほん)(にん)()()()(ちから)使(つか)っているわけではなく、(だれ)(ほか)(ひと)()()()(ちから)使(つか)われているという()(のう)(せい)もある。

 ()(にん)(からだ)(ひか)らせる(ちから)()った(ひと)と、()(にん)(なに)(えい)(きょう)(あた)える(ちから)()った(ひと)(べつ)(べつ)にいることまで(うたが)ったら(しゅう)(そく)しなくなる。

 ()()だ、(あたま)(なか)がぐちゃぐちゃだ。


     ☆


 ホームルームが()わり、(きょう)(しつ)(せい)(そう)()わったところで、(みや)()がいつものように(こえ)をかけてくる。

(みつ)()、アイス()って(かえ)ろうぜ」

「ん、ああ、(さむ)いからこそアイスだな」


 (こう)(しゃ)()てグラウンド(よこ)(みち)(とお)り、(きゅう)(どう)(じょう)()かう。()()いをする(まえ)(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)()()くのも(おれ)(みや)()(にっ)()だ。

 いや、ちょっと()て、そんな(にっ)()、いつから(はじ)まったんだ。

「なあ(みや)()(なん)(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)()()くようになったんだ」

()づいたか」

 (みや)()(かん)(しん)したふうに()う。やはり、(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)()()(にっ)()なんてなかった。


 グラウンドでは、(うん)(どう)()(かつ)(どう)(はじ)めている。(きゅう)(どう)()(じょ)()(せん)(とう)(はし)るのは(くも)(かわ)(じゅん)さんで、(けん)(どう)()(せん)(とう)(はし)るのは日向(ひゅうが)(あかね)さん。いつもの(こう)(けい)だ。

「お、(くも)(かわ)だ。(あい)()わらずクールビューティーだな」

「その台詞(せりふ)()わなきゃいけない()まりでもあるのかよ」

「まあな」

 (ほう)()()(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)を、というか、(くも)(かわ)さんの(れん)(しゅう)()()くようになったのはいつからだっただろうか、と(おも)ったことがある。

 そうか、(みや)()(くも)(かわ)さんが()()()(ちから)()っていることに()づいて、それで(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)()()くようにしたのだろう。それが(なん)(しゅう)(まえ)なのか、(なん)(じっ)(しゅう)(まえ)なのか、(なん)(びゃく)(しゅう)(まえ)なのかは()からないが。

 いや、いやいや、ちょっと()て。(なに)かがおかしい。それは()(くつ)()わない。

 (みや)()(おな)()(かん)()(かえ)しているとして、なぜ(おれ)までそれを(しゅう)(かん)だと(おも)()んでいるんだ。それは()(くつ)()わない。(おれ)今日(きょう)まで(おな)()(かん)()(かえ)していることを(にん)(しき)すらしていなかったじゃないか。

 いや、こんな()(じょう)()()(ごと)に、()(くつ)()うも()わないもないと()ってしまえばそれまでか。

(こん)(らん)しているみたいだから、これだけ(さき)()っておくか」

 (みや)()がやれやれというふうに(はな)(はじ)める。

(じつ)(おれ)も、(みつ)()()うところの()()()(ちから)()っているらしい」

 うん、まあ、もう(おどろ)かないけど。

「らしいってなんだよ」

「マジで()からないんだよ。ただ、(おれ)(みつ)()(はなし)()ると、(みつ)()(まえ)(しゅう)(かい)のことを(おも)()すことがある」

 えっ、そうなのか。いや、()われてみれば、(きり)(つつ)まれてはっきり()えないものが、(みや)()()われると(きゅう)にはっきり()えるような(かん)(かく)はあった。

 (ひる)(やす)みに(おく)(じょう)(はな)したときもそうだ。()()()(ちから)()った(せい)()(さん)(にん)いると()おうとして、(しら)(ふき)(そら)さん、日向(ひゅうが)(あかね)さんの()(まえ)(おも)()せたのに、(くも)(かわ)(じゅん)さんの()(まえ)()てこなかった。(みや)()が「クールビューティー」と()った(しゅん)(かん)(きり)()れたように今日(きょう)のこれからのことを(おも)()した。

