*冒険者じゃなく暗殺者の登場 12
●【No.012】●
遂にお客様がやって来たようだ。
この俺の小屋 (ラーメン屋のお店) にお客様がやって来た。
どうやら冒険者のようであり、今は一人だけで冒険しているようだ。
やっぱり、あの森のことを聞きつけてやって来た類いの冒険者のようであり、偶然この道を見つけて歩いていたら、小屋が並んで建っていたのに気がついたと言うことだろう。
その小屋の内部構造とは、右側の縦にカウンター席が三つあって、俺がカウンター席を挟んだ、さらに右側に立っている。
左側の縦に机が二つ並んで置いてあり、一つの机に椅子が左右二つずつ合わせて四つ置いてある。
「いらっしゃい」
「……?」
俺の言葉に首を傾げる、その冒険者とは、若く美しい女性であり、腰まで伸びた長く綺麗な黒髪に血のような真紅の瞳と同じく真紅の唇 (口紅?)、黒いマントの下に黒い長袖上着と黒いロングスカートに黒いロングブーツと黒い革手袋といった全身漆黒の出で立ちで、服の上からでもわかるほど大きな胸が特徴的である。
一見して、普通の美女であり、とても冒険者には見えないけど、一体誰でどういった女性なのだろうか?
そこで彼女がカウンター席の中央の俺の目の前に座ってきた。
「一体何にしましょうか?」
そう言いながら、俺が水の入ったコップを彼女の目の前に置いた。
「はぁ? そもそもここは一体何ですか?」
「ここは特殊な食事を出す、お食事処のお店って感じですかね?」
「えっ、ここは食べ物を食べさせてくれる小屋なのですか?」
「はい、そうです。 お客様に "中華料理" っていう料理を食べさせるお店です。」
実はまだ看板とかのぼりとか、この店のことを宣伝するモノは何も作っていない。
そんな時間はなかったからだ。
「……!」
ここでなんと彼女の紅い瞳がギラリと光った。
「な、何ですか?」
一瞬だけ、彼女が俺を睨み付けたかに見えたけど、すぐに両目を閉じてから、こう言った。
「……いえ……それではメニューを見せてください。」
「えっ……あっ……はい、どうぞ」
俺は特殊な紙で作った俺オリジナル料理のメニュー表を彼女に手渡した。
うん? メニュー……?
この世界にも "メニュー" なんて言葉があったのか……?
まぁいいか、たぶんあるんだろう……?
あまり気にしない。
しばらく彼女がメニューを見つめていたが、何か食べるモノが決まったのか、再び俺の方を見てから―――
「それではチャーハンとギョウザを一つずつください。」
おっ、普通に注文してきた?
「はい、判りました。」
今、わかったぞ!
この女性……わかる人だ……!
おそらく、俺たちと同じ『異世界転生者』か『異世界転移者』か……いずれにしても、この世界の人間ではない……やけに慣れてる。
俺はチャーハンとギョウザを作り上げて、彼女の目の前に置いた。
「お待ちどうさまでした」
「……」
彼女が無言でレンゲを持って、そのままチャーハンを掬って食べた。
間違いない!
もし、この世界の人間ならば、こんな意味不明な料理を出されたら、頭上に『?』マークがついて不思議そうな顔をするか、怒鳴り声で文句を言うか、色々とアクションを起こすはずだ。
そのチャーハンとギョウザを、普通に慣れた感じで食べてるところを見ると、間違いなく地球の日本人じゃないのか?
「うん、美味しい」
「あの失礼ですけど、あなたどちらさん? もしかして、あなたも地球の―――」
と言いかけると、突然彼女が食べるのを止めて俺に話しかけてきた。
「私は冒険者ではなく暗殺者です。」
「―――えっ!?」
彼女の発言に思わず俺は驚愕・無口になって、そのまま彼女が無言で食べ続けていた。
●【No.012】●
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