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ナマポランドフクシマ  作者: にーとしのしの
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第6話 隊編成

 田中マポの人生。それは敗北者の人生。


 学生時代は勉強もできず、運動も苦手で部活には入らず、恋愛なんて欠片も経験できず、身長は159cmのホビット。

 高3の冬に両親を震災で亡くし、ナマポニートになってからは人生で成功することなんて考えようともしていなかった。

 

 俺がナンバーワンか……。

 手術後の検査から2週間。

 俺らは基礎体力の向上のため訓練に勤しむ毎日を送っていた。


 ナマポニートだった俺には、本来であれば激しい訓練になど1日だって耐えることができないであろうに、手術の効果で疲れなど全く感じない。

 

 もうゴールか。早いな。

 ランニングマシーンからゴールを知らせるアラームが鳴り、マシーンが減速するとともに、俺は交互に前後させていた脚を止める。

 

 42.195キロを44分57秒。

 新記録だ。


 手術で超人的な力を手に入れた俺には世界記録など小学生の作った記録にしか思えない。

あーあ、こうも簡単に力が手に入ると、努力なんてほんと馬鹿らしいね。うん。

 ウサギとカメのような例もあるけど、俺みたいな天に愛されたものにはそんなの適応外。

 光の速さにはどれ程の努力をしようと何者もかなわない。そんなところだね。ハッハッハ。


 そもそも、今までの人生が高く飛ぶための屈伸だっただけで、これからが俺の本当の人生なんじゃねぇか。 



  

 2位 アイコ  1時間08分22秒

 3位 ハコッス 1時間11分25秒

 4位 ひとみ  1時間16分56秒

 …

 …

 57位 室井あきのり 2時間57分57秒

 

 1位でゴールしてからゲームや昼寝で時間を潰し、全員が完走するのをいつものように待った。

 

「あきのり、お前いっつも最下位だな。っていうかほんとに手術の効果出てんのか?」

「……そんなの知りませんよっ。僕にしてはこれでも大分パワーアップしてます。ずいえきさんたちが凄すぎるんですよ!」

 

 あきのりのやつ息切らしてだっせぇなぁ。

 こりゃ、おなじ覚醒人間とは思えないよ。


「このあとミーティングですよね。早くいきましょう」

「あぁ、そうだな」


 こいつ最下位のくせに俺に提案しやがって生意気な。

 いつからかドモリも治ってやがる。

 まぁ、礼儀正しいし舎弟としてなら認めてやらんことはないがな。


 

 

 俺たちはミーティングのため一つの部屋に集められた。

 椅子や机はひとつもない。


 こうやってナマポ受給者全員がちゃんと集まるのって、手術を受ける前の説明会以来だな。

 全員の顔と名前を記憶しているわけではないが、この2週間で皆がたくましくなり、説明会の時はいかにもだった底辺の面影が消えている気がする。


 この俺もまともに手入れしてなかった腰まである長い髪を結ってまとめ、まるで三国志の武将のような風格が出ていると思うね。うん。


「ミーティングってなんなんでしょうね。ずいえきさん何か聞いてますか?」

「いや? 何も聞いてねぇよ。めんどくさいから早く寝てぇなぁ……」


「今日、こうやって集まってもらったのは、明日から実践的な訓練に移ってもらうその準備のためよ」


 声がした方に目を向けると、いつの間にかこないだの白衣の女が立っていた。

 

「皆さんこんにちは、会うのは2週間ぶりね」

 

 部屋の前方に向かって歩きながら、白衣の女は何となく偉そうに挨拶をする。

 この女、俺のすぐ横にいたというのに全く気付かなかった。

 白衣を着てるから目立たないはずねぇんだけどな……。

 まるで瞬間移動をしてきたような。そんな感覚だった。


「そういえば自己紹介がまだだったわね。私はの名前は椎名こみみ。NRAO手術の開発者にしてこの実験施設の所長を務めているわ」

 

 この女、そんな偉いやつだったのか。

 道理で態度のひとつひとつが大きい訳だ。


「では、あなたたちにはまず隊を組んでもらう。この隊はこれからの実践訓練を共に行い、調査本番でも使用する重要なものよ。57人だから……、5人から6人で10隊を作ってみて」


 うーん。

 こういうグループ分けにはいい思い出がない。

 いっつも最後にひとりだけ残って、お情けでクラスのリーダー的な人のグループに入れてもらうのがオチ。

 誘ってくれる親しい友人もいなければ、自分から話しかける勇気もない。

 その度に自分の不甲斐なさを自覚するだけだった。


「あの……、同じ隊でやりませんか?」

「あぁ、いいよ」


 あきのりが真っ先に誘ってきてくれた。

 gmみたいなやつだけど、めっちゃ嬉しい!

 けど、俺はクールだから平静を装って返事をした。

 

 さて、あとの人数はどうするかな……。

 と思っていたら、俺たちの周りを囲むように大勢の人が集まってきた。

 

「すみません~。僕とも~組んでほしいですね~」

「わたくしとも組んで欲しいですわ」

「あーしも入ってあげてもいいよ」

「私もいっしょにやりたいっちゃ」

 …

 …

 

 うお。なんだこれは。

 そうかこの中で俺は1位。

 人気があるのは当然だよな。

 休み時間に机とにらめっこしてた学生の時とは違うんだ。


 俺は大勢の中から訓練での実績と股間に従って4人を選ぶことにした。


 

次回、第7話 自己紹介

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