「そうか、(ひる)(やす)みに(くも)(かわ)さんのことを(おも)()したのも、それか」

「ああ、しかも、(なん)(しゅう)()(かえ)すと、だんだん(おも)()しやすくなるみたいなんだぜ」

「パブロフの(いぬ)みたいだな」

(いぬ)()らんけど、こんなにはっきり(おも)()してくれたのは(こん)(かい)(はじ)めてだな」

 なるほど。それが(みや)()(ちから)なんだろうか。(おれ)がこのあと、たぶん明日(あした)明後日(あさって)(しら)(ふき)さんと(はなし)をするような()がするのだが、これも(みや)()(はなし)()ってきたらはっきりと(おも)()すということだろうか。


「そういえば(みつ)()(えい)()のとき、(しら)(ふき)(はし)ってんの()てたろ」

「ん、ああ、そっちか」

 (みや)()()われた(しゅん)(かん)、このあと(みや)()()台詞(せりふ)(おも)()す。「(なに)()づいたことはないか」と()かれたはずだ。

(しら)(ふき)()て、(なに)()づいたこととかないのかって()いたら、(みつ)()(あわ)ててごまかしたよな」

「いや、あの()(てん)で、(しら)(ふき)さんの(からだ)がぼんやりと(ひか)ってたとか()えないだろ」

「で、(かく)(きょ)(にゅう)だってことは(かく)(にん)したのか」

「バカじゃねーの」


 そんな(はなし)をしているうちに、(きゅう)(どう)(じょう)()いた。(はし)()みを()えた(きゅう)(どう)()(いん)(れん)(しゅう)(はじ)めるところだ。

 (きゅう)(どう)(じょう)には(けん)(がく)(よう)()(まど)があって、(ぎょう)(しゃ)(うし)ろから()ることができる。(おれ)(みや)()はいつもの(けん)(がく)(まど)(じん)()った。いつもの(けん)(がく)(まど)といっても、いつから(けん)(がく)しているのか()からない。そもそも、(おれ)(きゅう)(どう)(きょう)()があっただろうか。

 今日(きょう)(きゅう)(どう)()は、()(あい)(そう)(てい)して(えん)(てき)(まと)(まえ)(げい)()をするということで、(けん)(がく)している(せい)()(かず)(おお)い。(まと)(まえ)(げい)()とか(まき)(わら)(げい)()とか、(おれ)がなぜそんな(こと)()()っているのか()からない。(おれ)がなぜ(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)(ない)(よう)()(あく)しているのかも()からない。

 そうか、(みや)()(おな)()(かん)(なん)(しゅう)もして、(おれ)(いっ)(しょ)(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)()()るうちに、(おれ)にもそんな()(おく)()()けられたのか。

 って、ちょっと、なにそれ、マジで(こわ)すぎるんですけど。

 (みや)()、お(まえ)(おれ)()(おく)をどこまでいじってるんだよ。

(みつ)()、ちょっと()()け」

 (おれ)があたふたしていると、(みや)()(しか)られた。そうだ。(れん)(しゅう)(しず)かに(けん)(がく)しないとな。

 (れん)(しゅう)(はじ)まった。()(ねん)(せい)()(にん)ずつ()てくる。(くも)(かわ)さんの(くみ)()てきた。()()(ほん)()っている。(ぜん)()(あし)(ひら)き、(ゆか)()みしめるように()つ。(くも)(かわ)さんが()(がま)えすると、その(からだ)がぼんやりと(ひか)る。どうやら(だれ)()づいていないようだ。

 (くも)(かわ)さんの()()が60メートル(さき)にある(まと)(ちゅう)(しん)(あた)って、(はく)(しゅ)()()こった。

 そういえば、(くも)(かわ)さんは()(ゆう)(めい)(めい)(きょう)()(すい)とか()ってたっけ。いや、まだ()ってなかったっけ。()(おく)(こん)(らん)する。

(わたし)()(ゆう)(めい)(めい)(きょう)()(すい)なんだけど、この(こと)()(こころ)(なか)(とな)えると、(こころ)()()いて(しゅう)(ちゅう)できる、かしら』

