「演説/アートフォームについて」
芸術とは堅牢な要塞の鉄壁であります
その鉄壁の内側には
即時に人生を変えうる苛烈なインパクトと
理解されないかもしれない孤独さを併せ持つ
『人々の気づき』が匿われているのです
"芸術であれば何を言っても構わない"
それが私たちの無限の発想を支え
帰属感の満たない人々の共感を呼び
わたしたちがわたしたちであり続ける理由なのであります
詩の大家であられます吉本隆明氏はこの言葉を遺しました
『詩とはなにか。
それは、現実の社会で口に出せば全世界を凍らせるかもしれないほんとのことを、
かくいう行為で口に出すことである。』
『詩は必要だ。
詩にほんとうのことをかいたとて、
世界は凍りはしないし、
あるときは気づきさえしないが、
しかしわたしはたしかにほんとのことを口にしたのだといえるから。
そのとき、わたしのこころが詩によって充たされることはうたがいない。』
わたしたちは
わたしたち一個人自身に向けて言葉を遺してゆけばいいのです
その言葉に思いを重ねる人々が
自らその詩へと歩みを進めて
新たな気づきへとつながろうとすることこそが
芸術そのものなのであります
作り手と受け手が歩み寄り合う
そのアプローチこそが芸術なのであります
読み手に迎合することはありません
自分が自分に突き刺すことのできない言葉が
誰かの苦悩を貫き射止め根絶やしにすることなどできるでしょうか
案ずることはありません
自分自身を包み込む言葉を
自分自身を戒める言葉を紡ぎ続けましょう
芸術とは堅牢な要塞の鉄壁であります
その鉄壁の内側には
広大な世界と歴史とが
わたしたちの言葉を心待ちにしています