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こちら魔道具開発工房  作者: 鴨川 京介
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04 管理チームの結束

「初めまして忠太郎様。私は猫のあやかしで三郎と申します。魔法理論担当統括として赴任しました。」


「初めまして。私は魔道具統括の小太郎と申します。猿のあやかしです。」


「私は魔道具製作責任者のケイスケです。鶏のあやかしです。」


「私は魔法理論教本製作責任者のシローといいます。犬のあやかしです。よろしく。」


それぞれがあいさつしてくれた。僕も返さなきゃね。


「僕が今日から着任しました忠太郎といいます。種族はネズミです。よろしく。それと僕のことを様づけで呼ぶのはやめてほしいな。忠太郎もしくは所長とでも呼んでください。恐らくこの中で僕は一番年下みたいなんで、ちょっとやりにくいんです。お願いします。」


僕は正直に頼んだ。だって、一番年下が一番上の役職ってみんな仕事しづらいんじゃないかなって思ったんだ。


逆に僕より年下だと、技術や知識が追い付かないだろうから、こうなることは予想できたんだけど。


「わかりました、ではこれからは所長で呼称を統一させてもらいます。よろしいですね。」


冴子さんが仕切ってそう切り出してくれた。よかった。


「それで結構です。さっそくですが工場の現状を教えてもらえますか?何やらトラックで搬入されていたようですが。」


コの字型に配置されていたソファに皆を腰かけさせ、僕は所長席に座った。


座ってみるとこの机の大きさに改めて驚かされた。なんかいろいろとついてるようだし…。

冴子さんは僕が座った横に立っている。

雪江さんはほかの担当責任者とともにソファに座っている。

二人とも秘書だったはずだけど、なんか役割が違うのかな。

まあ、いいか。


「トラックの搬入は昨夜から行われています。積荷は主に食料で、ほかに衣類、生活雑貨が搬入されてきています。これらは現在、京介様が異界にて京都の土地を復興するために必要なものと輝乃様が指示を出され、昨夜からの商品到着となっております。」


「それは申し訳ない。みんな昨日から来ていたんだね。僕はここに赴任することを知らされたのが昨日だったもので、全然知らなかったよ。」


「いえ、それに関してはお気になさらないでください。私たちも急遽一昨日呼び出され、役割を振られました。現在この工場では200名の眷属の皆さんが、収納作業と振り分け分担を行っております。今回、京介様のもとに1万8千名の眷属が集結しております。ここ150年ほどなかった日本との交流、異界との交流の機会ですから、その希望者は後を絶ちません。私たちはこれら眷属の皆さんを適材適所に配分するのと、その作業工程の指示、魔法理論教本の作成と新しい魔道具の開発、製造が主な任務と思われます(・・・・・)。」


「えっと、『思われる』ってどういうこと?」


「実際には、京介様の指示通りに動くことを求められています。臨機応変に。一昨日のいきなりの招集も京介様のあやかしである輝乃様からの急なご指示で集められました。京介様の思考をリアルタイムで愛様が読み取り、それをもとに起こる事象について輝乃様が予測され、必要な人、モノを準備していくのが、この工場に課せられた使命です。ですので、メインとしての魔道具制作や魔法理論教本の制作はもちろん行いますが、それ以外にも様々なことが指示されることと思われます。そのうちの一つが、現在進行している『物資調達』です。」


「なるほど、よくわかりました。私は今まで魔道具の開発しかしてこなかったもので、このような工場の在り方や、自分の動き方に自信がありません。みなさんのサポートを当てにしています。よろしくお願いします。」


僕は正直にもう一度頭を下げた。


知らないものは知らない。知ったかぶりなんかしない。

だってそんなことしたら、せっかく知らないことを知るチャンスを逃してしまうもの。

僕より優秀な人はいっぱいいる。

現に今の僕では万眼鏡のプロトタイプ一つ作れはしない。

知識や技術、力は持っている人を使う。

持ってないものがやってもできないことはできない。

一人で物は作れない。

僕は自分が今まで研究をやってきて身に染みていることを正直にみんなに話した。


「正直に言うてくれはったみたいでこっちも正直ほっとしますわ。あんたならええもん一緒に作れると思うわ。よろしゅう頼んまっさ。」


魔道具統括の小太郎は、笑ってそういってきた。


「そうですね。それぐらい正直な方が上司なら、こちらも隠し事をせずに済みます。」


魔法理論総括の三郎も笑いながらそう話しかけてきた。

ほかのみんなもうなずいてくれている。協力してくれるようだ。


「それじゃ、実際に今ある問題をかたずけていきましょう。」


僕はそういって、現状の報告を書類を見ながら確認していった。


「う~ん。このままだと明後日ぐらいには手元で使える無限収納リングもパンパンになるかな。」


「『無限収納』やのに有限ですのんか?」


「うん。あくまで『使用者の魔力依存』のリングなんだ。だから平均で今取り扱っているスタッフが1,000のMPを持ってても、これから来る物量には対処できなくなるね。」


「それなら、その都度荷を異界に運んで、向こうで収納から出して、またこちらに戻ってくるという形で輸送してしまった方がいいですね。」


「うん、確かにそれで解決はするんだけど…今後のことも考えて新しい『収納リング』を作っておいた方がよさそうだな。」


「といいますと?」


「さっきの話だと、こういう無茶ぶりがこれからも多くなってくると思うんだ。それにすでに改良点は考えてあったんだ。あと、人用とか異界人用とかも開発しなきゃいけないし、今のうちに作っちゃった方が後で楽できると思うんだ。」


「どんな仕様で作りますのん。」


「そうだな。まず僕たちあやかし用は、ある程度定量を決めておいた方がいいと思うんだ。使用者依存じゃなくね。それに魔核を使って魔力を補充し、リングでの受け渡しもできるようにしておいた方がいいと思う。今の収納リングはもともとの五行思想の範疇でしかなく、猫又のおばば様が『なんとなくできた』って言ってたものなんだ。それを少し簡易に作ったのがあの無限収納ブレスレットなんだ。僕はおばば様が込めた魔法をコピーして、ブレスレットで使えるようにつくりかえただけなんです。でも京介様の新魔法理論の『闇』と『光』を使って『空間』を切り取って『時間』を止めれば、もっと少ない魔力で作れる気がするんだよね。実はおばば様や長達が作った魔道具の中には、そういう『やってみたらできた』っていうものが結構多いんだ。それを新魔法理論で体系化して、おばば様たちだけ(・・)が作れる魔道具から、誰でも技術と知識を習得すれば、作れる魔道具に変えていくことも求められてるんだよ。そういう意味でもチャレンジする甲斐があると思うんだ。」


「なるほど、そういうことでっか。ほなら早速やってみまひょ。材料は工房の方に揃てますよってに、好きに使うて下さい。私もお手伝いしますよってに。」


「じゃあ、どうせならみんなでやってみようか。アイデア出し合いながら。一番いい効率の魔道具を目指して。」


「いいですね。私もお手伝いします。」


そのあとみんなで工房にこもり、さっそくあやかし専用の『収納リング』の開発に取り掛かった。


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