『なるほど、それがあたなにとっての()(ほう)(こと)()なんですね』

 (くも)(かわ)さんと(みや)()(かい)()(おも)()す。やはり、(みや)()(くも)(かわ)さんが()()()(ちから)()っていることに()づいて、それを(さぐ)るために(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)()()るようになったのだろう。

 そういえば、この(かい)()のあと、どうなったんだっけ。ちょっと(おも)()せない。()(おく)(こん)(らん)する。


 (くも)(かわ)さんが()(がま)えするときに(からだ)がぼんやりと(ひか)り、(あた)りの(くう)()まで(しず)まるように()えるのは()(ちが)いないが、()()たあとに()(どう)をコントロールしているのかは()ても()からない。いや、()()()(ぜん)()(どう)()んだら、(だれ)かが()づくだろうとは(おも)うのだが。

 ()というものは、まっすぐに()ぶわけではない。()(きゅう)には(じゅう)(りょく)があるからだ。では(ほう)(ぶつ)(せん)(えが)いて()ぶのかというと、そうでもない。(くう)()(てい)(こう)があるからだ。バドミントンのシャトルほど(きょく)(たん)ではないが、(さい)()にはストンと()ちる。

 (ちから)(よわ)(もの)(かる)()()るときは、(ほう)(ぶつ)(せん)のような()(どう)になってしまう。(じゅく)(れん)(たん)(れん)(おも)()使(つか)うようになると()(どう)(ちょく)(せん)(ちか)づいていくが、(ぶつ)()(ほう)(そく)()()できるようになるわけではない。()()(きゅう)(じゅう)(りょく)()かれて(ほう)(ぶつ)(せん)(えが)き、(くう)()(てい)(こう)によって(さい)()にストンと()ちる。

 この()(どう)()()()(ちから)でコントロールしたりすれば、(なが)(ねん)(きゅう)(どう)をやっている()(もん)(せん)(せい)がおかしいと()づくだろう。しかし、()(もん)(せん)(せい)(なに)()わないところからすると、つまり、おそらくだが、()んでいる()(たい)しては(なに)もしていないと(おも)われる。


 って、(なん)(きゅう)(どう)(くわ)しいみたいなふうを(よそお)って(かい)(せつ)なんかしちゃってるんですかね、(おれ)

 あと、(せつ)(めい)をわかりやすくするために(かる)()とか(おも)()とか()ってるけど、(きゅう)(どう)では(よわ)()とか(つよ)()って()うよね。

(みつ)()、ちょっと()()け」

 また(みや)()(しか)られた。

 (けっ)(きょく)(くも)(かわ)さんが(よん)(しゃ)()(かい)(すべ)(せい)(こく)()たのを()(とど)けて、(おれ)(みや)()(きゅう)(どう)(じょう)をあとにした。


「とんでもないな」

 (おれ)(ため)(いき)とともに(かん)(そう)()らす。

 あれはたぶん、(こう)(こう)(せい)レベルを()えているとかいうものじゃないような()がする。

(くも)(かわ)も、(いま)じゃあんな(すご)(うで)だけど、()(ぜん)はそうじゃなかったんだぜ」

 (みや)()(つう)(はん)(ばん)(ぐみ)でとっておきの(じょう)(ほう)(つた)える()(かい)(しゃ)みたいな(かお)をして()う。

 ()(こう)(こう)(きゅう)(どう)()は、(きょ)(ねん)(けん)(たい)(かい)で、(くも)(かわ)さんの(しゅう)(ちゅう)(りょく)(みだ)れによって(はい)退(たい)してしまったという(うわさ)()いた。いつ()いたのか、(なん)(しゅう)(まえ)なのかは()からないが。

 ただ、今日(きょう)(くも)(かわ)さんは、(しゅう)(ちゅう)(りょく)()(だい)とか、それから(うで)()げてキャプテンになったとか、そんな()(げん)(もん)(だい)じゃない()がする。

