二話 烏白馬角〈うはくばかく〉
━━━「君の名前はなーに?」
「僕の名前は---
朝八時、自称サポーター〈神原〉に起された。本当にサポートするんだな。こいつ。皮肉なことに、早起きをサポートされた。何が目的だよ。
...あの声...なんだったんだろうな。
僕には絶対暗記、完璧な暗記能力がある。そのため、見る夢は過去の記憶がほとんどだ。過去の記憶を思い出すためにはきっかけが必要。夢は思い出すきっかけになってくれる。そのため、それまで忘れていたことを思い出すことができる。
だけど今日の夢は違う。何も思い出せない。なにしろ僕が小さくなかった。身長が今とほとんど同じだった。つまりこれは...
∞∞∞
「予知夢...ですね...」
白塗りの軽自動車を運転している神原が言った。そう、今日見た夢は未来を予知しているのだ。
予知夢が見えるようになったのは中学に入ってからだったと思う。でも僕はあることに気づいてしまった。未来を見ることができても、未来を変えることができないのだ。
例えば、僕が転ぶ夢を見たとする。だけど、どう頑張っても転ぶ未来しかない。できることは、新品のジーパンを履かないとか、絆創膏を用意しておくとか、そんなことだけだ。だから死ぬ未来を見たら僕の人生はもう終わりだ。
※※※
予知夢か...勉くんの能力は絶対暗記だけだと思っていたが...これは面白くなりそうだ。
「勉くん、君はどんな夢を見たんだい?」
「誰かに名前を聞かれる夢、高くて、明るくて、モンキチョウみたいな声。」
モンキチョウみたいな声か...よく分からない表現だな。まぁそれはさておき、これは勉くんの行動を監視する必要がありそうだ。
∞∞∞
「着いたよ。今日は十時から英語のテストがある。勉くん、頑張ってくれ。」
「言われなくても。」
「僕は書類をまとめないといけないから、ここでお別れだ。早く、ここになれるようにね。」
「はいはい。」
早くなれないとね。
※※※
十時から英語のテストってい言ってたな...それまで何すればいいんだ。あーーもーめんどい。ていうか、ここになれろって?知らない人がたくさんいるこの場所で、何すればいいんだ...
∞∞∞
「おい。そこのお前。起きろ!」
なんだこのいかつい声は、僕...寝てたのか。
「おぃ。無視すんじゃねぇ!」
「あーはい。僕になんの用ですかー?」
「時計。十時。テスト。サボってんなら、この俺様がお前をしばいたるぞ!」
「テストなのはわかりましたけど、あなた誰ですか?」
「俺はこの施設の用心棒、八神 徹だっ!」
この時代に用心棒...昭和のドラマじゃないんだから。それよりテストか、忘れてたな...まあいいか。
「あのーテストってどこでやるんですか?」
「あー行ってこー行ってそー行くんだよ。テスト頑張れよ。」
はぁ?なんだその説明。ヤンキーあるあるじゃねぇか。あるある要素詰めすぎだろ。てかマジでどう行くんだよ。めんどくせーーーー。
「やあ勉くん。迷子みたいだね。連れてってあげるよ。」
まためんどくさいのがきた。これもあるあるだよな。くそかよ。
「神原さん。仕事じゃないんですか?それともなんですか?サボりですか?」
「遠くから八神くんの声が聞こえたからね。ちょっと気になって。」
※※※
まだ、勉くんが見た未来は訪れてないみたいだな、、、本当に予知できるるのか...
「勉くん。テストの場所はすぐそこだよ。白色の扉あそこを開けたところにある。」
「ありがとうございます。ちゃんとサポートするんですね。」
「サポーターだからね。」
ちゃんとサポートしてやるよ。
「テスト頑張ってくれ。」
「それ、もう聞きました。同じ下り何回も繰り返さなくても大丈夫です。」
「そうか。それは申し訳ない。」
そういった時にはもう彼はいなかった。
テストはどうでもいい。気になるのは、テストの前の十分間。果たして、予知できているのか...
※※※
この部屋...換気してない...くそだな。後で神原に言ってやるか。てかここにいるやつらテストする気あんのかな。おしゃべりしすぎだろ。僕はこの席で、テストが始まるまで待つとしよう...
僕の憂鬱な時を一人の少女が壊した。その少女は僕の肩を二回叩きこう言った
━━━「君の名前はなーに?」