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エピローグ

 昔々、北西の国には沢山の国がありました。その中の一つに、小さな、とても小さな国がありました。名前は流星国。


 とても美しいお妃様は、建国日に三つ子を産みました。祝いに駆けつけたのは蛇、狼、蜂です。小さな国に生まれた三人の王族は、それぞれ三匹の奇妙な生物と共に成長しました。


 第一王子は蛇と仲良し。大蛇連合国に名前を轟かせました。容姿端麗かつ、あらゆる才能に秀でていて若手社交界の中心人物。国中が戦争になりそうな時に、彼は告げました。自分は蛇神の遣いであり、この地を監視し、王に相応しい者を守り続けてきた。彼に選ばれた王は、連合国外の国々とも良好な関係を築き、稀に見る良い王朝を築いたと言われています。


 白銀蛇王と蛇鷲神話。北西の国では、その伝承を知らない者は少ないです。


 第一王女は蜂と仲良し。人懐こくて、優しく、とても可愛らしい方です。連合国内の王女達の中心には、いつも彼女がいます。しかし、可哀想な事に彼女は醜く、そして体が弱く、度々長い眠りについてしまう体質でした。ある日、彼女を慕う蜂達が皇子様を連れてきました。助けてくれたお礼に、この世で最も美しい王女様に会わせるというのです。皇子様はあまりに醜い王女様に驚きましたが、中身のあまりにも綺麗な心にも胸を打たれました。二人が愛の誓いを交わした日に、なんと王女様は女神のような美女となったそうです。


 醜い姫と蜂皇子というおとぎ話。いくつかの話が混ざったと言われていますし、醜い姫と流れ星からの派生とも考えられています。


 第ニ王子は狼と仲良し。医者になりたいと国を飛び出し、姿を消したそうです。彼に関する神話やおとぎ話は全くありません。旅をしている医者家族と一緒に去った。医者の娘と結婚したいと駆け落ちした、そんな記述が、とある歴史書の中に認められるだけです。


 流星国という国は短く、儚い閃光のような王朝でした。四代しか続かず、土砂崩れと洪水で消えてしまった国です。そう、大蛇連合国で戦争が巻き起こり、多くの災害が起こり、大蛇連合国が失われた頃のことです。


 

 ★☆



【千年後 とある国】


「ソレイユ! いい加減にしろ!」


「バデス! 嫌よあんなネバネバ男。ソレイユは星の王子レクスみたいな素敵な王子様と結婚するの。セレーネ星姫のように!」


「結婚ってまだ八歳なのに何でいきなりそんな話に……。単に仲良くしろって話だろう?」


 ふんっ、と鼻を鳴らすとソレイユは絵本を閉じて、プクッと頬を膨らませた。


「嫌よ。ソレイユは可愛いんだから、婚約したって勘違いされたら困るわ。それに内心皆をバカにしているから嫌。私には何でも筒抜け。協王候補だもの。あら、アピスの子。あなたもそう思ってくれるの? ありがとう」


 そう言うと、ソレイユはピッタリと横にくっつくアピスの子の赤い産毛をサワサワと撫でた。


「はいはい、ソレイユはどんな生物とも語れるからな。あーあ、僕もそう生まれたかった」


 呟くと、ソレイユは閉じた絵本をまた開いていた。兄の僕の発言は無視。


「はあ、天と地を結んだ星の王子と星姫。素敵……」


 鼻歌交じりで、ソレイユはまた絵本を初めから読み始めた。妹ながら可憐な歌声。アピスの子が楽しそうに揺れ、ソレイユの前に並ぶセルペンスやアングイスも楽しそう。護衛のアラクランも、仕事中なのに尾を揺らしている。それに大狼の子が前足でトントン、トントンと太鼓を鳴らすように切り株を叩く。


「きらめく星よ、叶えて欲しい。あのこの願い、誰かの想い。笑顔を作る、一番星」


 ソレイユは絵本をめくりながら、ご機嫌そうに歌い続けた。

 歴史は埋もれ真実は霧散する。


 伝承には偽りが含まれている。


 けれども残された大切なものは決して失われない。密かに継がれ続ける。消えたと思われても決して消えてはいない。


——「僕は★★★、君は?」


——「私は☆☆☆、本当はずっと貴方と話をしてみたかったの」


——「異生物と語れるなんて、絆を結べるなんて素晴らしいじゃないか!」


 そんな風に、何度失われても、忘れられても、必ず巡ってくる。合縁奇縁。ひょんな出会いや、何ともない巡り合わせにも、意味がある。後世への変化をもたらす。


 ここはかつて、あらゆる命が平等に幸せになろうと手を取り合った、北西の地——……。

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