()(ぜん)って、(けん)(たい)(かい)か?」

(ちが)(ちが)う、その()(ぜん)ってのとは(ちが)う」

「どういうことだよ」

(おれ)(しゅう)(かい)(はじ)めた(ころ)(くも)(かわ)はあんなに()()くなかった。(なん)(びゃっ)(かい)もこの(すう)(じつ)()(かえ)して、あんなに()()くなったんだ」

 へぇ。じゃあ、やっぱり(くも)(かわ)さんが()ってたとおり、(れん)(しゅう)(せい)()だったんだ。

 (げつ)(よう)()()(あい)(けい)(しき)(れん)(しゅう)()(よう)()(つう)(じょう)(れん)(しゅう)、それを(せん)(かい)(たん)(じゅん)(けい)(さん)()(ねん)(はん)(ちか)くを(れん)(しゅう)(つい)やしたことになるのか。しかも、(めい)(きょう)()(すい)という()()()(ちから)によって(こころ)(しず)め、(かん)(ぜん)(じょう)(たい)()(はな)つ。そうやって()()げられたものなのか。

 いや、ちょっと()て。(おな)()(かん)(なん)(しゅう)()ごしているのに、なぜ(じょう)(たつ)するんだ。

(くも)(かわ)さんも(まえ)(しゅう)のことを(おぼ)えているのか」

「いや、(なん)()(かい)()して(かく)(にん)したが、(くも)(かわ)(しゅう)(かい)(まえ)()(おく)()っていない」

「それでも、(まえ)(しゅう)(おな)じことが()(かえ)されるわけじゃないのか」

「ああ、(すこ)しずつどこか(ちが)っていくんだ」

 それは、(みや)()という(かん)(そく)(しゃ)がいるからなのか。

 たとえば、ある()(かい)(おな)()(かん)()(かえ)しているとしよう。しかし、その()(かい)にいる(もの)(だれ)(ひと)()としてそのことに()づいていないとしたら、()たしてその()(かい)(おな)()(かん)()(かえ)していると()えるのだろうか。そもそも(かん)(そく)(しゃ)がいなければ、()(かん)(なが)れていることすら(たし)かめることができないわけだが。

 (ぎゃく)に、その()(かい)にいる(だれ)かが(おな)()(かん)()(かえ)していると()づいたら、その()(かい)(おな)()(かん)()(かえ)しているとは()えなくなるのではないか。

 (あたま)(こん)(らん)してきた。


     ☆


 (こう)(もん)()て、(えき)()かう。

 (しら)(ふき)(そら)さん、日向(ひゅうが)(あかね)さん、(くも)(かわ)(じゅん)さんが()()()(ちから)()っているであろうことは(かく)(にん)できた。

 (しら)(ふき)さんは、(いの)りのようなもので(たい)(りょく)(かい)(ふく)できると(おも)われる。

 日向(ひゅうが)さんは、(べん)(とう)(ばこ)(あたた)めていたところからすると、(ほのお)(けい)とかそんな(かん)じだろうか。

 (くも)(かわ)さんは、(こころ)()()ける(ちから)()っており、(きゅう)(どう)はどうやら(じつ)(りょく)らしい。

 この(さん)(にん)が、この()(かん)()(かえ)しに(かか)わっているのだろうか。そうは(おも)えないが、そもそもこの(さん)(にん)(ちから)がこれだけだとは(かぎ)らないし、(おれ)()(かい)している()(のう)(せい)もある。()(かん)(けい)だと()めつけることはできない。

