*魔族が棲む無人島の小屋 OE
彼女の名前は『ケイルデム』である。
彼女もまた大魔王イザベリュータ付きのメイドであり、Aクラスの爵位を持つ上位魔族であり、こう見えて結構強い。 そう、彼女もまた魔族である。 当然、彼女も自由に空を飛べるけど、最近ではバイクにハマっていて、ついこの間も、大型二輪の運転免許を取得している。 さらに美人だ。
「あ~ららぁ~、また人間がこの島にやって来ましたかぁ~」
「エクリシアか」
ケイルデムの隣にエクリシアがいつの間にか立っていた。
「大魔王様は……?」
「はい、岩塔の頂上にお戻りです」
「そうか」
「アレはどうなさるおつもりですか? ケイルデム」
「………」
「しばらく様子を見ましょうか」
「「………」」
エクリシアとケイルデムの後ろから声がして、二人が後ろを振り向くと、またメイド服を着た女性が立っていた。
「「バーチェス」」
彼女の名前は『バーチェス』である。
その容姿は腰まで伸びた銀色のロングヘアーにピンク色の瞳に紫色の口紅、褐色の肌に服の上からでもわかる程の大きな胸、紫色のロングスカートのメイド服に白いエプロンを着ている。 彼女もまた大魔王イザベリュータ付きのメイドであり、Aクラスの爵位を持つ上位魔族であり、やっぱり結構強い。 それに空を自由に飛べて魔法も得意である。 あと耳はとがっていないメガネをかけた美人。
「もしかして、彼らは願いを叶えに来た者たちではないのか? バーチェス」
「いやいや、アレは単なる肝試しですよ。 バーチェス」
「いずれにしても、あの小屋の所まで来たら、いつも通りに対応すればいいわ」
「は~い、了解で~す」「ええ、わかったわ」
そう言って話が終わると三人が、その高台の上から姿を消した。
時間は夜。
男女四人組が懐中電灯を持って森の奥の方まで歩いていく。
「う~ん、やっぱり何か出そうな雰囲気よねぇ~?」
「ええ、そうね。 オバケとか出そうな雰囲気よねぇ~?」
「幽霊もいいけど、魔族の方がいいよな」
「俺はどっちでもいいけど」
彼らはなおも森の中へ歩いていき、もう半分道に迷い始めていた。 周りが全て木だけであり、マトモな道など無いので、今何処にいるのか、ぜんぜん解らない。
そのまま男女四人組が歩き続ける。 そもそも彼らは一体何処へ行こうとしているのか、何処まで向かうとしているのか、肝心の彼らでさえ、あまりよく解っていない。 つまりアテもなく、ただまっすぐ歩いているだけ。 こんな樹海並みの森をこんな夜の時間まで、一体何を考えているのか……彼らは。
―――どうするつもりだ?
「ヤベェよ、道に迷ったよ」
「少し中に入りすぎたか?」
「えっ、ウソでしょ? しっかりしてよ」
「うぇ~~ん、助けてぇ~~」
などと言いながら、なおもまっすぐ歩いていくうちに、彼らの目の前に窓の無い小屋が見えてきた。
「おい皆、こんな所に小屋があるぞ?」
「ちょっと待て、ここ無人島だよな? なんで小屋があるんだ?」
「ちょっとウソでしょ? この島に誰かいるの?」
「もしくは昔、誰かがこの島にいたか、だよね?」
「そんなことより、とりあえずこの小屋で一休みしようぜ?」
「ああ、そうだな。 なんであるのか知らないけど、せっかくあるんだから、使わせてもらおうぜ?」
「賛成。 あたしもう疲れちゃったわ」
「あ、あたしも賛成」
「よーし、決まりだな」
そう言うと男女四人組が、その窓の無い小屋の扉に近づき、静かに慎重に扉を開けた。
今回登場した『ケイルデム』とは天使の階級では、智天使のことを指し、また『バーチェス』とは天使の階級では、力天使のことを指している。




