始まりの笛
ドンドンドン
ボールをつく音が心地よく響く
周りから歓声が響く
キュキュッ
バッシュの裏から放たれる音が幾重にもなり
最後にはどちらかが笑いそしてどちらかが泣く
そんな光景を一度見てしまった俺はいつしかプロバスケットボールプレイヤーを夢見た
ジリリリリ
目覚まし時計の鳴らす不快な音で目覚める
「うー、ん...は!?もうこんな時間かよ!?」
寝坊して学校に遅刻しそうなことにようやく気づき焦る俺
「ったく、今日は入学式なのに遅刻とか勘弁してくれよな...」
服を急いで着て玄関でドタバタと靴を履く
「ちょっとお兄ちゃん!ご飯は!?」
妹が問いかける
中学生の妹はまだ春休みなのだ
「すまん!遅刻しそうだから食べてる暇ない!」
「もー、だからあんなに夜更かしするなって言ったのに!」
「悪い悪い、今度から気をつけるよ」
バタッ!と玄関の扉を開けると幼馴染である京が立っていた
「なんだお前待ってたのか、遅刻するぞ?」
「ほんとよ!全く!さ、急ぎましょう」
京と俺は小学校、中学校とバスケをしていたので脚力には自信がある
走ればなんとかなるだろう
キーンコーンカーンコーン
「ふぅ、あぶねぇあぶねぇ、結構ギリギリだったな」
「全くよ今度からはもっと早く起きてよね!」
「別に待っててくれなくたってよかったんだぜ?」
「べ、別に待ってたわけじゃないし!たまたま通りかかっただけだし!」
「?じゃあお前も遅れそうだったんじゃないか」
入学式が終わり部活動紹介の時間になった
「なぁ、京お前は何部に入るんだ?」
「ん?バスケ部だけどあんたは違うの?」
「俺はもちろんバスケ部だよ!なんてったって俺の夢はプロバスケットボールプレイヤーだからな!」
放課後京と俺は部活体験に来ていた
俺たちが入った学校は県内では中堅校で練習はそこまでキツイ訳ではない
中学で全国大会の常連だった学校に通っていた2人にはむしろ楽なくらいだった。
「ねぇ...なんでこの高校入ったのよ...?あんたなら推薦で北央工業とか行けたでしょ...」
「ぐっ...そ、それはだな...っていうかお前だってなんでこっちに来たんだよ女バスが強い金城高校に行けばよかったんじゃないのか?」
「そ、それは...(こいつがいるからここに来たなんて言えないし...)ほ、ほらあれよ!はじめっから強い高校でいるよりも、そこそこから初めて全国行った方が楽しいでしょ!」
「そ、そうなのか?」
練習のメニューは
・走り込み
・筋トレ
・2メン
・3メン
・1on1
・2on2
・5on5
というのが基本的な流れで随時パス練などが入ったりしてくるいたって普通のメニューである
練習時間は
平日:16:30~19:00
休日:08:00~12:00
となっており大会などが近づくと朝練や休日の練習が丸一日担ったりするといったところだ
部員は男子は高2以上が20人弱
ベンチに入れるのは15人までなのでベンチに絶対入れるわけではないらしい
県ではベスト16くらいで一度だけ全国に行って優勝したことがあり、部員達は古豪(?)復活を夢見て練習しているのだ
「よーし、じゃあ新入部員を紹介するぞー」
キャプテンが新入部員を紹介する
今年は新入部員が多く俺も中学の時に対戦したことがある人がたくさんいて中堅校にしては粒ぞろいだというのが第一感である
しかし、中学の時共に汗を流し全国に行った友は他の高校に行ってしまいそれと比べるとやはりレベルが下がる
「よし、じゃあ歓迎の意味も込めてゲームをやるか!」
紅白戦が始まった
俺は白組になりスタメンに選ばれた
ピー!
ホイッスルが鳴りボールが投げられた
俺は身長が高い方ではないのでジャンプボールには参加しないがタップされたボールは俺の方に飛んで来た
ボールを取りまだ陣形の整っていない敵陣に突っ込む
ダンダンダン
敵が前に入り込んでくる
クルッと軽くターンしてかわす足の速さを活かしコースの反面を颯爽と駆け抜けレイアップ!と行こうとしたがゴール下には敵がいる
「チッ」
仕方なくダブルクラッチでかわしつつシュートを放つバシュッここに良い音がバスケットから放たれる
「オオオーーー!!!」
周りから歓声が上がる
これが俺の高校でのバスケライフの始まりだ
「おい君!さっきはすごかったな!先輩相手にあんなに簡単にシュートを決めるなんて!」
「ん?ああ、ありがとう」
「ってお前去年全国に行ってた丸々じゃん!なんでこの学校に来たんだよ!?」
「そ、それは色々あってだな...」
「ふぅーん、そうなのかじゃとりあえず今後よろしくな!」
「おう」
県内ベスト16のチームのレギュラーから簡単に得点をしたことは周りから見ればすごいことらしい(俺は少しも手応えを感じなかったんだけどな)
「よっ!ゲームお疲れ!どうだった?」
京が話しかけて来た
「ん?まぁ普通じゃね?」
「普通って...あの先輩うちの部唯一の選抜メンバーだよ?笑」
「え?そうなの?ふーん」
「ま、あんたらしいか」
「じゃ、俺はもう帰るからじゃあな」
「え?もう帰るの!?」
(もっと話したいのに)
ボソッと呟く
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもないわよ!あんたなんか早く帰っちゃいなさい!」
京のよくわからない態度に困惑しつつ帰路を急いだ。
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