 それに、(おれ)(おれ)()(しん)(ちから)についても()かっていないのだから。

「なあ(みや)()(おれ)(ちから)って(なん)だろう」

 (ちょっ)(きゅう)(しょう)()()いてみる。

 (おれ)(ちから)がどんなものなのか、(みや)()(ただ)しく()(かい)しているかは()からないが、どう(おも)っているかは()っておきたい。

(おれ)(ちから)って、(かい)(ふく)()(ほう)みたいなもんなのかな」

「いや、(かい)(ふく)とはちょっと(ちが)(かん)じだな」

 (かい)(ふく)とは(ちが)うのか。(みや)()(あき)らかに(かい)(ふく)していたように()えたが。

「なんつーか、バシッと()()める(かん)じだな」

「なんだそのエナジードリンクみたいな(こう)()は」

 カフェインと(とう)(ぶん)(のう)(かっ)(せい)()させて、(げん)()になったと(かん)(ちが)いさせる(のう)(りょく)だろうか。

 もう(すこ)(くわ)しい(しょう)(じょう)()いてみたい。

(こう)()()れたら(きゅう)(ねむ)()(おそ)ってきたりしないのか」

「いや、(ねむ)()がくるっていうか、(よる)(ねむ)れなかったりする。いや、それは(げつ)(よう)(よる)だけだな。()(よう)(すい)(よう)(よる)は、ぐっすり(ねむ)れるし」

 (げつ)(よう)()(ひる)(やす)みに「おはよう」と()っているから、(よる)まで(こう)()()(ぞく)して(ねむ)れないのだろうか。

(げつ)(よう)(よる)(ねむ)れなくて、()(よう)()(あさ)(すい)(みん)()(そく)じゃないのか」

「ああ、それは(だい)(じょう)()(みつ)()(あさ)おはようって()うから」

 ああ、(たし)かに()う。()ってる。(おれ)()(つう)(みや)()(あい)(さつ)しているつもりだったが、そこで()()(なお)ししてたのか。

 (あさ)「おはよう」と()った()(あい)は、(よる)には(こう)()()れてぐっすり(ねむ)れるということだろうか。

「それより(みつ)()(はや)くコンビニ()こうぜ。(おれ)(はら)()(けい)はグーグーだぜ」

「アイスで(はら)がふくれんのかよ」

 (はら)()(けい)なんか使(つか)わなくても、スマートフォンでも()れば()(こく)くらい()かるだろ。

 いや、(はら)()(けい)か。(みや)()(はら)()(けい)(たん)(はら)()いただけだと(おも)うが、そういえば(にん)(げん)には(たい)(ない)()(けい)なんてものもあるらしいな。

 その(しゅん)(かん)(おれ)()(ぶん)(ちから)(なん)なのかを(さと)った。ちょっと()て、そういうことか。

(あさ)()()びて、(たい)(ない)()(けい)をリセットしましょう』

 テレビで(だれ)かがそんなことを()っていたのを(おも)()す。

 (おれ)(ひざ)から(くず)()ちた。すげぇ。(おれ)(ちから)は、(あさ)()きて(あさ)()()びるくらいの()(りょく)がある。すげぇ。

 ある()()すごいのかも()れないが、なんて、くだらないんだ。

 (ちゅう)()(びょう)だった(ころ)(おれ)(おし)えてあげたい。お(まえ)(しょう)(らい)(たい)(ない)()(けい)をリセットする(のう)(りょく)()るぞ、と。


「おい(みつ)()(なに)してるんだよ、お(まえ)のもうひとつの(ちから)(かく)(にん)するぞ」

 ちょっと()ちのめされつつ、コンビニに()く。(てん)(ない)(はい)り、アイスの(れい)(とう)()()かう。

 そう、やたらと()ごたえのある、()たり()きのアイスを()うわけだ。

「さて(みつ)()、このアイスの()たりを()いてくれ」

 (みや)()(こと)()は、(いま)では(じょう)(だん)ではなく(ほん)()なのだと()かる。しかし、(おれ)(ちから)(たい)(ない)()(けい)のリセットじゃないのか。いや、()()()(ちから)がひとつだけとは(かぎ)らないのか。

 (たい)(ない)()(けい)のリセットのほかに、アイスの()たりを()(のう)(りょく)があると()ったら、(ちゅう)()(びょう)だった(ころ)(おれ)(よろこ)んでくれるだろうか。

「それって、(おれ)(ちから)(かん)(けい)あるのか?」

「いや、わからん」

 こいつ。

「できるかどうかはともかく、()てるつもりで(えら)んでみてくれ」

()(ちゃ)()うなよ」

 いや、そうか、このやり()りは(ぜん)(かい)もやった()がする。あのときは、(おれ)にそんな(ちから)があると(おも)うどころか、あるわけがないと(おも)っていたが。

