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糸井久信(イトリン)  ~絶望老人が異世界転生をしたら、外伝~  作者: 賭博士郎C賢厳
*イトリンの章
19/64

*何故、彼らは「ほそぼそ」としているのか? 19

  ●【No.019】●





 この王宮の正面の大きな門は閉じたままである。



 だけど、その大きな門の右側に小さな扉があって、そこからヴァグドーさんや勇者アドーレさんたちが、次々と王宮の中に入っていく。

 また門番が小さな扉を()けてくれるものの、実際には、門番はあくまで門も守る衛兵なので、そこで王宮内では暗殺者の女性が、王様の居る「玉座の間」まで案内する。


 最後の俺も、その小さな扉から王宮内に入ると、外側から小さな扉は閉じられた。



 まずは広いロビー的な空間と、中央と左右に分かれた2階へ上がる三つの階段があった。 またロビー的な空間の左右端には、何かの扉が、それぞれひとつずつあった。


「皆さん、こちらです」


 そう言うと暗殺者の女性は、あえて階段の方には行かずに、左右端にある扉のうちの左端の扉の方に向かっていった。


 つまり、あの三つある階段には登らないようだ。


 その扉を()けると、狭く細い通路がある。 壁には松明(たいまつ)の明かりがあるので、通路自体はそれほど暗くない。





 案内役の暗殺者の女性を先頭に、ヴァグドーさんや勇者アドーレさんや大魔女シャニルさんたちが続いていき、最後の方で俺も歩いて通路を進んでいく。

 その途中で通路の角を曲がったり、またまっすぐ歩いたりしてるけど、一向に階段を登ったりしないので、まだ一階にいると思われる。


 これは明らかに「玉座の間」に行ってる様子ではないと思われる。


 だけど、ヴァグドーさんや勇者アドーレさんたちは、特に何も言ってこない。





 やがて通路の奥の方、突き当たりにうっすらだけど、扉が見えてきた。


「皆さん、こちらです」


 そう言うと暗殺者の女性が、その扉を()けて中に入ると、壁に松明(たいまつ)の明かりはあるものの、その部屋自体は薄暗くあまり広くない普通の部屋に、兵士が部屋の四隅に一人ずついて、部屋の中央には、二人いて、左側の人は五十代の黄金の王冠をかぶり、真紅のマントと黄色を基調とした中世ヨーロッパ風の貴族の服を着た、いかにも王様っぽい男性が立っていて、右側の人が二十代の白銀のティアラをかぶり、蒼色のマントと白色を基調とした中世ヨーロッパ風のドレスを着た、もしかして姫様かな、って感じの女性が立っていた。



 俺が姫様の顔をよく見ると、全身に衝撃が走った!


 腰まで伸びた紫色の綺麗な髪。

 美しくも妖しい深紅の瞳。

 小さく可愛い薄いピンク色の唇。

 ドレスの上からでもわかるほど、とても大きく美しい胸。

 綺麗に整った小さなお顔。

 スタイル抜群、美しいプロポーション、清楚で優美な顔立ち。

 あぁ、全てが完璧(パーフェクト)だ……っ!!


 思わず俺は息を飲んだ。

 これこそ、絶世の美女だっ!

 お、俺は彼女に一目惚れした!


 俺が絶句してると、姫様が優しく微笑(ほほえ)んでくれた!





 俺の隣では、ヴァグドーさんと王様が、なにやら親しく話し合っていた。


「おお、来てくれたか。 ヴァグドー殿」

「大変な事になったのう。 ナギアノ王よ」

「ふむ、早くなんとかしてくれ。 多少大事(おおごと)になっても構わんから、さっさと()()()()ばしてくれ!」

「ふむ、判っておる。 さっさと()()を瞬殺して、必ず「玉座の間」を取り返してみせるぞい!」

「おお、ヴァグドー殿! 頼みましたぞ!」

「おう、任せろ! ナギアノ王よ」


 まだまだヴァグドーさんと王様の親しい話し合いは続いていた。



 あとで知ったことなんだが、なんと「玉座の間」が大魔王イザベリュータの手下の幹部の魔族に占拠されていた。

 それで王様や姫様が、こんな狭く薄暗い部屋で「ほそぼそ」としていたのだ。



  ●【No.019】●



なんということか、王宮の「玉座の間」が魔族に奪われた?

ということは、魔族が人間の王国の王宮の中に入ってきたのか?

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