*思いを馳せる者へ 18
●【No.018】●
王族専用の大型銀製に白馬の馬車が二台、俺やヴァグドーたち一行を乗せて、もの凄い速度でナギアノ王国の中央部にある王都・王宮に向かって走り続けていた。
こんな馬車でも不思議な仕組みになっており、走る馬車の中にいる限り、モンスターに襲われることはない。
その白馬自体も普通の馬ではなく、何かの力が備わってる白馬のようであり、異常に速く走っている。
今回はヴァグドーさんも馬車の中に入って、ゆったり座って休んでいる。
やがて、二台の馬車があっという間に、王国内の中央部に入っていった。
その中央部にある大きな街には、貴族や王族が多く暮らしている。
現在は馬車専用道路を走っている為に、人はほとんどいないけど、大通りや歩道などには、貴族や王族たちがいて、楽しく賑わっている。
この馬車専用道路はまっすぐ走れば、そのまま王都まですんなり入れるようになっており、俺やヴァグドーたち一行を乗せた、二台の馬車もこのまま王都に入る為に走り続けている。
そして、俺やヴァグドーたち一行を乗せた二台の馬車が、ようやくナギアノ王国の中央部にある王都の中に入ってきた。
王都の中を走る二台の馬車。 これが王族専用の馬車の為に、この馬車を見た者は、特に何も疑問に思わない。 たとえ、その中に入っている者が、俺やヴァグドーたち一行であったとしてもだ。
馬車の内部の様子が見れないように、窓には黒いカーテンがついてるので、誰が乗っているか、正直誰にもわからない。 おそらく、王族関係者が乗ってるとしか、思われないのだ。
この王都の名前は『マリアスラン』と言うそうだ。
やがて、俺たちを乗せた二台の馬車が大きな宮殿の前で停止した。
どうやらナギアノ王国の王宮に到着したようだ。
「ヴァグドーさん、王宮に着きました。」
「ふむ、そうか。 わかったのじゃ」
ここで暗殺者の女性が、ヴァグドーさんに話しかけてきて、ヴァグドーさんが応対すると、ヴァグドーさんをはじめとするヴァグドーたち一行の皆さんが次々と馬車を降りていき、俺と暗殺者の女性が最後に降りると、目の前には、大きな宮殿が見えていた。
例えるなら、中東の王国にある王宮に雰囲気や建物が似てるだろうか?
これがナギアノ王国の国王一族が暮らすナギアノ・キングダムである。
入り口が大きな扉で閉じられており、その扉の左右には門番が槍を持って立っていて、こちらに向かって少し会釈する。
俺の名前は『糸井久信』・・・ここでは『イトリン』と呼ばれてる。
俺はただのしがないアルバイトのフリーター。 将来の夢は自分のラーメン屋のお店を持つこと。 一時期は "悪夢" を見たことによって、地球に命を狙われる立場の人間となり、命からがらこの異世界に逃げてきた。 ヴァグドーさんの付き添いという身分だけで、実際にはここの世界の普通の一般市民よりも、身分・位は低いと思うけど、遂にある王国の王都に入り、王宮の中に入って王様と謁見しようとしている。
実際に俺まで王様と謁見できるか、不明だけど、ここまで来れたことは、ただただ感心と感激でしかない。 勇者でもない英雄でもない、ただのラーメン作りで腰巾着のこの俺がだ。
―――感無量だ!
などと思ってるうちに、ヴァグドーさんや勇者アドーレさんや大魔女シャニルさんたち、ヴァグドーたち一行がどんどん王宮の中に入っていく。
「さぁ、イトリンさんもどうぞ王宮の中へ」
「ああ、そうか。 わかった」
暗殺者の女性に促されるように、俺も王宮の中に入っていった。
●【No.018】●
あれ、正門の大きな扉は閉じられているのに、イトリンやヴァグドーたちは、一体どうやって王宮の中に入っていったのか?
門番に開けてもらったのかな?