 (ほん)()()てるつもりで(えら)べば、()てることができるかも()れない、(みや)()はそう(かんが)えているわけか。

 (おれ)はアイスを(えら)ぶ。こういうときって、(いち)(ばん)(うえ)から()るといいのか、(いち)(ばん)(した)から()るといいのか。それとも(べつ)のところから()るといいのか。(おれ)がアイスを(えら)ぶところを、(みや)()(ぎょう)()していた。


 コンビニを()て、(おれ)()ったアイスを()べる。(はん)(ぶん)ほど()べたところで(けっ)()()かった。

 アイスの(しん)(ぼう)には、()たりを(しめ)(やき)(いん)がはっきりと(しめ)されている。

「おっ、(みつ)()()たりじゃん、すげーな」

 いや、その、(おれ)もちょっぴり(かん)(どう)していたりするわけだが、(しつ)(ぼう)のほうが(おお)きいというか。

 (たい)(ない)()(けい)のリセットと、アイスの()たりを()(のう)(りょく)

 どうしよう。こんな(のう)(りょく)で、(あく)()(しき)(たたか)えなんていう(てん)(かい)になったら。

 いや、(だい)(じょう)()(あく)()(しき)なんて(そん)(ざい)しない。いやいや、(そん)(ざい)しないことはないだろうが、(おれ)(なん)とかしなくても、(けい)(さつ)()(えい)(たい)(なん)とかしてくれる。

(みつ)()はやればできる()だと(おも)ってたけど、()たりを(えら)ぼうと(おも)えば(えら)べたんだな」

 (みや)()(こころ)(そこ)から(かん)(しん)しているようだ。()鹿()にしている(よう)()はない。それだけに、()(けい)()()ずかしくなってしまう。

(ぜん)(かい)(みつ)()は、()たりを()いてくれって()ったのにハズレを()いたから、(しょう)(じき)(なん)でだよって(おも)ったからな」

(なに)がだよ」

 そういえば、(みや)()(おこ)っていたっけ。(おれ)()()()(ちから)があるかどうか(かく)(にん)しようとしたのに、(おれ)()()()にアイスを(えら)ばずにハズレを()いたから、それで(おこ)ったんだな。

 って、()(ちゃ)()うなよ。

 そのあと(おれ)(みや)()にした(しつ)(もん)(おも)()した。

「このアイスの()たりを()けってのは、(くも)(かわ)さんと(なに)(かん)(けい)があるのか、って()いたけど、(まと)(はず)れだったんだな」

「ああ、(きゅう)(どう)()だけにな」

 くっそ。(だれ)がうまいこと()えと。

 カラカラと(わら)っていた(みや)()だが、(きゅう)(ひょう)(じょう)()()める。

「とにかく(みつ)()(おれ)(ひと)()ではこの()(かん)()(かえ)しから()()せなかった。()()んで(わる)いが、お(まえ)()(つだ)ってくれ」

「ああ、(なに)をすればいい?」

「もちろん、この()(かえ)しを()()すことだな」

「それは(もく)(てき)だろ。そのために(なに)をすればいい?」

(おれ)()かれても(こま)るが」

 ()()だこいつ。

 いや、(ちが)うか。(みや)()だって、(なに)をどうすればこの()(かん)()(かえ)しから()()せるか()からないんだ。(なに)をすればいいかなんて、()からないに()まっている。(けっ)(きょく)(おれ)()(さぐ)りで(すす)むしかないわけか。

 ()(さぐ)りなら(にん)(ずう)(おお)いほうがいいと(おも)うのだが、(しら)(ふき)(そら)さん、日向(ひゅうが)(あかね)さん、(くも)(かわ)(じゅん)さんにも(こえ)をかけたほうがいいだろうか。

(じょ)()(さん)(にん)には(こえ)をかけないのか?」

(じょ)()()()むわけにはいかんだろ」

 それもそうだな。


 (せい)()しよう、(おれ)(たち)(さい)(しゅう)(てき)(もく)(てき)は、この()(かん)()(かえ)しを()()すことだ。だから、その(げん)(いん)調(しら)べて、この()(かん)()(かえ)しを()わらせなければならない。

