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二月三日(月)8: おはじき

 ()(しつ)(おく)から、(すい)(はん)()()(ごと)()えたことを()らせる(でん)()(おん)()こえた。

 そう()えば、(ぜん)(しゅう)では(くも)(かわ)さんは(きゅう)(どう)()(れん)(しゅう)()っていて、(よん)(しゃ)()(かい)とも(ちゅう)(しん)()てて、それを(ほう)(こく)しにこの()(がく)()()(しつ)()たんだっけ。それで(くも)(かわ)さんのドヤ(がお)(みや)()(そっ)(とう)して、そのタイミングでご(はん)()けたんだ。

 (ぜん)(かい)(みや)()のちょっといい(はなし)()めくくる(かん)じだったのに、この(もの)(がたり)はどうしてこうなるかなぁ。

 さておき、どうやら(くも)(かわ)さんは(のう)(りょく)(あたら)しい使(つか)(かた)をどうしても()(ろう)するつもりのようだ。()()でも()(ろう)するつもりのようだ。

 (しら)(ふき)さんが()めないのは、()めようとするだけ()()だからだろうか。

 (ぜん)(しゅう)(しゅう)(がく)(りょ)(こう)(あさ)(くも)(かわ)さんも(のう)(りょく)(あたら)しい使(つか)(かた)()つけたという(はなし)()いていたものの、(おれ)(しょう)(かん)(もん)(たい)して()(ぶん)(のう)(りょく)使(つか)うのが(いそが)しくて、(くも)(かわ)さんを()ている(ひま)がなかった。

 いや、(ちが)うな。(ぜん)(ぜん)(しゅう)(おれ)(ほか)(ひと)(のう)(りょく)(ため)しているのを()ているだけで(なに)もしなかったんだった。(おれ)(おれ)()(ぶん)のやるべきことをやらなきゃいけなかったんだ。

 そんなことを(かんが)えているうちに、(くも)(かわ)さんの(じゅん)()(ととの)ったようだ。(じゅん)()というのは、(せい)(ふく)のポケットから(ちい)さな(ふくろ)()()すということだ。(ふくろ)には「おはじき」と()かれている。(ひゃっ)(きん)()ったのだろうか。ガラス(せい)のおはじきが()まっているようだ。

 えっと、おはじきをどうするのだろうか。(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)なら、(くう)(ちゅう)にばらまいたおはじきを(すべ)()()くなんてこともできそうな()がするが、しかしそれは(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)(あたら)しい使(つか)(かた)ということになるだろうか。

「このおはじきを」

 (くも)(かわ)さんはそう()いながら、おはじきを(いっ)()()()った。(くも)(かわ)さんの()はしなやかで、(つめ)(みじか)()(そろ)えられていて(うつく)しい。

「こうやって」

 (くも)(かわ)さんはおはじきを()った(うで)(すい)(へい)()ばした。(しん)(ちょう)(たか)いだけでなく、(うで)もすらりと(なが)く、(うつく)しい。

()(はな)すと」

 (くも)(かわ)さんの()から、おはじきが(ゆか)()ちた。

 うん、(なん)工夫(そうしょく)もなく、おはじきが(ゆか)()ちたねぇ。

 (たか)いところにある(もの)は、(ひく)いところへ()ちる。(なに)()()()なことのない(けっ)()だ。

 あっ。

 (おれ)(こし)()かすほど(おどろ)いた。いや、(うそ)でしょ。

 (しら)(ふき)さんを()る。(しら)(ふき)さんは(もと)(もと)(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)(あたら)しい使(つか)(かた)()っていたようだから、(とく)(おどろ)いてはいないな。

 日向(ひゅうが)さんも(とく)(おどろ)いてはいないようだ。(にっ)(ぽん)(でん)()(とう)()(もく)(てき)トイレですでに()せてもらったか、あるいは(しょう)(かん)(もん)(たい)して(のう)(りょく)使(つか)ってみたときに()たのかも()れない。

 (みや)()(まゆ)()せて(しん)(みょう)(ひょう)(じょう)(ゆか)()ちたおはじきを()ている。えっと、(くも)(かわ)さんはまだ(のう)(りょく)使(つか)っていないから、おはじきをそんなに(にら)んでもしょうがないと(おも)うぞ。つまり、(みや)()もこれから()せられることになるであろう(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)(あたら)しい使(つか)(かた)には()づいてないのだろう。

