表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら魔道具開発工房  作者: 鴨川 京介
13/17

13 次は車か

僕は少し仮眠をとることにした。


やっぱり頭を駆使していたせいで、大分疲れがたまっていたようだね。

翌日になるまで僕は起きなかった。


翌朝、突然京介様が伏見稲荷の工場にやってきた。

どうやら車を改造されるらしい。

ふむふむ。ガソリンではなくて魔核で動くエンジン?面白いことを考える人だ。

早速京介様から聞きながら、いろいろと試していく。


一台のトラックが搬入されている。まずはこれから改造するんだね。

「要するに燃料で爆発させてピストンを動かすのを、魔法を使って動かすように改良すればいいんだが、どうすれば一番効率がいいんだろうか。火魔法で爆発させればいいのか、それとも水で押せばいいのか…。」

京介様はぶつぶつと考えを漏らしながら、試行錯誤している。


「忠太郎君、手伝ってくれるかな。まずは火魔法を使って、このエンジンを回してみようと思うんだ。」


えっと、火魔法をガソリンの燃焼のために使うってことだな。

万眼鏡から京介様の思考が、ビジュアル化されて僕の目の前に展開しだした。

こうやってイメージでやりたいことが伝えれるのはいいね。


早速試してみる。


点火プラグの位置で火魔法を発動。ピストンは回るけどこれって1分間にどれぐらい回すのかな。


「京介様。点火プラグの位置で火魔法を発動させるためには、点火プラグの先に魔核を仕込んで、魔力線で外部から、その魔核に魔力を与えて火魔法を発動させる必要があります。これってどれぐらい回せばいいんですか?」


「えっとね、1分間に1,000~12,000回転ほどかな。」


「う、今のままだと一人のあやかしでも火魔法の発動にはMPが1ほどかかります。この場合、魔核に魔素をため込んでも、その分どこかで補充しなければいけません。この火魔法はMPを込めた分だけ発火しますが、大きな発火には大きなMPが必要になります。今のままじゃ一人で1分動かすのが限界です。」


僕はそのあまりの回転数にびっくりした。同時に京介様の助けができないことにも気落ちした。


「う~ん。それじゃ使い物にならないね。そうだ、じゃあ水はどうだろう?水ならその体積に比例したMPで済むだろ?MP1で1立米、約1tの水ができるんだから2,000CC の排気量なら2リットルで済むよね。だとしたらMP1で500回回すことができる。1分間で2MP、1時間で120MP。さっきよりずいぶん実用的な数値だと思わない?」


「でも京介様。それって最低のアイドリング状態の回転数ですよね。最高の出力を12,000回転とするとその12倍、1440MPが必要になりますけど大丈夫ですか?」


「う~ん、すると一人で動かす最高は1時間程度になっちゃうね。それでも、一応やってみよう。あと、点火プラグにタイミングを合わせて魔法の発動をしなきゃいけないから、ピストンの回転に合わせて魔法発動の信号を出して…これを受けて魔法の発動。…魔力は操縦者からもらうとして、魔法の発動だけを制御するように魔核に魔法を込めて…。うん。これで行けるだろう。

忠太郎君。エンジン掛けてみて。」


僕は運転席に座ってエンジンをかけた。

すると確かにエンジンは回ったのだが…


「う…うわ…ちょ…ちょっと忠太郎君エンジン停めて。ストップ。ストップ!」


僕はエンジンを切って車から降りてみた。

すると京介様は、車の後ろから噴き出した大量の水を前に、苦笑いしていた。


「水を使うんだから当然こうなることも予想できたのに、失敗したね。ハハハ…。」


京介様は照れ臭そうに頭をかきながら、それでも楽しそうに笑っていた。


「大丈夫。開発に失敗はつきものだよ。今のは思いつかない俺も相当間抜けだったけどね。忠太郎君も気づいたことがあったら、どんどん言ってね。一緒に開発してるんだからね。」


京介様からいわれて僕はドキッとしてしまった。

よく考えたら京介様の開発パートナーを、今僕はやってるんだ。そのことに今更気づいた。これは緊張している場合じゃないな。どんどんブレストしながら進めなきゃ。


「では京介様。風魔法で『空気を圧縮する』という方法はどうでしょうか。もともとのエンジン構造にはこのほうが向いていると思います。ガソリンの燃焼は空気の爆発的な膨張ととらえることもできますから。」


「なるほど、そうだね。いや~、初めて魔道具を開発できると思ってちょっと舞い上がってたよ。うん、それで考えてみよう。」


京介様はしきりに頭をかきながら照れくさそうに話していた。

京介様も魔道具の開発が好きなんだ。うん、僕はうれしくなった。


「空気を作り出すとなると、水の10倍ほどのMPが必要になりますが、空気は地上ならどこにでもありますから、それをただ一方方向に向かって押せばいいだけですから、水を生成した時の10分の1ほどのMPで済むと思います。ただ、圧縮してピストンの中に生成しないと膨張しないので、それを3倍程度と考えて設定してみましょう。それで足りなければ5倍で。」


忠太郎は早速、先ほどの水魔法の魔核を取り付けたプラグを抜き、風魔法で3倍圧縮した空気を生み出す魔法を取り付けた。これでどうだろう?


エンジンを始動してみた。


うんエンジンは調子よく回ってるな。MPの減りも思った通り少ない。

今度はエンジンの回転数を上げてみよう。


一度プラグを取り出し、今度は魔核に3~10倍の空気圧縮ができるように可変として、魔法発動タイミングを魔核で受信して、レバーで操作できるように改造してみた。


これで運転手はレバー操作で回転数を変えることができる。

これってゆくゆくはアクセルペダルに置き換えないといけないな。

バイクならアクセルスロットルか。


僕はエンジンをかけ、徐々に回転数を増やしていった。

うん、これなら12,000回転も出るね。


「成功のようですね、京介様。」


「おぉ、やったな忠太郎。」


京介様は手を上げてこっちに振り返ってきた。

これってあれだよな。ハイタッチってやつだ。

京介様とハイタッチした。いい笑顔で笑ってる。たぶん僕もうれしくて笑っているんだろう。


「とりあえずエンジンはこれでいいとして、問題は電気系統だよな。」


「それなら、愛様から愛様や輝乃様、レティ様を改造した際にした、バッテリーの構造説明図が送られてきていますが。」


「うん・・・これなら再現できそうだね。でも、魔力線をどうやって結線するかだよな。いちいち結線してるとそれだけで魔力を消費することになるから元からつなげて置きたいんだよね。今あるこの車の結線みたいに。」


そういって京介様はボンネットの中の電気ケーブルを指さした。


なるほど。

僕は八角盤などを使うときに魔力線を自分で(・・・)結線していた。

魔法を使うときはそうだから、そこに疑問は感じていなかった。


「この結線があるのとないのとでは、魔力消費に大きく影響が出ると思うんだ。運転者から魔核にただ魔力を流しているのと、魔力線で繋ごうと魔力を流しているのとはね。

それにこれだけ複雑な機械の制御を、いちいち操縦者で意識して結線しなきゃいけないなんて、たぶん操縦できなくなるからね。ライト付けてウインカー付けてって考えてやってると、事故起こしちゃうよ。そうならないためにも魔力結線は必要だね。なんかいい素材はない?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