No3 小さな瑠璃色の魔法使い
俺たちは、彼女の家にたどり着いた。
「送ってくれて助かったよ、えへっ!」
「どういたしまして」
「オセロさんはもう帰っちゃうんですか?」
彼女は寂しそうに上目遣いで俺を見つめた。
すると、なぜか俺の口からは、
「いや、帰るところなんて何処にもないんだ。なぜここにいるのかも分からない。」
深刻そうに聞こえたかもしれない。深刻であるには違いないのだが本心としては自分でどうにかしたい。そう思ってた矢先に、
「やったっ!!あ、ごめんなさい。私、一人が寂しくて…でもこれは私自身の問題なのにごめんなさい。」
シンパシーを感じた。
「でももしよかったら、私の家にいてください!帰るとこがないのならオセロさんの変える場所はここですよ、えへへ」
顔を赤らめながらも、彼女は俺の帰るべき場所になってくれると言ってくれた。ここへ来るまでいろいろ話したが、彼女と話していると心が埋まっていく気がする。
「そうさせてもらうよ」
こうして、彼女の家に取り敢えずではあるがすむことになった。
彼女の1日は、多忙なものであった。早朝から医療の魔法学校へ行き、夕方は家の近くの果実店で働いている。彼女曰く、家出をしてきたらしく、全てを一人でやりくりしているそうだ。
彼女の家に来てからの俺の生活は、人間味のあるものであった。俺がやることは家事が殆どだった。
ある日、この街を、彼女に案内してもらった。そこで俺はギルドというものに引き寄せられた。ギルドは、あらゆる依頼を解決する、いわば便利屋のようなものだ。ギルドに登録すると、依頼を引き受けることが出来る。その依頼の難易度はそれまでの依頼の成功率で引き受けられるか否かが決められるそうだ。
ティナも登録しているらしく、俺も登録することにした。
彼女とであって半年、俺はティナとともにウェストディールにジャイアントワームというモンスターの討伐の依頼を受けにいった。
ジャイアントワームは、魔法の使えない俺や、治癒魔法専門のティナにとっては大敵であった。間一髪で倒すことができたのだが。
……
その日の帰り道、私たちはあのジャイアントワームの支配下のスモールワームの群れに襲われてしまいました。襲撃されたときにオセロは囮になって私を逃がしてくれました。
それからというもの、オセロは一向に姿を見せません。彼なら、すぐにこの街に戻ってくるはずなのに…
私はオセロを待ち続けました。今も待ち続けています。あのとき私が魔法を使えていればこんなことにはならなかったのに。そう思い私はあの後、昼間は医療魔法を必死で勉強し、夕方は働き、夜は睡眠時間を削って苦手な攻撃魔法を学びました。
そして今、中級学校も卒業しました。
「できればオセロに卒業するとこ見てもらいたかったな…」
私の顔からはいつの間にか笑顔が消えていた。作り笑いすらできなかった。お金も底を尽きていた。
「ウェストディールか…行ってみるしかないかっ!」
こうして私はウェストディールのディール山脈へ向かった。