「それじゃ、(つぎ)(のう)(りょく)使(つか)うわよ」

 (くも)(かわ)さんはそう()って、(ゆか)からおはじきを(ひろ)()げた。そして(さき)(ほど)(おな)じように(うで)(すい)(へい)()ばす。(くも)(かわ)さんの(からだ)がぼんやりと(ひか)った。(しゃ)(ほう)(はっ)(せつ)をしなくても(のう)(りょく)使(つか)えるのか。いや、(あたま)(なか)(しゃ)(ほう)(はっ)(せつ)(じっ)(こう)しているのか。どれだけのイメージトレーニングを(かさ)ねてきたんだよ。

 いや、()(のが)してはいけない。(くも)(かわ)さんの()(はな)れたおはじきは、(ゆか)()ちる(まえ)姿(すがた)()した。

()てっ」

 (おれ)()()に、(だれ)かに(ひたい)をデコピンされたような(かる)(いた)みを(かん)じていた。デコピンというのは(ひたい)(なか)(ゆび)(つよ)(はじ)(わざ)のことだから、デコピンという()(てん)(ひたい)ではあるのだが。

 (はん)(しゃ)(てき)(ひたい)()をやると、(おれ)(ひたい)にはおはじきが()()いていた。

 うわっ、やっぱりか。

 おはじきから()(はな)せば、おはじきは()ちる。それが()たり(まえ)の『(けっ)()』だ。

 (おれ)は、(ぜん)(ぜん)(しゅう)(きゅう)(どう)(じょう)(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)(かく)(にん)したときの、(しら)(ふき)さんとの(かい)()(おも)()す。

(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)は、(かん)(たん)(もう)()げますと、()(かなら)(てき)(ちゅう)させるというものです』

『それ、とんでもない(のう)(りょく)なのでは』

『はい。(ぶつ)()(ほう)(そく)(いん)()(かん)(けい)()()するわけですから、これはもうすばらしいとしか()いようがありませんね』

 そうだ。(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)は、(げん)(いん)(けっ)()(かん)(けい)()()するものだ。つまり、()(はな)すという『(げん)(いん)』に(たい)して、()たり(まえ)()こるはずの()ちるという『(けっ)()』を()()したのだ。

「それ、とんでもない(のう)(りょく)なのでは」

 (おれ)はそれだけの(こと)()(はっ)するのがやっとだった。

(くも)(かわ)さんの(のう)(りょく)って、()(かなら)()てられる(のう)(りょく)だよね。おはじきを(かなら)()てれらるのと、どう(ちが)うのかな」

 日向(ひゅうが)さんが()(もん)(くち)にする。(たし)かに、(のう)(りょく)使(つか)(かた)としては、(いま)までと(おな)使(つか)(かた)をしているようではある。しかし、この使(つか)(かた)は、(まと)(ねら)っていようがいまいが(かん)(けい)なく、(にん)()の『(けっ)()』を(きょう)(せい)するものだ。

(くも)(かわ)さん、(いま)のはおはじきが(ゆか)()ちるという『(けっ)()』を、おはじきが(おれ)(ひたい)()()くという『(けっ)()』に()えたみたいだけど、たとえばその、ものすごい(そく)()でどこかにぶつかるという『(けっ)()』にすることもできるの?」

「ええ。さっきはおはじきが()ちる(そく)()はそのまま、()ちる(さき)をあなたの(ひたい)にしたけど、イメージすれば(おん)(そく)でぶつかる『(けっ)()』にもできるわ」

 えっと、それは、(じゅう)()たれるよりは(いた)くないだろうか。できれば(おれ)(ひたい)()(がい)にお(ねが)いしたいのだけれども。

「でも、そんなに(はげ)しく『(けっ)()』を()えると、()(しき)()ぶくらい(つか)れるのよ。たぶん、(みや)()くんやあなたの(のう)(りょく)()(じゅう)使()(よう)(おな)じような()(けん)(せい)があるということね」

 そっか。(すこ)(あん)(しん)した。(くも)(かわ)さんは(おこ)らせないようにしよう。

 それにしても、(くも)(かわ)さんのとんでもない(のう)(りょく)()()たりにしたのに、(みや)()大人(おとな)しいな。「すごいです、とてもすごいです」とか(おお)(さわ)ぎしそうなものだが。

 (おれ)()()くしている(みや)()(かお)(のぞ)()んだ。

 こっ、こいつ、()ったまま()(ぜつ)してやがる!


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