17 魔法理論を体系化する
さて、ようやく魔法理論の体系は区別できたんで、早速それを魔道具に応用していくことを考えてみよう。
ここでは、まだ作らないよ。
こんなのができそうだねってところで止めておいて、小太郎さんに振っちゃおう。
僕はそれぞれを系統ごとに分けたところで、早速それを使った魔道具の考察をしていく。
まず人の身近なものを魔道具にすることから考えてみようか。
まずは眼鏡。
うん、これ重要。
僕もこれがあるおかげでかなり便利になった。
これを量産できるだけで、みんなの作業もはかどると思うんだ。
メガネは確か『鑑定』と『不懐』とが基本にあって、その上で僕の万眼鏡なんかには『記憶譲渡』や『高速思考』などのスキルが発動するような魔法もかけられていたんだよね。木魔法で思考の活性化を促して成長させて、光魔法と水魔法でそのサポートをする感じかな。一方的に活性化させると、すぐに細胞が死滅してしまうからね。
それを血流をよくして栄養分を行き渡らせて、光魔法で死滅した脳細胞などを効率良く除去していく。
うん、考えただけで怖いな。
よくおばば様は僕にこの眼鏡をかけさせたよね。もしこれらのバランスが悪ければ、僕死んじゃっててもおかしくないよね。
うん、今度会ったら抗議しておこう。そうしよう。
同じようにほかの魔道具も考えてみた。
・パソコン、タブレット
これは愛様たちの実績があるとおり、バッテリーの魔道具化のみで作動できそうだね。
・携帯電話、スマホ
これもパソコンと同じようにバッテリーの改良だけのような気もするけど、電波の届かないところでは使えないよね。たとえば異界とか…。
僕が掛けているこの万眼鏡を解析して『通信』の魔法を編み出せたら解決できそうな気がする。うん、今度やってもらおう…小太郎さんに。
・車、バイク
これはエンジンの実用化ができたから、あとは純粋に魔動力のみで動くエンジンや車、バイクの開発をしないとね。
・飛行機
これは風魔法で浮力をつけたら浮くだろうから、プロペラ機やジェットエンジンなんかは動力部の付け替えだけで動きそうだよね。純粋な魔道具にするなら…僕が編み出した重力魔法を使えば機体も軽くできそうだね。その方向で進めてみよう。これって実験段階で、京介様の記憶の中にある未来の乗り物として、映画に出ていたあの板も作れるような気がする。うん、楽しみだね。
・ヘリコプター
これもローターの動力部を、魔導エンジンに置き換えれば解決すると思うけど、これも重力魔法で浮かせたら制御がもっとよくなるかもね。
・テレビ
…テレビは送信側も作らないと意味がないよね。画像を出すモニターとしてなら、光魔法とそれを映し出すための水か空気があれば何とかなりそうだよね。
迷彩魔法なんかも光魔法と闇魔法を作用させて生み出しているんだから、この装置にも闇魔法は必須かもしれないね。
・画像送信器
これは今、目の前にある風景をそのままの形で送信して、受信機を経由して映し出すってことだよね。
スマホにもカメラってついてたと思うから、それを解析してみようか。
あ…光魔法と闇魔法、それと送信のために火魔法で活性化させると映像の圧縮ができそうだよね。
…あらゆる『人が作ったもの』は一通り魔道具化できそうだよね。
そういえば、京介様が人工衛星で異界の星の探索を求められているみたいだけど、これは要実験だよね。宇宙で魔道具がどうなるかわからないし、高空での挙動制御もうまくいくだろうか…。
…重力魔法を使えば何とかなるかもしれない。
それも人よりはるかに低いコストで打ち上げができそうだな。
それの発射場も広くとる必要もないし…。
でも、ある程度古くなったら新しいものに交換できるように人工衛星の発着場ってのを作らないとね。
人工衛星っていうより魔工衛星だけどね。
うん、こんな感じで小太郎さんにお願いしよう。
お~い、小太郎さん。ちょっといいかな?
え、なんでそんな怖い顔してるの?
車の改造だけでも作業が追い付かなくて、てんてこ舞いしてる?
お前も作業に加われ?
う…うん、わかったよ。手伝うからそんな襟首もってひきづっていくのはやめて…。
雪江さん助けて…。え?雪江さんもてんてこ舞い?こっち手伝うかって?
……はい、小太郎さんのお手伝いします。
あ、さっき万眼鏡で作っておいた魔法理論体系の草稿を三郎さんに送っておかなきゃ。
あ、三郎さんもやってきた。
え?こっちもてんてこ舞い?
うん、まず作らなきゃいけないことからでいいよ。うん。
い…いや、僕は今から小太郎さんの作業を手伝わなきゃいけないんで…。
え?冴子さんが異界の工場でしびれ切らせてるって?
うん…はい…みなさん手伝いますから、もうちょっとお手柔らかに…。