*何故、彼らは「ほそぼそ」としているのか? 19
●【No.019】●
この王宮の正面の大きな門は閉じたままである。
だけど、その大きな門の右側に小さな扉があって、そこからヴァグドーさんや勇者アドーレさんたちが、次々と王宮の中に入っていく。
また門番が小さな扉を開けてくれるものの、実際には、門番はあくまで門も守る衛兵なので、そこで王宮内では暗殺者の女性が、王様の居る「玉座の間」まで案内する。
最後の俺も、その小さな扉から王宮内に入ると、外側から小さな扉は閉じられた。
まずは広いロビー的な空間と、中央と左右に分かれた2階へ上がる三つの階段があった。 またロビー的な空間の左右端には、何かの扉が、それぞれひとつずつあった。
「皆さん、こちらです」
そう言うと暗殺者の女性は、あえて階段の方には行かずに、左右端にある扉のうちの左端の扉の方に向かっていった。
つまり、あの三つある階段には登らないようだ。
その扉を開けると、狭く細い通路がある。 壁には松明の明かりがあるので、通路自体はそれほど暗くない。
案内役の暗殺者の女性を先頭に、ヴァグドーさんや勇者アドーレさんや大魔女シャニルさんたちが続いていき、最後の方で俺も歩いて通路を進んでいく。
その途中で通路の角を曲がったり、またまっすぐ歩いたりしてるけど、一向に階段を登ったりしないので、まだ一階にいると思われる。
これは明らかに「玉座の間」に行ってる様子ではないと思われる。
だけど、ヴァグドーさんや勇者アドーレさんたちは、特に何も言ってこない。
やがて通路の奥の方、突き当たりにうっすらだけど、扉が見えてきた。
「皆さん、こちらです」
そう言うと暗殺者の女性が、その扉を開けて中に入ると、壁に松明の明かりはあるものの、その部屋自体は薄暗くあまり広くない普通の部屋に、兵士が部屋の四隅に一人ずついて、部屋の中央には、二人いて、左側の人は五十代の黄金の王冠をかぶり、真紅のマントと黄色を基調とした中世ヨーロッパ風の貴族の服を着た、いかにも王様っぽい男性が立っていて、右側の人が二十代の白銀のティアラをかぶり、蒼色のマントと白色を基調とした中世ヨーロッパ風のドレスを着た、もしかして姫様かな、って感じの女性が立っていた。
俺が姫様の顔をよく見ると、全身に衝撃が走った!
腰まで伸びた紫色の綺麗な髪。
美しくも妖しい深紅の瞳。
小さく可愛い薄いピンク色の唇。
ドレスの上からでもわかるほど、とても大きく美しい胸。
綺麗に整った小さなお顔。
スタイル抜群、美しいプロポーション、清楚で優美な顔立ち。
あぁ、全てが完璧だ……っ!!
思わず俺は息を飲んだ。
これこそ、絶世の美女だっ!
お、俺は彼女に一目惚れした!
俺が絶句してると、姫様が優しく微笑んでくれた!
俺の隣では、ヴァグドーさんと王様が、なにやら親しく話し合っていた。
「おお、来てくれたか。 ヴァグドー殿」
「大変な事になったのう。 ナギアノ王よ」
「ふむ、早くなんとかしてくれ。 多少大事になっても構わんから、さっさと奴らを消し飛ばしてくれ!」
「ふむ、判っておる。 さっさと奴らを瞬殺して、必ず「玉座の間」を取り返してみせるぞい!」
「おお、ヴァグドー殿! 頼みましたぞ!」
「おう、任せろ! ナギアノ王よ」
まだまだヴァグドーさんと王様の親しい話し合いは続いていた。
あとで知ったことなんだが、なんと「玉座の間」が大魔王イザベリュータの手下の幹部の魔族に占拠されていた。
それで王様や姫様が、こんな狭く薄暗い部屋で「ほそぼそ」としていたのだ。
●【No.019】●
なんということか、王宮の「玉座の間」が魔族に奪われた?
ということは、魔族が人間の王国の王宮の中に入ってきたのか?




