表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/32

契約の内容


「大丈夫ですか? ここまで完全試合ですよ。秩序的に問題ありませんか?」


 ベンチに戻ったあと、水を飲んでいるトウシに、ツカムが小さな声で尋ねた。


「ワシ、一球でも魔球つかったか?」


「……いえ」


「170キロ以上の球投げたか?」


「いえ」


「ほな、問題ないやろ」


「ひとつ、聞いていいですか?」


「なんや?」


「なんで、抑えられているんですか? あんなクソ遅い球で……西教って、高校野球で一番強いチームなんでしょう? おかしくないですか?」


「たとえば、清崎。あいつは左でスタンスが広い。低めの対処が非常に得意な、スタンダードでオーソドックスなプルヒッター。アウトステップでインの球を狙い撃ちしてくる典型的なスラッガー。せやから、外の球は、カットできるよう、若干ドアスイングで、腕を伸ばしてくる。カットの打球を内野に入れてやれば、簡単に打ち取れる。外をカットするとなれば、スイングを遅らせんのが普通。なら、ブレーキのかかる0シーム、それも若干カット気味にムーブさせれば、内野に転がる」


「……なるほど。っていう設定ですか」


「いや、ホンマの話や」


「……え?」


「ていうか、初戦も二回戦も、そうやって勝ってきたんやで。デビルの力なんか、今大会では、ほとんど使ってへん。もちろん、お前が速い球投げられたり、ワシの球を余裕でとれたりするんはデビルの力やから、まったく使ってないわけやないけどな」


「え、だって、初戦は僕も投げましたけど、次の三国戦では、三分くんしか……え、じゃあ、あの試合は、普通に勝ったってことですか?」


「気づいてなかったんか?」


「……」


「秩序守る一番の方法は、デビルの力を極力使わんことや。そのくらいは分かるやろ?」


「わかり……ますけど……いや、はは……なんというか、すごいですね。さすがに感嘆しますよ。まさか、デビルの力を限界までセーブして、ここまでのことができるとは。御見それしました」


「セーブ……ねぇ」


「は?」


「いや、なんでもない」


 ★


「田中ちゃんの表情に若干の疲れが見えるところをみると、どうやら、彼の願いを聞いてあげたみたいだね、ミーちゃん」


 アカコー側のアルプスで試合を観戦している男が、隣に腰掛けている日焼けした男にそう声をかけた。


「ちなみに、ここまでの試合、ミーちゃんはどう思う?」


「あんなクソ遅い球にカラぶるとは、へたくそな連中だ」


「ははは」


 投神は、ころころと笑み、


「まあ、いいけどねーん」


「……何が言いたい」


「三分類と田中東志、どちらが優れた投手だと思う?」


「三分だ」


「ははは」


「なんだよ」


「田中ちゃんは、今、君との取引で、『この試合の間だけ人間に戻っている』。今の三分ちゃんが西教に投げたら、いったい、何点取られるかな?」


「知らん」


「僕ちんの見立てだと……まあ、ここまでで二点は取られているかな」


「俺の予想とは違うな」


「へー、そー」


「……本当に、なにがいいたいんだよ」


「約束通り、三分ちゃんは、君のチームにあげるよ。けど、田中ちゃんは、ウチがもらう」


「……」


「別にいいよね? みーちゃーん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
デビルの力に頼らず、戦略と頭脳だけで完全試合を、 続けるトウシが、あまりにもカッコよすぎる! 彼の投球はもはや芸術。すべての球に明確な理由がある ロジックの極地を見せてくれ!
[一言] 一言 試合 契約内容  アカコー側のアルプスで試合を観戦している男が、隣に腰掛けている日焼けした男にそう声をかけた。 ニャルかソルかオメガか知らんけど、例によって 日焼けした黒い肌の男、お…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