 (もっと)(うたが)わしいのは、(でん)()(とう)(あらわ)れたあのドアだ。ただし、あからさまに(あや)しいとはいえ、あのドアが(げん)(いん)だと()めつけてしまうのはまずい。

 ()(かん)()(かえ)しを()こしているのが(だれ)かの()()()(ちから)のせいなら、調(ちょう)()して(たい)(しょ)する。

 ()(かん)()(かえ)しに(かん)(けい)なさそうな(せい)()には、(せっ)(きょく)(てき)には(かか)わらないようにする。

 そんなところだろうか。


     ☆


 (でん)(しゃ)で20(ぷん)ほど()られ、(えき)から15(ふん)ほど(ある)き、マンション6(かい)(いえ)(かえ)()いた。

「ただいま」

「お(かえ)(みつ)()

 (ゆう)(しょく)()(たく)をしている(はは)(あい)(さつ)し、()(おん)(べん)(とう)(ばこ)(かばん)から()して、(だい)(どころ)(あら)()()く。ご(はん)(よう)()には(みず)(そそ)ぐ。

(べん)(とう)ごちそうさま」

「あら、どういたしまして」

 今日(きょう)(ひる)(やす)み、(みや)()はもう()きそばパンはただの(えい)(よう)()(きゅう)だと()っていた。(みっ)()(せん)(かい)()(かえ)しているとして、(さん)(ぜん)()()べれば()きるということか。いや、だったらほかのものを()べればいいような()もするが。「()きそばパンについて(かた)ると(はなし)(なが)くなる」と()っていたが、(かん)(じん)(はなし)()きそびれたな。

 (おれ)(しゅう)(かい)するうちに、(はは)(べん)(とう)()きてしまうのだろうか。(くら)()()ちになった。

(しゅう)(がく)(りょ)(こう)(じゅん)()はできてるの?」

「ん、だいたい()わってる」

 (しゅう)(がく)(りょ)(こう)(ひつ)(よう)なものといっても、(よっ)()(ぶん)()(ふく)(した)()()()()(がっ)(こう)ジャージ、(せん)(めん)(よう)()、タオル、(あま)()はもう(りょ)(こう)(かばん)()()んである。(せい)(ふく)(しゅう)(ごう)だし、(うん)(どう)(ぐつ)はいつも()いているやつでいい。(しゅう)(がく)(りょ)(こう)(さい)(しょ)(はん)(にち)()わってしまうわけだが、(じゅん)()をしないわけにはいかない。()(かん)()(かえ)しから()()せた()(あい)(しゅう)(がく)(りょ)(こう)(つづ)きが()っているからだ。


 ()(しつ)(はい)り、(かばん)(ほう)()して、ベッドに()(ころ)がる。そして、今日(きょう)のことを(あらた)めて(おも)()す。

 (おな)(がっ)(こう)に、(なに)()()()(ちから)()った(せい)()がいる。(すく)なくとも(さん)(にん)だ。そう(おも)っていたら、(じつ)(おれ)()(しん)()()()(ちから)()っていた。(みや)()()っていた。

 しかも、(おれ)(のう)(りょく)ときたら、(たい)(ない)()(けい)をリセットしたり、アイスの()たりを()くというものだった。

 ちらりと(べん)(きょう)(つくえ)(さい)()(だん)()()しを()る。おい、(ゆう)(しゃ)ミッツォ、お(まえ)(ばく)(えん)(ゆう)(しゃ)じゃなくて、アイスの()たり()だったぞ。

 おかしい。(おれ)はただの()(つう)(こう)(こう)(せい)なのに、()(つう)(こう)(こう)(せい)(かつ)(おく)ろうと(おも)っていたのに、どうしてこうなるんだ。

 明日(あした)(がっ)(こう)()きたくない。日向(ひゅうが)(あかね)さんに「()たよね」とか()()められたくない。

 (たの)む、(ゆう)(しゃ)ミッツォ、エグゾースト・バーストで(おれ)()()くしてくれ。


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